第147話
第147話です。
少し寝るとだけ言っていたアスナさんは、どうやら寝息から察するに本格的に寝始めてしまったらしく、俺が少し肩を摩る程度ではピクリともしない。
「ほ、本当にどうしよう」
このまま寝るわけにもいかないし、かと言って眠りを妨げるわけにもいかない。ただこのまま寝ると風邪を引かれるかもしれないのだ。アスナさんはまだ明日も文化祭が続くみたいだし、それに今日見た感じちゃんとシフトも組まれていたし。それにアスナさんのクラスメイトの様子からして、アスナさんが一番の戦力のようにも見えたから余計にだ。売上に影響が出たらシャレにならない。
だからこそ寝るならばアスナさんにはちゃんと布団で寝て欲しいのだ。
俺の膝の上などではなく!
「アスナさん、起きてー。朝ですよー」
この程度の嘘で起きるとも思わないが、勘違いで一瞬でも起きてくれたら嬉しい。まぁ、起きないんですけど。
え、本格的にどうしよう。本気で摩って起こす?そうするか。というかそれしかないよな……。
「やだなぁ……」
俺自体があまり体を摩って起こされるというのが好きではないので、それをアスナさんにするのはどうしても気が引ける。しかし、このままでは一切埒が明かないので仕方がないと腹を括ることにした。
「よしっ」
気合を入れる意味で息を一度吸うと、俺はフードを被って横になる彼女の肩を触った。呼吸をすると同時に動く肩を触るのはやはり気が引けて仕方がないが、俺はやると決めたのだ。
「アスナさん起きて下さいっ!」
少し強めに。腕を上下させて俺はアスナさんを摩る。するとかなり不機嫌そうな声が膝の上から聞こえてきた。
「……何」
「あ、あの……寝るのであれば布団の方がいいかなと」
「……京弥も来い」
「え?は!?いやいや、ダメでしょ!?」
焦りながら俺はアスナさんにそう言うと大きくため息をついて、アスナさんは寝転びながら俺の方をじろりと見た。
「運んでくれ。寝起きだから体が動かしにくい」
「あ、あぁ。分かりました」
そう言うことしか出来ないので俺はこくりと頷くだけ頷いてアスナさんの体を持ち上げた。形態は所謂お姫様抱っこ。なぜこの形にしたのかと問われれば、それはその方がこの状態から移行しやすかったとしか言えない。だから他意はない。
「ょぉーし、寝室へしゅっぱーつ」
アスナさんは少しだけ機嫌を取り戻したのか、間延びした声でそう言った。
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