第144話
第144話です。
一旦ゲームを中断して俺はシャワーを借りさせてもらった。
1人暮しとはいえアスナさんの住むマンションはありえないくらい大きい。ゆえなのか、男の俺が自由に腕を振り回しても窮屈にならないだけのスペースがあった。
キュッと蛇口をひねると、シャワー口から温かいお湯が出てきた。それを頭から浴びながら俺は「ふぅ」と息を吐く。改めてここが女子の部屋だと思うと緊張で寿命が縮みそうだ。
「えーっと……シャンプーはこれか」
あらかじめ聞いておいた場所にあるボトルのノズルを押して手の上にシャンプーをだすと俺は頭を洗い始めた。普段使っているものと違うものを使っているためか、嫌ではないものの、違和感がある。それに香りも違うからほんの少しだけドキドキともした。
っと、それよりもだ。もうこのままアスナさんの家に泊まる、というか帰るための電車が無くなったので泊まるしかないのだが、この後はどう過ごすつもりなのだろう。まさかオールという訳でもないだろうし、どこかのタイミングで必ず寝るわけなのだが。……女子と寝たことの無い俺はそこら辺の勝手が分からない。
「いやいやいや、アスナさんだって無いだろうしな!俺が気にすることじゃない!」
自分に言い聞かせるようにしてそう言うと脱衣所の方から「何がだ?」と尋ねてくる声がする。
「い、いやっ!何でもないよ!?というかなぜアスナさんはそこにっ!?」
「いや、バスタオルを置いてただけだけど。あとは男でも着れそうなジャージをついでに」
「あ、あぁ、そういうこと。……ありがとうございます」
「別にいい。それよりも早く上がってこいよ。ゲームの続きしたいから」
「あ、はい」
俺よりも先に風呂に入っていたアスナさんはどうやら手持ち無沙汰らしく、声音からはひたすらに暇という感情が読み取れた。
風呂に入る前にも1人で進めてていいよという旨は伝えていたのだが、せっかく2人でするのなら2人揃った時にやる方がいいというアスナさんな意向もあり、1人の時は本当にやらないつもりでいくらしい。
まぁ、1人の時はベースの練習にあてるらしいので無駄な時間というわけでもないのだけれど。
「すぐに上がりますので、もう少しお待ちください」
◆◇◆◇
ポカポカとした熱気を体にまとったまま、慣れないジャージを着て俺はリビングに戻る。
扉を開けてまずアスナさんと目が合うが、アスナさんは特に何を言うでもなく無言でゲームの準備をし始めた。どうやら風呂上がりの男子に興奮を覚えたりはしないらしい。当たり前か。
風呂に入る前と同じくアスナさんの隣に座る。ポフンと座った勢いで体の小さなアスナさんも少し跳ねた。
「もう少しゆっくり座れ」
「はい、ごめんなさい」
「分かればいい」
怒られながら俺達は先程の続きを始める。
風呂に入る直前の段階で既に鉄製の装備は2人とも完成させていたから、そう簡単には死なないようになった。しかし、それでも上手くいかないのがこのゲーム。
「次の目標はダイヤモンドだ」
「おぉ」
「ちなみにこれには京弥も着いてきてもらうぞ。流石に私1人じゃ効率が悪い」
アスナさんの言う通りダイヤモンドはかなりの低確率でしか生成されず、またそれの大半が完全に埋まった地形の中にあるのでひたすらにゴールのない地下を掘り進めるだけの作業となるのだ。それをアスナさん1人に任せるのは確かに効率が悪い。
「分かりました」
そう返事をしたところで俺達の目標が決まる。
ダイヤモンドの回収。これが当面のゴールだ。
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