第141話
第141話です。
「それで、晩ご飯は何食べたい?」
「えっ?」
「いや、晩ご飯だよ。食べないとお腹空いて倒れるだろ」
「いや、まぁ……そうなんだけど」
家にあげてもらっている分際で図々しく今晩のメニューまで言えるわけがない。
「別に俺は何でもいいですけれども……」
「別に何でもいいか……Uberで美味しいのでも頼むか」
「Uberか、俺の地域って配達してないから使ったことないんだよな」
「へぇ、じゃあいい機会じゃん。初体験しときな」
「そうさせてもらうよ」
スマホで食べたいものが何かないか探していると、アスナさんは少しの間席を外して服を着替えてきた。
着替えてきて現れた姿は猫耳フードの着いた黒いパーカー。オーバーサイズらしく、袖はダボダボになっており、いわゆる萌え袖状態になっていた。
パッと見では下を何も履いていないように見えるが、アスナさんはわざとらしくチラリとパーカーを持ち上げて「ちゃんと履いているぞ」とアピールしてくる。正直いって心臓が止まりそうになるからやめて欲しかった。
「何でそんなに真っ赤になってるんだよ。ネットで女の人の裸くらいバカみたいに見てるだろ?」
「いや……それとこれでは訳が違う気が……」
「ふーん、そういうもんなのか。というか見てることは否定しないんだな」
「ぐっ……」
そりゃあ俺だって至って健全な男子高生に過ぎない。人並みにだって興味も性欲も持ち合わせているのだ。
「見る?」
「見ないっ!」
「じょーだんだって」
ケラケラと笑いながらアスナさんはまた俺の隣に座った。
隣からずっと女の子特有の甘い匂いが鼻腔を刺激して落ち着かない。
◆◇◆◇
Uberで注文したご飯を食べ終わった後に俺はアスナさんのベースの練習を眺めていた。
来ている服は猫耳パーカーと可愛らしいものなのに、ベースを弾くその姿は誰よりもかっこいい。そんな対照的な印象を同時に抱く。
「ふぅ……START Again!!!、楽しいけど難しいんだよな」
「俺にはもうよく分かりません」
「京弥も何か楽器、やってみたらどうだ?」
「いや、俺は普通に大学にでも進学しますよ」
「ふーん、つまんないの」
「つまんなくてすみませんね」
「……弾く?」
「いや、だから俺は楽器はやらないって」
「弾くだけなら別にいいだろ」
そう言われて俺は強引にベースを押し付けられた。
はたしてどうしたものかとは思ったが、やるしかないのだろう。
難しいかぁ……。
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