第139話
第139話です。
「本当に来てしまった……」
大阪市内にある一棟のマンションの前。ここがアスナさんの1人で暮らす家だ。
「何ボーッとしてるんだ?早く入るぞ」
少し振り返りながらアスナさんはそう言うと、自動ドアを抜けてマンションに入ってしまった。俺もそれに置いて行かれないように小走りで向かう。
マンション内は非常に綺麗な空間で高級感が溢れ、足音を吸収するカーペットが辺りに敷きつめられていた。
もしかしてだが……アスナさんのご両親ってお金持ち?
一高校生である娘をここまで良質なマンションに住まわせることができるほどの経済力となると、それは少なくとも俺の家庭とは比べものにならないのだろう。
「あの、ちなみに何階なの?」
マンションに入る前に建物の全体像を見たわけだが、パッと見でも十五階以上はある。もしこれで上の方の階だと言われたら、それこそとんでもない事態だ。
「ん、十七階だけど」
訂正。しっかりととんでもない事態だった。
「十七!?高くない!?」
「まぁ、確かに高いな。ベランダに出ても風はビュービュー吹くからあまり出れないし、エレベーターでも少し時間かかるし」
「いや、それもなんだけどさ……えぇ。俺と暮らす世界が違う……」
別に一軒家が悪いというわけではない。むしろ一軒家にしか無いメリットだって沢山ある。だが、そういう事ではないのだ。結局のところないものねだりで、相手の事を、環境を羨ましく思ってしまうのが人間の性というもの。
「というか、ここにいても何も無いから早く部屋行こうよ」
「あ、はい」
アスナさんに小言を言われながら俺達はエレベーターに乗り込む。しかし、大きいマンションにもなるとエレベーターは二台あるのが普通なのだろうか。中々このサイズの広さを有したエレベーターが二台は聞いたことがないのだが。
階数のボタンを押し扉を閉めると、ガクンと動き出す。階層を上がることにエレベーターの勢いは上がって行き、十四を超える頃にはピークに達していた。
「……早」
想像以上の速さに言葉を失いつつ、俺は先導してくれるアスナさんの背中を着いていく。
エレベーターを出てから少し歩いたところで西条と書かれた表札が見えてきた。
それが見えたと同時にアスナさんは俺の方を振り返るとこう言う。
「ようこそ、我が家へ」
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