第136話
第136話です。
中庭に京都の茶屋をイメージしたクラスの出し物があったので、俺達はそこに立ち寄りしばしの休息を楽しむ。
茶道部による出し物らしく、出てくるお茶はとても本格的だった。だが、どちらかと言うと俺は三色団子の方に夢中になってしまっていたのだが。
「京弥……団子を食べるのは別にいいけど、お茶ももう少し飲めよ……。さっき茶道部員の人が涙目で陰から見てたぞ」
「えっ……」
「メインがお茶なんだから、もう少し楽しめ」
「は、はい……」
言われてからすぐにゴクリと飲むと、先程まで団子の甘さでいっぱいだった口の中にほんのりとしたお茶の苦さが広がった。
なるほど、お茶請けに和菓子を出す理由が分かる。
なんて一丁前な事を思っていたりするが、アスナさんに言われなければ俺はしばらくお茶にほとんど手をつけることすらなかったわけで、そこは真剣に反省しないといけない。
「あ、あの……」
ズズっとお茶を啜っているとふと左隣から声をかけられた。誰だろうと思って見てみるとそこには和装に身を包んだ女子生徒が立っている。胸の辺りに『スタッフ』と書かれたプレートをしているところから、この茶屋の人なのだろう。
「どうかされましたか?」
なにやら言葉を詰まらせ気味に話していたので緊張しているものだと判断し、俺はできるだけ穏やかに優しくそう尋ねた。すると彼女の方もそれで心に余裕を持てたのか、一度深呼吸をすると再度口を開いた。
「お、お茶の方はお気に召していただけたでしょうかっ!!」
「……は、はい。とっても美味しゅうございました……よ?」
落ち着いたものだとばかり思っていたのに思ったよりも勢いが強くて驚いてしまう。だが、彼女の方は美味しいという言葉が聞けただけでよかったのか、パァっと表情を明るくすると「ありがとうございますっ!」と言って裏に戻って行った。なにやら裏から「い、イケメンの人に美味しいって言って貰えたー!」という声が聞こえてきたが、そこは気にしないことにしよう。
……え、俺ってイケメンなの?
「さっき涙目で京弥のことを見てたの、あの子だよ」
「え、そうなの?」
「うん。多分あんたのお茶もあの子が入れたんでしょ」
そう言いながら、髪の毛をさらりと耳にかけアスナさんはパクリと団子を口に運ぶ。
「よかったね、泣かれなくて」
「あ、はい……それは本当に泣かせずに済んでよかったと思っています」
もう一度深く反省しながら俺はズズりとお茶を啜るのだった。
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