第134話『Chatnoir』
第134話です。
一曲目を引き終えた後に次に弾くのを何にしようかなと悩んでいると生徒の方から「バンド名は何なのか」という声が上がった。
「バンド名かぁ……決めてなかった」
一番の象徴とも言えるものを決めることをすっかりと忘れていたことに驚きを覚えつつ、私はアスナちゃんとメグさんに視線を向けた。ただ2人ともそんなにパッといいのが思いつくわけでもなく頭をひねっている。
うーん、何かいいアイディアが欲しい。
そう思いながら辺りを見渡していると、アスナちゃんの足元にある黒いカバンから少し顔をのぞかせているものが目に入った。
「ねぇ、それ何?」
そう尋ねるとアスナちゃんはそれを取り出して「黒猫のぬいぐるみですけど」と教えてくれる。どうやら私達の分もあるらしいという事も補足で教えて貰いつつ、もしかしたらこれが使えるのではなかろうかという私のアイディアレーダーもものすごい強度で動いていた。
黒猫、ブラックキャット……何だか違う。悪くはないけど……もう少しオシャレでかっこよく。そういえばフランス語で黒猫ってなんて言ったっけ。
思うが早いか、私は素早くスマホを取り出して翻訳してみる。すると出てきたのはこれだ。
「Chatnoir」
私がそれをぼそりと呟くとアスナちゃんとメグさんの視線が今度は私に向く。
「いいんじゃないですか、それで」
「わ、私もそれがいいと思います。か、可愛いしかっこいい」
どうやら決定したらしい。私達とこれからの苦楽を共にする3人を象徴する名前が。
生徒達の方向を振り返りながら私はマイクを手に取ると「お待たせしましたー」と話す。
「さて、それでは次の曲に行きましょうっ!私達ChatnoirでSTART Again!!!」
◆◇◆◇
後輩くんには内緒で進めていたオリジナルの曲。
どうやらその第一号は大成功に終わったらしい。
あの後に後輩くんとも話したが、終始ポカンとほうけたような表情で、面白かった。
「カッコよかったでしょ?START Again!!!」
そう聞くと後輩くんはこくりと小さく頷いた。どうやら先程行われた事がまだ頭の中にこびりついて離れないらしい。
「頑張ったんだよ〜。ベースとかドラムのところは私には分からないから2人にも頼りまくったし、そもそも作曲が素人だから音楽室にも入り浸って教えてもらったし」
「い、いや……それでもこのクオリティを俺にバレずに作り上げるって……凄すぎません?」
「ふふっ、もっと褒めてくれてもいいのだよ!」
「それはまたの機会にしますけど」
「えぇ!?何で!?」
大袈裟にリアクションをしてみんなから笑いを取りつつ私は再度皆に問うた。
「ねぇ、バンド名なんだけどさ……本当にChatnoirでもいい?」
そう尋ねると誰も首を横に振ることはせず、ただ大きく縦に振ってくれた。
「じゃあ……これからChatnoirとしてよろしくね!」
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Chatnoirは僕のもう一つの連載している作品にも出てきますので、ぜひ探してみてくださいね!