第133話
第133話です。
「な、なんでカオリさんとメグさんがここに……というかなぜ舞台上にっ!?」
さすがにアスナさんも驚きを隠しきれなかったようで、オロオロとしながら俺の方をちらりちらりと何度も見てきた。ちなみにだが、俺も先輩達が来ることは知らされていない。行くとは報告したけれども。
「ま、まぁ……先輩のする事だからさ」
「えぇ……」
「それよりも行かなくていいの?先輩ずっとぴょこぴょこ飛んでアスナさんのこと探してるけど」
舞台上では「あれー?もしかしていないー?」と言いながら先輩が飛び跳ねていた。メグさんは緊張しているのかピシッと背筋を伸ばしてまっすぐ立っている。
「行かなきゃダメ?」
「まぁ、アスナさんの代わりをできる人なんてここにはいないしね」
「うんん……はぁ……、分かったよ」
大きく溜息をつきながらそう言って、最後にこちらをチラリと一瞥する。
「カマせばいいな?」
「うん、さっきのバンドが霞むくらいにね」
「了解」
片手だけを上げながらアスナさんは返事を返すと、舞台の方にゆっくりと歩いていった。
光に反射する銀髪に染めた髪が綺麗だ。
舞台上から歩いてくるアスナさんの姿を捉えた先輩は大きく手を振ると「おー、きたきたー!」と言って手を差し出した。
「ほら、ちゃちゃっと弾いちゃいますよ〜」
「言いたいことは色々あるんですけど……それは後にします」
「いひひ、後輩くんにも謝らないとね〜。デート中だったんでしょ?」
「別にデートなんかじゃないです」
「そうなの?」
「そうです。ほら、早くしてください。ボーカルがいないとどうしようもないんですから」
「はーい。よしっ、じゃあやってやろうか!」
舞台上では先輩が腕をぐるんぐるんと回して気合を入れている。
✲✲✲
こんなに大勢の前でギターを持ったのは人生で初めてだ。私が自らアスナちゃんの高校の生徒会に連絡を入れて出れるようにお願いしたが、まさかここまで人がいるとは思わなかった。いやそれも覚悟のうちだったはずなのだが、ちょっとばかし予想を上回ったのがいけない。
メグさんはおそらくドラムを叩き始めたら人が変わったように集中するのでいいし、アスナちゃんも初めから気にしていないようなのでメンバーに関しては安心だ。つまり、これは私自身との戦い。
「ふぅー……じゃあ行こうかっ!」
マイクに向かってそう叫ぶとメグさんがドラムのスティックでリズムを取り音楽を奏で始める。
爽やかな曲調で、でも熱い内容の歌詞。青春を謳歌する私達の世代には必ずと言っていいほど刺さるこの曲は、生徒達の心を揺り動かし始めていた。
曲も終盤にかかれば皆が他の人の事は考えずに曲に乗ってくる。
「楽しいっ」
そう強く思いながら私達は一曲目を終えた。
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