第131話
第131話です。
トップバッターを務めたのはダンスを披露する集団。ネット上などによくいる仮面を着けた容貌で現れた。
5人のメンバーが三角形の形に並ぶと照明が全て暗転した。
周囲は何が起こったのかとざわつき始めるがアスナさんはそれに反して以外にも冷静な反応を見せる。
「そういう演出なんだろう。多分この後音楽のイントロが始まってまた照明がつく」
「そうなの?」
「知らん。ただの予想だ。まぁ、どっちにしろ始まるんだから見てろ」
アスナさんの言葉に従うように俺は口を噤んで始まるのを待っていると急に音楽が鳴り始める。かと思えば一気にステージ上がライトで照らされ始めた。
あまりにもアスナさんの予想が当たりすぎていて、俺はダンスなんかよりもアスナさんの方に視線をやってしまう。
なぜこんなにも完璧な予想が出来たのだろうか。
「王道だよ。この演出が一番思いつきやすくてかつ盛り上がりやすい」
「い、いやいや、王道だとしてもだよ?ここまで完璧に当たるって……」
「まぁ、京弥の考えも分からないではない。じゃあ言い方を変える」
「言い方?」
「私ならこの演出はしない」
そういうアスナさんの横顔には何故か妙な説得力があり、俺はそれを見て息を飲むことしか出来なかった。
「まぁ、この演出をしないってだけで、何をするのかとかは思いつかないがな」
「えぇ……何か考えがあるのかと思うじゃん」
「ふふっ、少し時間をかけたら何か思いつくかもな」
口元に手を当てながらアスナさんは妖艶に笑う。
体の小ささと幼げな顔を遥かに凌駕するその色気には驚いてしまう。まさかこの人からそんなものを感じるとは思わなかった。
「まぁ、今はあいつらの時間だ。私達の時間じゃない」
そう言ってステージの方を指さした。
「今は光の使い方とか私達のライブでも使えそうなものを盗みに盗みまくるぞ」
「え、でもさっき王道な演出って……」
「それは始まり方の話だ。ここからの王道なんて私は知らない」
「うそぉ……」
こちらはそこまでを全て知っている上での話だと思っていたのだが、アスナさんはやはりまだよく分からない。
「とにかくだ、カオリさんとメグさんを驚かせれるような演出法を探すぞ」
「……はいはい。分かりました」
「……乗り気じゃないな。嫌か?」
「そうじゃなくて……まぁ、いいや」
「何だ。気になる終わらせ方をして」
「ううん。気にしなくても大丈夫。よしっ、俺も3人のために頑張りますよー」
そう言って腕を伸ばすと俺は視線をステージに釘付けるのだった。
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は16日です。