第130話
第130話です。
遮光用のカーテンによって外の光を完全に遮断した体育館。そこには既に大勢の人が入っており、話し声によってかなりザワザワとしていた。
「やっぱり有志の出し物は人気だね」
「……まぁ、文化祭ってそういうもんだろ」
「かもね」
「去年も体育館だけはずっと人が絶えてなかったしな」
「へぇ。去年は何してたの?」
そう聞いてみるとアスナさんは思い出すようにして腕を組んだ。
「確かバンドと……演武と、ダンスだったと思う」
「演武?」
「うん。何か凄かったみたいだけど、今年はしないらしいぞ。メンバーが大会か何かで忙しくて足りないらしい」
「へぇ」
そんな話をしながら催しが始まるのを待っていると、体育館内の照明が暗転した。そしてその後すぐにアナウンスが始まる。
「只今より有志による催しを開催したいと思います!皆さん!盛り上がる準備は出来てますかー!!!」
「「「「おぉぉーーーー!!」」」」
周囲からは怒号と大して区別のつかない大声が響き、鼓膜を揺らした。隣に立っていたアスナさんはその声に驚いたのか少しぴくりと体を跳ねさせている。
「大丈夫?」
「う、うん。少し驚いただけだ」
そう言いながらアスナさんは舞台上を目を顰めるようにして眺める。
「見える?」
俺達が今いるのは体育館の中でもかなり後ろの方。ただでさえ遠いのに暗いのも相まって確かに見にくさはあるのだ。
「ギリギリ」
「見えなさそうだったら言ってよ?頑張って前を譲ってもらえるか交渉するから」
そこまで言うとアスナさんは俺の横腹を拳で小突く。
「そんな事までしなくていい」
「でも……」
「でもじゃない。そこまでするくらいなら私は出店の方を回る」
「そ、そうか……」
アスナさんの意思は固いようで、先程と変わらず顰めるようにして舞台上を眺め続けた。
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