第128話
第128話です。
「はーい、オムライスでーす♡」
最初に俺の対応を担当してくれたメイドさんが俺の元にオムライスを運んできてくれた。そしてどこに隠し持っていたのか、ケチャップのチューブを取り出すとにこりと笑いながらこちらを見てくる。
「今からご主人様のオムライスにさらに美味しくなる魔法をかけますね?」
「は、はぁ……」
「それでは行きますよー!……と言いたいところなのですが」
「が?」
「ここで別のメイドさんと交代です!」
「え、何で」
そう尋ねると「ふふん!」と胸を張りながら「私がこのお店でナンバーワンメイドなので!客引きがあるのですよ!」とものすごい笑顔で言われてしまった。
「なので代わりの子呼んできますね!あ、もちろん可愛いのでご安心を!」
そう言い残すと裏に回ってしまった。
こちらとしてはもう自分でケチャップもかけて食べてしまいたいのだが、ケチャップごと持って行かれてしまったのでそうもいかない。
というかメイドの交代って一体……。
次のメイドさんが来るまでの間少しぼーっとしていると後ろから「お待たせしました〜」と言う声が聞こえた。
「連れて来ましたよ〜。ほら、前に出て挨拶挨拶!」
「な、何で私が……」
嫌そうに言いながら目の前に出てきたのは銀色に染めた髪の毛と、ピアスがキラリと輝く見た目の小さなメイドさんだった。
「……あ、アスナさん?」
「……わ、私は裏方の仕事だと思ってたんだ」
「う、うん」
「けどいざ向かったら着替えさせられて……今に至る」
「な、何か……お疲れ様です」
「うっさい、私が惨めになるだろ」
ぷくっと頬を膨らませながらアスナさんは少し怒る。
「じゃあそういうことなんで、あとは西条さんに引き継ぎますね〜」
「あ、ちょっ!……京弥」
「は、はい」
「美味しくなる魔法かけてやるから……目ェ閉じて耳塞いでな」
「そ、それって何も見えないし聞こえないんじゃ……」
「いいんだよ。魔法なんだから」
「ぼ、暴論だ……」
個人的にはアスナさんの魔法の言葉を聞きたかったのだが、本人はすこぶる嫌そうなのでここは耳を塞ぐことにしよう。と、良心でそう思っていると遠く離れた所から「西条さん!魔法の言葉はちゃんと言わないと永遠ループだからね!」という声が飛んできた。
「だ、そうですが」
「……」
「アスナさん?」
「お……」
「お?」
「お、いしくなー……れ、おいしく、なーれ……。すぅ……アスナの……ラブ注入」
「……」
「……黙ってないで食え。私のシフトはすぐ終わるから食い終わったらすぐ行くぞ……」
そう言ってアスナさんはどこかに行ってしまった。
綺麗なハートの描かれたオムライスと俺を置いて。
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