第124話
第124話です。
校門を抜けると入ってすぐの受付所にまずは連れて行かれる。そこで招待状を提示してから、入る許可が下りるという仕組みだ。
見ず知らずの人をポンポンと入れるわけにもいかないので、防犯の面を考えるとこれくらいが妥当なのだろう。
「おまたせしました」
少し離れたところで待ってくれていたアスナさんの所に近付くと俺はそう言った。
「うん、じゃあ適当に回るぞ。はい、これ」
「何これ?」
「校舎内マップ。これがないとどこに何があるかも分からないだろ?私も分からないのに京弥が分かるわけないしな」
「アスナさんも分からないんだね……」
「まぁ、自分のシフトがあるのかどうかさえ分からない位だからな」
自虐でも誇るでもなく、あくまで淡々と事実を述べながらアスナさんは歩き始めた。
相変わらず自由なところは凄いが、そこを含めてのこの人の良さなのだろう。
少々自由すぎる気もするけれど。
「それで私のクラスからまず行く?それとも他の所を見てから?」
「んー、まずは何か小腹を満たせそうなものでも買いたいかな」
「なら、中庭に飲食系は多かった気がするからそこ行ってみる?」
「そうだね。じゃあそうしよっか」
少しの間校舎の中を歩いていると、やたらと人で賑わっている中庭が見えてきた。
俺や先輩の通っている高校よりも純粋な敷地が広いせいなのか、中庭に辿り着くまでにも道のりを見ても店がかなり出ているのが分かった。
「体育館とかでステージ系の出し物もしてるみたいだね」
「ん?あー、何か有志のバンドが出てるみたい」
「へー。アスナさんは何で出なかったの?」
純粋な疑問としてそう聞いてみる。
するとアスナさんは俺の質問に対し特に迷う様子もなくこれまた淡々と答えてくれた。
「まずは私がベースを弾けることを知らない人しかいない。それに私は誘われたりもしなかったし、何より放課後一回だけだけど聞いた演奏が酷すぎてこんな中で演奏に集中出来るわけないと思ったから」
「お、おぉ……思ったよりも辛辣」
「そりゃそうだ。私は至って真剣にやってるんだからな」
力の入った声で低くそう呟くとアスナさんはこちらを見る。
「その点、メグさんとリーダーのカオリさんは申し分なかった。2人とも独学らしいけど上達スピードが異様に早いし、私も集中出来る」
「お墨付きってわけだ」
「まぁ、そんなとこ。だから余計にこんなお遊びでバンドを組む理由も無くなったの」
再度正面を向きながらアスナさんはそう俺に告げる。
銀髪に染った髪の毛をたなびかせながら、アスナさんは「ほら、何か買お?」と俺の事を呼んだ。
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