第123話
第123話です。
「京弥ー」
名前を呼ぶ声が聞こえ、俺はその声の主の方に振り返った。
その方向には黒のブレザーを羽織ったアスナさんがいる。ローファーの音がカタンカタンと鳴りながら俺の方に近付いてきた。
「ん、おまたせ」
「ありがとうございます。ほんとうに申し訳ない」
開口一番に俺は深々と頭を下げながらそう言うと「別にいいって」と俺の頭を強制的にアスナさんは持ち上げた。
「来るかどうかを誘ったのは私だし、慣れない土地で自分で来いって言うのも中々酷な話だからね。だからこれは半分私の責任。京弥が一方的に悪いんじゃない」
「でも、迷惑かけちゃったのは事実だし」
「もう、だからそれでいいの。それに学校に入るにはどうせこの招待券を渡さないといけなかったから、どっちみち学校外で一度会わないといけなかったの。だから結果オーライ」
そう話すアスナさんの手には招待券と印字された黄色の紙が握られていた。招待者欄の中には『西条明日南』と記入されており、来賓者欄には『碧染京弥』と記入されていた。
「はい、もう渡しとくね」
「ありがとう」
「無くしたら入れないから絶対に落とさないように」
釘を刺す様にアスナさんはこちらを向いてそう言うと「じゃあ行こうか」と言って俺の事を先導し始めてくれた。
何となく女の子について行くというのもダサい気がするので、俺は隣に並ぶ。
「どうした?」
「いや、こっちの方が男としての威厳を守れる気がして」
「……何それ」
少しクスリとしているので滑らなかっただけマシだろう。
◆◇◆◇
駅から数十分ほど歩くと、段々と一般の人よりもアスナさんと同じ制服を着た姿の人が目立ってくるようになった。
おそらく目的地も目的も何もかもが同じ。
「そういえばアスナさんはクラスの出し物でシフトとかないの?」
聞くと小首を傾げながら「特には何もなかった気がする。1日中暇」と返してきた。
「俺がアスナさんのクラスの出し物にお邪魔するのって大丈夫?」
「何で?」
「いや、他県の他校から来たやつがアスナさんと話してたらそっちのクラスメイトにアスナさんが変な風に言われちゃうんじゃないかって思って」
「?別にそれはそれでいいけど。どうせ気にしないし、友達いないし」
「あはは……」
あまりにもあっけらかんとしてそう言うから、どうリアクションを取ればいいのか迷ってしまう。
「まぁ、来たいならおいで。クラスの人達すごく頑張って作ってたから多分楽しいよ」
「うん、じゃあ行くことにするよ」
そう約束を交わしながら、俺達はついに見えてきた学校の門に向かって歩みを進めた。
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