第120話
第120話です。
電話を切ると私は椅子に深く座り込んだ。
初異性との電話だったのだ。
「京弥の声……耳元で聞くとイケボだな……」
先程の感想を独り言ちながら、壁に立てかけてあるベースを手に取る。
弦を弾きながら今私達のバンドがコピーしているところの曲を弾いてみた。
この曲自体は元々好きで、バンドを組む前から何度も弾いている曲なのでそうそう間違えることはしない。それに流れさえ分かればあとは割と同じリズムなのだ。繰り返し繰り返しそして時々変調し、と言った具合だろうか。
「ん、今日も完璧」
自分の腕が鈍っていないことを確認すると、私はベースをまた立てかける。
明日は土曜日で昼からイベントがあるらしく朝早くからバイトで招集されているのだ。だからあまり遅くまでは起きれない。
電気を消しスマートスピーカーに曲を小さく流してもらうと、私はベッドに潜り込んだ。
目を閉じて頭に浮かぶ羊を数えながら静かに呼吸を整える。
◆◇◆◇
歌の練習は基本自室とお風呂でしているのだが、やはり湿度の高いお風呂は喉が痛くなりにくい上に、響きやすくてどこで音程がズレたのか分かりやすい。つまり、自室よりも歌唱の練習においてはお風呂の方が上だ。
「あー、あー」
発声も兼ねた腹式呼吸を意識する練習をしているとピロリンとLINEがスマホに届いた。
「あー」と声は口にしたまま画面を開く。
ホームにはメグさんからのメッセージだと知らせてくれていた。
「メグさんから?」
何だろうと思いながらチャット画面に移ると、私の事を思ってなのか多数の発声練習法や、トレーニング法。ストレッチや意識する点などといったアドバイス動画のURLが送られてきた。
私も調べてはいたが、中には知らないものも多く存在したので非常に助かる。
返信に『ありがとう!助かるよ!』と送ると既読はすぐに付いて、変わりに可愛らしいスタンプが返ってきた。
「ふふっ、ウーパールーパーが暴れてる」
可愛らしいものの独特すぎるそれに笑いつつ、私は「よしっ」と呟いてまた練習を再開させた。
早くみんなに追いつくためにも努力あるのみだ。
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