第11話
第11話
「むむむ、どれにしようかな」
先輩は前屈みになりながら腕を組んで、おにぎりやパンが並べられているバスケットを凝視していた。
その真っ直ぐな視線に食堂のお姉さんは少し汗をかいている。
「後輩くんのおすすめは何っ!」
「俺ですか?」
「イエス!」
ほんの少しその場で思案した後、俺は食堂で食べたものの中で一番美味しかった物を提案した。
「クリームパンです」
「クリームパン?」
「はい」
「どこら辺がおすすめなの?」
そう聞かれたので俺は力説する心づもりをした。
「まずは、コンビニなどで売っているクリームパンとは違い、パンの生地が非常に薄い!」
「ほう。何か利点があるの?」
「クリームが沢山です」
「おぉ」
「そして次!なんとここのクリームパンは、クリーム自体から手作りというこだわりっぷり!」
「それはすごい」
「おぉー」と両手をパチパチと手を叩きながら先輩はそう言う。なんだか先輩に興味が無さそうなのはおいておき、俺のこの力説に食堂のお姉さんは少しうるっとしていた。きっと影の努力がちゃんと知られていて嬉しかったのだろう。うん、そうに違いない。
「じゃあ、クリームパンにでもしよっかなぁ」
「そうするといいですよ。あ、ついでに俺のも買っt……」
「買いませーん」
「オススメ教えたのに!?」
1人そう嘆くと、俺は今にもスキップしそうな先輩の後ろを急いで着いて行った。
◆◇◆◇
「ん〜、デリシャ〜ス♪」
「そりゃよかったです」
頬に手を当てながら先輩は本当に美味しそうにそう言う。やはり、俺のオススメメニューに狂いはなかったようだ。
少し誇らしく思いながら俺は先輩の隣に腰かける。
風に運ばれ遠くから香ってくる潮の香りはツンと鼻に刺さる。
隣からは少しだけ甘い香りが漂い、潮の香りと混ざって少し大変なことになっていた。
(鼻が潰れてしまいそう)
「うーん、クリームパンは美味しいけど潮の香りが邪魔だね」
どうやら先輩も俺と同じ意見だったのか、少し顔を歪めながらそう言う。
「俺もそう思います」
「だねぇ。校舎内で食べるべきだったかな」
俺達は少し苦笑いを浮かべながらお互いに頷いて残りを食べ終えた。
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