第116話
第116話です。
まだ6時にすらなっていないが、俺達はここで解散することにした。アスナさんは大阪住みなので夜遅くなったとしても帰ること自体は容易だが、俺や先輩、メグさんはそうもいかない。とは言ってもメグさんは今日はビジネスホテルを予約しているらしいので一泊だけして帰るとのことだが。つまり、実際に帰るのは俺と先輩だけだ。
まずここから俺達の住む地域への交通の便が絶妙に悪い。10時辺りにもなれば極端に電車の数が減ってしまうので帰れる確率が減るのだ。そして何よりもメグさんのようにホテルの予約などはしていない。帰るのにただでさえ時間がかかるのだから、あまりゆっくりとはしていられないのだ。
「じゃあまた何かあったら連絡するね〜」
先輩は見送りに来てくれたアスナさんとメグさんに手を振りながら別れを告げている。そんな様子を後ろで見ていると不意にアスナさんと目が合った。
偶然合ったと言うよりも、ずっと見られていてそれに自分が気付いた、そんな感じのする合い方。もしかして何か用があるのだろうかと思い「どうしたの?」と近付いて聞いてみると少し遠慮がちに話し始めた。
「京弥、その……たまに連絡とかってしてもいいか?」
「別にいいけど。というか連絡先交換した時にいいよみたいな事言わなかったっけ?」
「さ、最終確認だ!これで迷惑がられても嫌だからな」
「あ、そう。まぁ嫌がらないから別にいいよ」
「ん、じゃあたまに連絡する」
個人的には俺とよりも先輩達と連絡を取りまくって欲しいなと思うものの、そこは本人の自由だ。俺が操作できるものでもない。
再度別れを告げると俺と先輩は改札を抜けてプラットフォームに向かう。
田舎の方面の影響か、近くに俺達と同じように待っている人はほかの方面に比べて少なく、これなら電車にも普通に座れるだろうと思えた。
「いやぁ〜、まさかメグさん以外にアスナちゃんとも出会えるなんてね〜。あそこで後輩くんがライブハウスに行かないかって誘ってくれなかったらこの出会いは無かったよ!ありがと!」
「いえ、偶然を引き当てただけですから感謝されることでもありません」
「いやいや!それでも感謝はするよ!それに、仮に後輩君抜きでアスナちゃんと出会ったとして、アスナちゃんと同い年の後輩くんがいなかったらもう少し心を開くのに時間がかかりそうだったしね」
「そうですか?」
「うん、そうですよ!」
自信満々に先輩がそう言うのでそれを頭ごなしに否定する訳にもいかない。それに人の感謝を無理に受け取らない理由もないのだ。感謝されるならされておこう。
「そういえばアスナちゃんに連絡してもいいか聞かれてたけど、何話すの?」
「さぁ」
「えぇ……後輩くんから話題振る時どうするのさ。天気がいいですねとか言うの?」
「いや、違う県なんで天気が一緒とは限らない気が」
「まぁまぁ、そこは気にしちゃダメよ♡」
「えぇ……」
そんな他愛もない話をしていると電車が来た。
予想通り中はガラガラに空いている。
「よし、じゃあ我が故郷へ帰ろ〜」
「おー」っと拳を突き上げながら先輩は楽しそうに電車に乗り込んだ。その後に続くように俺も乗り込み先輩の隣に座る。
「眠たくなったら寝るので起こさないで下さね」
「イタズラはダメ?」
「ダメに決まってるでしょ」
「膝枕は?」
「それは先輩にお任せします」
「おっけー。おなごの柔肌を堪能させてあげるよ!」
ニヒルと意地悪に笑いながら先輩はそう言った。
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