第113話
第113話です。
パイプ椅子に座りながら少し船を漕いでいると楽屋の外から声が聞こえ始めた。オーナーの声と知らない女性の声。
「オーナーここ?」
「あぁ、そこにいるぞ」
その声の後にはガチャりと音を立てて扉が開かれた。
廊下から中に入ってきたのはオーナーとオーナーが呼んだベースの人。
銀髪に染められた長い髪の毛できらりと光るピアスが特徴的。あとは雰囲気に対してかなり幼い印象もうける。身長が低いせいだろうか。
「君達がバンドを組むって人達かな?」
「はいっ!そうですよ!」
先輩は元気よく立ち上がるとベースの人に近付く。
「で、そこの2人は?」
女性は俺とメグさんの方を指さしながらそう聞いてきた。何だかぶっきらぼうで少し怖い。
「メグさんはドラムです。俺はただの付き添いですのでお気になさらず」
「あっそ」
うむ、相変わらずぶっきらぼうには変わりないがここまで態度が変わらないのも何だか怖いな。
そう思いながら俺はことの成り行きを見守るために、少し後ろに下がって3人の会話を聞くことにした。
「それで名前は?」
「私はカオリです。それでこちらがドラムのメグさんです。あ、彼は私の後輩くんなので後輩くんって呼んであげてください」
「別にそこはなんでもいいけど……私の名前はアスミ。そのまま呼ぶ時はアスミでいい」
「はい!」
「ちなみに年は17の高二」
「へー、高二!……え、高二?」
先輩はそう零しながら俺の方を振り向く。おそらく先輩と俺の抱いてる感情はほとんど同じだ。
「嘘でしょ!?」
「な、何が……。あなた達も高校生なんでしょ?」
「そ、そうですけど、年下なの!?」
「俺と同い年かよ」
いわゆる見た目だけロリっ子を想像してたので年齢は先輩と同じかもう1、2歳上なのかなと思っていたが、まさか想像の下とは。
「え、私ってもしかして真打登場みたいな出方したけど、この中じゃそこの男子と同じで一番年下なの?」
「なぜ嫌そうな顔をする」
あからさまにうげぇとした表情をされて少し傷付いてしまうが、この際俺の事はどうだっていい。それにバンドに年齢も何もあったものじゃない。
「とにかく、年功序列とかないんで普通に3人で仲良くしてくださいよ。俺は別にバンドのメンバーになる訳では無いので何かを意見することは無いですし」
「そ、そうだね!後輩くんの言う通りだ!」
「後輩……同い年なのに後輩って変だしな。あんた名前何?」
アスミさんは俺の方を指さしながら乱暴にそう尋ねてきた。
「俺?碧染だけど」
「それは名字?下の名前?」
「名字」
「下の名前は?」
「京弥だけど。何か意味ある?」
「ある。今日からあんたを京弥と呼ぶ」
一体なんの宣言なのかは分からない。ただもう一度ビシりと指を指されて謎の宣言を食らった事実だけは把握した。
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