第112話
第112話です。
「そりゃもちろん!紹介して下さい!」
先輩はライブハウスに響く声量でそう叫んだ。メグさんも珍しく激しく頷きながら紹介して貰えるように頼んでいる。
「はっはっはっ!あんたら面白いな。よし、じゃあ今からそいつを呼ぶから楽屋で待っててくれねぇか?あそこを入ってすぐ左のところにある扉の中が楽屋だから」
「分かりました」
返事を返し俺達はぞろぞろと楽屋に向かう。オーナーはスマホを取り出してどこかに電話をかけるようだったので、そのベースの人を呼んでいるのだろう。
先程伝えられた部屋に入ると中には長机が二つとパイプ椅子が六つほど置かれていた。あとはメイク直し用なのか鏡と水道がある。
全体的に綺麗と言うよりかは薄汚れた部屋という印象の方が強い。
「ここが楽屋!」
「初めて入りました!」
「でしょうね」
新鮮な感覚に先輩達は浸りながら物珍しそうにキョロキョロと辺りを見ている。
壁には落書きのようにバンド名が乱雑に書かれていたり、フェスのポスターが貼られていたりと少々荒れている感が否めないが、そこはもうそういうものなのだと割り切ることにした。
「何分くらいで来るかな?」
「さっき読んでる感じだったからそんなすぐには来ないんじゃないですか?」
「かな〜」
「ど、どんな人なんでしょう」
「優しい人だといいね」
先輩は笑いながらそう言うが万一にもしめちゃくちゃ怖い人だった場合はどうしようか。先輩は何とか出来るかもしれないが、今日一日を通してメグさんの方がものすごく心配なのだ。今日は先輩のコミュ力により何とか過ごせているが、これがもし先輩抜きで1対1の状況になった場合無言になる気しかしない。
「あぁー、ちょっといいか?」
突如扉が開いてオーナーが中に入ってきた。
「はい、何でしょう?」
「そのベースの奴なんだがな、寝坊して今起きたらしいからもう少しだけ待っててくれないか?」
「ね、寝坊?」
「本当はバイトの日なら今から30分後には来ててほしいんが、そんなのも関係無しに普通に遅れるってことだよ。まぁ、今日はバイトのシフトを休みにさっき変えたから別にいいんだけどさ」
オーナーはそうこぼしながらまたどこかに行ってしまう。
「……まぁ、気長に待ちますか」
「ですね」
「そ、そうしましょう」
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