第105話
第105話です。
話をスタートさせる前にもう一度だけオレンジジュースを飲むと私は目の前に座るメグさんに視線を移した。
当然視界にはメグさんが入ってくる訳だが、改めて見てみると本当に綺麗な顔立ちをしている。
白く透き通った肌に、綺麗な鼻筋。大きく綺麗な二重の瞳に、長いまつ毛。夜闇を吸い込んだ様な黒髪はキューティクルまできっちりしている。
「それでメグさん、バンドの話なんですけど、メグさんはツーピースでやりたい?それともスリーピースでしたい?」
「ツーピース……よりかはスリーピースの方が音がしっかりするので……私はスリーピースの方が願望としてはいいです」
「私以外に声ってかけてたりしますか?」
「い、いや……それはまだです。Twitterを始めたのも最近だったんで、まだカオリさんしか音楽をしてる人を見つけれてなくて」
「ふむ、なるほど」
私しか見つけられていないのなら、仕方がないか。しかし、スリーピースでバンドを回そうという事ならば、ギターの私とドラムのメグさんに加えてベースの子がどうしても必要だ。そして生憎私のTwitterの知り合いにベースをしている子を知らないのだ。
「ベースが弾ける子を探すかぁ」
考えている事をそのまま直接口にして、私はふと隣に座る後輩くんに視線を移した。
「どうかしましたか?」
「いや、後輩くんの知り合いにベースが弾ける子いないかなぁって思って」
「えぇ……さすがにそんなに都合よくいませんって」
「だよねぇ」
「な、なんかごめんさい」
メグさんは申し訳なさそうにしながら頭を下げる。おそらく候補をもう1人用意できなかったことを悔やんでいるのだろう。
「いやいや、これは仕方がないですよ。ほら、それに少なくとも私はメグさんの誘いを受けるつもりなんですから、ひとまずは2人で頑張りましょ?」
「……」
「あれ?メグさん?」
「……ぐずっ」
「うぇっ!?ど、どうしたのメグさん!?」
驚く私と目を見開いて放心状態になる碧染くんの前でメグさんはポロリポロリと涙を流し始めた。
「す、すみません……バンドの件受けてくれると思ってなくて」
「あ、あぁ、そういう事」
理由が大きな事でなくてホッとしたと同時に私は少しくすりともしてしまう。
「でも、メグさん聞いてください」
「……ぐずっ、はい」
「わざわざここに来てる段階で答えはほぼ出てるじゃないですか!バンドをする気がなかったらDMの段階で断ってますよ」
「それは……確かにそうですね」
「あ、笑った」
出会ってから初めてメグさんの笑顔を見た。笑顔と言っても少しだけ口角を上げて目尻を下げただけなので微笑みと言っても間違いではないのだけどね。
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