第102話
第102話です。
自室の部屋でイスに座りながら俺はパソコンをいじった。
検索エンジンに俺は『事務所オーディション』と打ち込む。
エンターキーを押すといくつか候補が出てきた。中には事務所に関して素人の俺ですらも聞いた事のある大手のオーディションも出てくる。
「倍率がえぐい……」
ただし流石は大手。そうそうに通るものでもないらしい。
そもそもの話、ミュージシャンとして所属する人以外にもタレントやお笑い芸人、俳優としても所属する人がいるのだ。別分野でのライバルがいる以上この倍率は仕方がないとは思う。
うむ、事務所に入った方が仕事は来やすいが、これはスカウトの方がもしかしたらいいのかもしれない。
特に音楽関係であれば、ライブハウスで名前を知られるようになればスカウトの目にも止まりやすくなるし、コンテストで優秀な成績を納めるという手もある。
可能性が高いのはライブハウスだが、その反面こちらは時間がかかる。逆に可能性が低いのがコンテストだが、逆に知名度が低くても一発逆転の可能性がある。
つまり、どちらにもメリットデメリットがあるのだ。
これに関しては俺よりも先輩の意見を尊重するのが正しいだろう。
「……夢を追うのって大変だな」
背もたれに背中を預けると俺はそう呟いた。
俺自身にはこれといった目標がないから余計にそう思う。
適当に私文の大学にでも進んで、4年間バイトと単位稼ぎに勤しみながら何となく内定を貰えた仕事に就く。その程度のイメージしかない。その程度の4年間で内定を貰えるのかは知らないけれど。
◆◇◆◇
屋上から出ていく後輩くんを見送りながら私はTwitterのDMを開いた。
相手は最近知り合った同い年の女子高生。知り合った経緯は彼女がドラムを弾けるという点でだ。
最近はTwitterに自分の弾き語りを何となくあげているとコメントが付いたりしていて、それに喜んでいたりしたのだが、その中にいたのが彼女なのだ。
そして連絡を個人的に取り合うようになったその最たる理由。それは彼女からの唐突な誘いだった。
『一緒にバンド組みませんか?』
シンガーソングライターを目指そうと思っていた私からしたら、それは目からウロコものの提案だった。
考えもしなかったのだ。誰かと音楽をするということを。
いや、普通の音楽に詳しくない人間がその道を目指すのなら、普通は音楽に詳しい人と活動したりするものなのだうけど。私には後輩くんがいたから、これのサポートはすごく頼れるものがあったから。だから、余計にそういう事は考えていなかった。
しかし、私も後輩くんに頼りっぱなしというわけにはいかない。
「私も道を切り開くためにこの誘いに乗ってみようか」
密かな決意を胸に抱きながら私は『詳しくお話を聞かせてください』というその一文を送った。
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