第9話
第9話です。
「それで、何の話するの?明日の天気ぐらいなら話題に挙げれるけど」
『おぉ、天気の話は最終選択じゃないですか』
スピーカー越しにクスクスと笑い声が聞こえてきた。俺の言葉で楽しめて貰えるなら幸い。それよか、本当に何も話題がないとなると、この電話の時間は無駄となってしまうが、そこのところを利根里さんはどうするつもりなのだろうか。
『うーん、そうだねぇ。じゃあさ、高校に入ってからもう数ヶ月経ったわけだし、クラスメイトの事も何となく把握してきた頃じゃない?だから、碧染くんも何となく、この子可愛いなぁ〜とか思う人いるでしょ!だから、その事について話そうよ』
「俺だけ?」
『もちろん私も!』
「なら……まぁ、いいけど。でも女子に可愛いと思ってる女子の事話すの何か恥ずい」
『奇遇だね!提案した私も恥ずかしいよ!』
「えぇ……じゃあ、何で提案したの」
少し内心で呆れながらも、これも利根里さんの性格なのだと納得する。
確かに普段から少し変わっているところもあるし、何より学校で見ている利根里さんと何ら変わらない。人によればリアルだったら全然喋らないくせに、ネット上だと急に饒舌になる人が実際に現実にはいる訳だしね
ほんと、このタイプの人はどうにかしないとダメだよ。世の中が求めてるのは、ネットにおいて長けたコミュニケーション能力ではなく、対人において発揮される高いコミュニケーション能力なのだから。
おっと、話が逸れてしまった。今は別の話題だ。
『それで、蒼染くんは可愛いって思う女の子いる?』
「うーん、どうだろ……」
こんな風に一丁前に悩むふりはしてみているが、俺自身多数の女子と関わりこそあるものの、それは深い関係ではなく軽く言葉を交わす程度なのであまりそういった面で見ることは無い。となると、必然的に利根里さんの無双タイムとなってしまうのだ。
クラスで、いや、学校で間違いなく三本指に入ってくるような美貌に加えて、俺自身との関わりは女子の中でダントツで深い。
(だから、選ぶとしたら利根里さんなんだけど。それを本人に伝えるのは何か気持ち悪い気がするんだよなぁ……)
心の中で「どうしよう」と悩みながら俺は少し黙り込んでしまう。
『あれ、蒼染くーん?聞こえてるかな〜?』
スピーカー越しには、そう呼ぶ利根里さんの高い声が聞こえてきた。
「聞こえてるよ」
『お、ならよかった。それで、誰かいるかな?』
「いるには……いるけど。でもやっぱなんか恥ずかしいからすごくパスしたい」
『ぶー、それじゃあつまらないよ。じゃあ私から言う?』
俺が話す決心をするまでの時間稼ぎなのか、利根里さんは俺にそう提案をしてきた。女子に先に言わせてしまうのは少し気が引けるが、ここは背に腹は変えれない。「お願いします」と伝えると『分かった』と応答する利根里さんの声が聞こえてくる。
『私がかっこいいと思う男の子はね〜、碧染くん!君だよ!』
「………は?俺?」
突如として話された事に理解が追いつかないまま、ボーっとしてしまった。なんだかボーっとしている間に色んな理由を聴き逃した気がするものの、「まぁ、いいか」と割り切り俺は話す決心を固めた。
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