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少年とゆかいな仲間たち


9/24(金) 誤字を訂正しました


 メルタが魔術師のヘルーテに弟子入りすることとなって一週間。すっかり疲弊しきっていた。



 荷解きは悲しくなるほどすぐに終わり、新たな調度品や服を用意して貰ったのは非常に有難かったのだが、その調度品が問題だった。



「もうっ!なんで家具が一人でに動くんですか!」

「あははは」

「爆笑しないでください!命に関わる切実な悩みなんですよー!」

「あはははははー!」

「なぜ爆笑するなと言った直後に爆笑するんですか、しかもより一層」

「ふふふ、家具が一人でに動く?そんなの理由は一つに決まってる、魔法さ。私の魔法でね。物に命を吹きこむ魔法なのだよ」

「うう、魔法を解いてくださいよう!」

「やだね。面白くないじゃないか」

「面白くなくて結構です!こっちは死にそうなんです!」

 顔を紅潮させ怒るメルタの苦情をどこ吹く風とばかりに聞き流す。



「これはね、メルタくんを魔術師にするための訓練なのだよ」

 えっへん、と胸を張る尊大な態度だ。


「え?」

「なんだい、そのとてもそうとは思えないと言わんばかりの意外そうな顔は」

「いえ。てっきり僕が家具に困惑しているのを見るのが面白いからかと……」

「う、まさか、そんなわけないだろう?魔術師になるための第一歩として、魔法で動く家具たちにいうことでも聞かせて見せてよ」


 怪しいなぁぁとジト目で睨むメルタを、ぐいぐいと恐ろしき生ける家具たちがいる部屋に押し込んだ。

「がんば!」

「ちょっとヘルーテさん!?」

 抗議の声もなんのその、バダン! と扉を閉め、なんなら鍵も閉めてヘルーテは悠々と読書を始めたのだった。












 どうしよう……

 ヘルーテに無理矢理部屋に押し込まれた挙句、扉を開かなくされてしまった哀れな少年、メルタは途方に暮れていた。

 南向きに大きな窓があるこの部屋はとても明るく、清潔感があり、家具もセンスが良く、メルタが使いやすいように、サイズにも配慮がなされていて最高だ。ただし、その家具たちが動き回らなければ。

 



 この家に住まわせてもらうことになってから、本当に散々だったのだ。



 はじめの頃はまだちょっと物音が良くするなぁ、程度だった。けれど最近は眠ろうとすればベッドが逃げ、タンスは引き出しを絶対に開けようとせず、棚は怠け者かのようにしょっちゅう横になる。絨毯は常に宙に浮かび落ち着かず、テーブルは的確に足の小指を狙って攻撃してくる。


 これらはまだ良い方で、特に攻撃的なタンスとテーブルが連携プレーで圧迫してくる。ベッドは寝させてくれるかと思えば勢いよく落とす。それにびっくりした絨毯が身体を持ち上げ部屋中をぐるぐる回る。ひとしきり回って乗り物酔いしたところで、怒り狂ったタンスとテーブルが襲ってくる。


 はっきり言ってストレスしかない!自分の部屋とは休まるところではなかったのか。これなら、嫌悪する家族のいるあの家の方が良かった。少なくとも命の危機はない。



 ていうかあの人、本当に僕が困ってるのを面白がってるんじゃ……?だってクズだし。命の危機を感じるという苦情を出されて笑って済ませるか?普通。


 ふつふつと怒りが湧き出てくるが、怒ったところで扉が開くわけでも、ましてやあのクズが反省するわけでもないのだ。それよりも、完璧にこの家具たちを手なづけて鼻の穴を開かすほうがよっぽど良い。



「よし、絶対に手懐けてやる!」

 大声に苛ついたのか、テーブルに突進された。


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