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魔力変換器?




「無線魔力変換器を作ろうと思います!」

「「無線魔力変換器??」」

 ドヤッとメルタが言うのに対し、よく意味がわからないといった様子でルリィとフロイデが鸚鵡返しする。

「従来の魔道具に掛けられている魔力変換術式はあらゆる魔力を一種類の魔力に変換させています。それを一種類だけでなく全種類にして、尚且つ、一個の魔道具で完結させるんです。そしてどんな魔道具にでも接続可能にすれば!魔道具のコストダウンにも繋がるはずで……!!」

 パァンっ!

 メルタの眼前でルリィが両手を思いっきり打ち鳴らした。

「どうどう、落ち着くのです。メルタさん。見てください、フロイデさんのぽかんとした顔を。メルタさんの言ってること多分半分も理解できてませんって顔なのですよ??」

「うぐ、すいません」

「では最初から分かるように、順序立てて、説明お願いするのです」

「はいぃ」

 ぶつぶつと呟きながら、自分の考えを整理する。

「あの、えっと、ですね。簡単に言ってしまうと、誰もが魔術師のようにあらゆる魔法を使える魔道具を作りたい、です」

「…………それは、本気で言っているのですか?メルタさん」

「はい」

「凄いことですわね!そんな魔道具ができたら、みなさん大助かりですわ!」

 頬を赤くしてぱちぱち拍手するフロイデ。しかし、ルリィは神妙な表情を浮かべている。

「確かにその夢物語が実現出来れば、今までにない功績になりますし、誰もが喜ぶでしょう。メルタさんの魔法できっと作ることができるのです。その上で断言するのですよ、メルタさん」

 ふうっと息を吐いてから少しだけ言いづらそうに、告げた。

「その夢物語は不可能、なのですよ。少なくともこの国に限っては」

「な、なんでですか?」

「この国の人口約五万人に対して魔術師はヘルーテさんとメルタさん入れて九人なのです。これでも歴代に比べてみればだいぶ多い方なのですが……少ないからこそ、価値がある」

「価値……」

 何もかもが魔法で決まってしまうこの世界で、魔法に愛され、最も尊いとされる魔術師。

 でもメルタは知っている。

 職業魔法適性なんて努力や知識や気合で覆せることを。

 魔法は制限されるものでも、差別されるものでもない。この世界に遍くすべての人にもたらされた可能性だ。

 みんななりたいものになって良い。

 使いたい魔法を使っていい。

 いくら馬鹿げていようともなりたいもののために努力していい。

 夢みたいなことも実現させるのが魔法だ。


「いいのです?メルタさん。魔術師につけられた希少価値は、計り知れないのです。その価値を暴落させうるものを、団長はともかく他の貴族の方々は黙っていないと思うのですよ」

「でも作りたいです!作ります!」

「い〜ま〜の〜、話、聞いてたのですぅぅ?!」

「聞いてました!なので、グレードダウンします!」

「え、あ、いや、は?」

 何を言ってるんだこいつ、という表情がだだ漏れになっている。

「もともと、僕が思い付いたのは、そこまですごいものじゃないんです。あらゆる魔道具を遠隔操作できるものを作ろうと思ったんです」

「いやなんか、十分すごそうなのですけど」

 ルリィが軽く引いてる。

「例えば、この鉛筆に魔力変換術式を付与しましょう。『エンチャント』」

 メモ用に持ち込んでいた鉛筆がメルタの魔法によって光り輝く。

「魔力変換術式、まずは火魔法から水魔法へ。『ファイア』」

 紅く光った魔力が鉛筆を介して青く変化する。

「次、水魔法から鉄魔法へ」

 青く穏やかな光がすうっと、白銀の輝きに変化した。

「こんなふうに互換性最強の魔道具を作りたいです。そしてこの鉛筆で変換した魔力を操ってこっちの魔道具に入れます」

 ユリの形を模したランプに鉛筆をくっつけた。鉄魔法から光魔法へと変換された魔力が注がれるとふわあっと優しく光った。

 バギッ!

 鉛筆が不穏な音を立てた。

「あ」

「まあそんなにいろんな魔力を流したら素材の方がもたないのですよ」

 無惨に折れてしまった鉛筆を見てルリィはそう言った。

「元より無理があると思うのですよ。めちゃくちゃ魔力に耐性のある素材を探してこないといけないし」

「うーん」

 ルリィの言うことが正しい。こんなふうに毎回壊れてしまっては商品として成り立たない。

 でもなんとかならないかと思案するメルタにフロイデが声をかけた。

「では、ヘルーテさまにお聞きしましょうか?」

「ヘルーテさんに?!」

 え、聞いていいの?ヘルーテさんに??大罪人に???

 はてなマークを飛ばしまくるメルタに、フロイデはどこか誇らしげな表情で続ける。

「ヘルーテさまがお仕事なさっているのはご存じでしょう?ヘルーテさまはなんでもご存じですから、わたくしたちが知りたいことを資料にしてまとめてくださっているのですわ」

「ああ」

 僕がヘルーテさんに言われるがままに書いてたやつかな?という言葉は飲み込んだ。

 まとめられた紙の束の一番初めのページに、誰からの依頼のもので、なんの書籍から引用した、どんな資料なのか、というのを散々書かせられたものだ。

 ちなみに筆跡でバレないようにたいぷらいたー?とかいうのを発明する徹底ぶりである。

「メルタさんもヘルーテさまにお尋ねしてみたらいいと思いますわ!」

「えと……僕、ヘルーテさんと連絡を取ってもいいんですか?」

「…………」

「フ、フロイデさん?」

 フロイデの目線が不安げに二、三往復、彷徨う。

「……だ、だいじょうぶですわ!」

「それ大丈夫なやつじゃないですよね?!」

「……ダイジョウブデスワー」



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