ごはんをどうぞ
ふわんと柔らかくキャッチされた………………と思ったら、また放り投げられる。
「ごめんなさいっ!僕が悪かったですぅー!あ゛ー落ちるー!!こわいー!!??」
ちょうどお手玉の要領で絨毯くんはメルタを弄ぶ。
ああ、魔物には追いかけられ、友達のはずの絨毯くんにはいいようにされている……僕って何してんだろ?
絨毯くんの気が済むまで無になることにしたメルタはお手玉に徹した。そうすると面白くないのか、直ぐに絨毯くんはぽんぽん放り投げるのをやめた。
「念話魔法、呪文なんだったっけ……」
呪文は全てガチ暗記なので呪文を忘れたら使えない。
ちなみにヘルーテは記憶力がめちゃくちゃ良いため、そんな苦労とは無縁である。
「ヘルーテさんみたいに、記憶力が良かったらなあ」
言ってもどうしようもないけど、ほんと、どうしようもないけど。
「絨毯くんが念話魔法を知ってるわけないよねぇ……」
ねんわまほうのじゅもんはてれぱすだよ。
とどやっと誇らしげにくるくる端っこを丸める。
「本当にありがとうございます、感謝しかありません。ほんっとうに優秀だよね、絨毯くん」
まあ、これでもヘルちゃんのともだちですから?
と言わんばかりにドヤる。堂々としているけれど、端っこがぴょこぴょこしているので、ちょっと褒められて照れているようだ。
「じゃあ、いくよ……念話魔法『テレ……』!」
「がああるるうう!!」
「ごめんなさいぃ〜っ?!」
メルタくんしっかりして!どうどうとするの!なにまものなんかにびびってんの!
と叱咤するように、怯えるメルタを自分の体の上で転がす。
「いやいや、怖いって半端ないって。魔物なんかにって言ったってめちゃ怖いって!見てよ、あの牙。大きすぎだよ〜!!」
「がああるるるうう!」
「ほら、めちゃくちゃ威嚇されてる!」
なさけないなあ。おとこのこでしょ?
と肩をすくめるように体をたわめてから、メルタのお尻をどんどんと押し上げる。そしてラーオルグの真正面に急降下した。
「わーわー!待ってこころの準備がああー!!」
はい、いまだよ!もっかいねんわまほうかけて!
と言わんばかりにメルタをラーオルグに突き出す。
「わー!わー!ね、念話魔法『テレパス』!魔物さんたち、落ち着いて……えええええ?!わあああああ!襲われるぅぅぅ?!」
メルタくんおちついて!とくいなまほうでぼうぎょだよ!
ラーオルグから距離を取りつつ、アドバイスする絨毯くん。
メルタの脳裏に何かが閃いた。
「鍛治魔法、金属製製『アイアンメイク・ゲージ』!」
瞬間、眩い光が放たれた。しかし、わずかな間のことで、光が収束して無骨な檻を残して消えた。
なんてたってメルタの一番得意な魔法は金属製のものを作り出す魔法である。しかもその強度は体重五トンの魔物がボディープレスをしたって壊れないのだ。
ラーオルグは自らを閉じ込める檻を破壊しようとして攻撃したが、自分の爪を傷めるだけの結果に終わった。
「ラーオルグくん、ごめんね。でも僕だって食べられたくはないから。はい、だいぶ遅れちゃったけれどお昼ご飯」
しずしずと無限巾着の中から引っ張り出し、檻の外から慎重に差し出す。しばらくすんすん匂いを嗅いでいたが、安全と判断したのか、かぶりついた。
夢中になって食べているのを眺めながら少し一息つくことができた。
「えっと、絨毯くん。あと十二匹の魔物に同じようにご飯をあげなくちゃいけないんだけれど、手伝ってくれないかな?」
………………。
やってられっか!
と絨毯くんはメルタを放り出し、城の屋根へ日向ぼっこしに行ってしまったのだった。




