エピローグ この世界で、どこまでも
別にシュレディンガーだの箱だのニャンコだのを持ち出すまでも無く、あらゆる事象はハッキリ観測されるまで確定しない。んで、世の中は意外とテキトーで曖昧だから、「これ!」と確定していない事は、実はそこら中にごまんと転がっている。まあでも、それが必ずしも悪いってわけじゃない。むしろ、あえて確定させない事で無限の可能性を残している。そう考えてもいいんじゃないかな。うんうん、あえて、逆に、ね。……えっ、ごちゃごちゃと何が言いたいって? つまり――俺の性別なんて気にすんなっ! って、こと。
だいたいよ〜。別になんでもいいじゃねえか、そんなもん。
俺はモブ顔のおっさんとして『石油王ゲー』にいる。誰でもない、俺の意思でそう決めた。それが全てで、それ以上でもそれ以下でもない。これ、ゲームだよ? 中の人の性別とか知ってどうすんだよ。はい、これが俺の答え! ファイナルアンサー!
「はいはい、わかったわかった。そういう事にしておくよ」
なんなの、ソレイユのその「自分はわかってるけどね?」って感じぃ〜! ムキィー!
「別に、どっちだっていいわ。アンタはアンタよ。そうでしょ?」
おっ、今の笑顔はちょっとドキッと来た。
そうそう、そういうこと。さっすがリュンネ、いいこと言うじゃん!
「そうですよ。現実なんて関係なく……私はオールディさんの事、好きですからね」
おうふ。ありがとうございます、ココネルさん。……えっ、likeの好きですよね?
「んんん〜でもでもやっぱり〜、スクスクは現実も気になるニャ〜。……あっ、そうだ!」
さも「名案を思いついた」ってなテンションで、スクスクは迷案をぶっ込んできた。
「このメンバーでオフ会をしない? みんなとは、もっともっと仲良くなりたいニャー!」
はぁ〜〜〜??? なにそれ〜〜〜??? 今の流れで何でそうなるの〜〜???
おいおい、そんなん誰も乗ってくるわけが――。
「良いわね、それ! 名案じゃない!」
「うわ〜〜楽しみ〜〜! なに着ていきましょう!」
「オフ会かあ……なら、僕はカラオケに行きたいな!」
「カラオケ! それそれ! それニャー!」
……いや、どれだよ。『石油王ゲー』内にもカラオケあるじゃん。オフ会でやる意味。
えっ、これ……もうやるのは確定な流れ? いつの間に? ちょっと待って?
つうかお前ら、みんな身体スキャン勢じゃん。見た目オフでもオンでも変わんないじゃん。何でそんなオフ会やりたいの? 謎くない?
おじさんは言いたい。お前ら全員、顔が良い事を自覚しろよと。ゲーム内だからまだ良いようなものを……現実でなんか会えるか! 眩しすぎて目が潰れるっつーの! 言わないけど!
とーにーかーく! オフ会なんて行かねーぞ俺は! ぜっっっっったいにっ、行かねーからなー!
「えー、オールディさんは来てくれないんですかー?」
うっ、上目遣いは卑怯ですよココネルさん。絶対、おそらく、多分、行かない可能性も……。
「……ちょっろ」
そこー! 聞こえてるぞリュンネー! しょうがないだろこれはー!
「まあまあ、オフ会はともかくとしてもさ。……やっぱり、次の遠征はみんなで行こうよ。その方が、絶対に楽しいからさ!」
あー、そんなこと言ってたな、ソレイユ。
ちゃんとした剣も出来たし、そろそろ本格的な遠征に行くつもりらしい。で、元々はリュンネと2人で行く予定だったんだが、最近では「みんなで行こう」って言い出している。
うん、こっちとしてはありがたい話だ。
いまだにこの街からろくに出た事ないからな、俺。この広い『石油王ゲー』の世界、どうせなら色んな所に行って、楽しんでみたい気持ちはある。
それに、珍しい魔物の素材とかも、いっぱい手に入りそうだしな。ちょっと情報が出てるだけでも、色々と悪用できそうな魔物素材があるっぽいんだよね。その辺、是非とも手に入れたい! それ使って変なもの作りたい!
「でも、本当に良いのか? 戦力にはあんまりならないぞ、俺」
こないだの事件の時は、火事場の馬鹿力的なあれで何とか頑張ったけどさ。普通の戦闘技術って持ってないし。
「戦闘は任せてくれて良いよ、僕たちだけで十分だし。観光旅行だと思って、気楽に来てよ。もちろん、スクスクとココネルも一緒にさ」
ああうん、確かにな。そんじょそこらの敵なら、ソレイユとリュンネだけでオーバーキルだろうし。そうそう問題はないか。
「……まあ、それ以外の所でオールディの力がきっと必要になる。そんな気はするけどね」
待て待て、変なフラグを立てるな。俺はただの鍛冶屋だぞ。遠征でやる事なんて、そんな無いだろ。
いやそれはともかく……そういう事なら、ご一緒させてもらうとしよう。
「じゃあ世話になるよ、よろしく」
「えっ、本当に良いニャー!? やったニャー!」
「わー、ありがとうございます! 楽しみです!」
「じゃあ、決まりだね。……あっ、そうだ!」
ぽん、と手を叩いてソレイユは続ける。
「だったら、目的地もみんなで決めようよ。これが候補なんだけど……」
「う〜ん、こっちもあっちも捨てがたいのよね〜〜」
「どこも楽しそうだニャー!」
……ワイワイと話し合っている仲間達を眺めながら、つくづく思う。
俺は、いい出会いに恵まれたな。願わくば、いつまでも楽しく、こんな風に……。
「オールディさん、どうかしましたか?」
「……いえ、何でも無いですよ」
そうだよ。感傷に浸るには、早すぎるよな。
生産に、冒険に、交流に。
やりたい事は、まだまだいくらでも溢れているんだから。
まずは今を……全力で楽しまなきゃな。
だから――。
「おっしゃー! とりあえず、もっかい乾杯するぞー!」
「イェーイ!」
「そうこなくっちゃ!」
では――この素晴らしい仮想現実と、仲間達に出会えた幸運を祝して!
「「「「かんぱーい!!!」」」」
未来の事は誰にもわからない。それこそ曖昧で、ハッキリしない、不確定な話だ。
でも……このくらいの事は、言ってしまって良いんじゃないか?
この愉快な日常は――――まだまだ続きそうだ、ってね。
これにて1章完結です!
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
皆様のブクマ、評価、感想、誤字報告のおかげでここまで書くことが出来ました!
本当にありがとうございます!
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不確定にはしましたが、ここまで読んだ上で読み返して頂くと、意外な発見がある……かも?
長めの1章後書きは後日活動報告に書く、かもしれません。
また2章でお会いしましょう。
ではでは!




