はじまりの日
これから頑張ります!アドバイスとか諸々いただけるとありがたいです!
「柊弥達、いつ終わるんだろうね」
「いつでしょうね。お二人のことだから、終わるのが遅いと、自主的に抜けてきそうですが、大丈夫ですかね……」
「流石に、大丈夫……だろう」
そうなふうに後輩とお互いの恋人について話し、そっと苦笑した。
今日も平和だ。美術の課題である彫刻に苦しめられながらも思えた。
そんないつも通りの放課後に。
突如。ものすごい音が響いたかと思えばすぐに激しい揺れが起こった。
窓ガラスが割れ、棚から何か物が落ちた。廊下でも色々と壊れている音がする。
机の下に潜ることもできず、ただ背を丸めて過ぎ去るのを待つ。震度7はあるんじゃないか?3以上経験したことないけども、そう言われたら納得してしまう。
揺れは1分ほどでおさまった。
「美桜!無事か?」
「私は大丈夫です。椿先輩は?」
「私も大丈夫だ。美術室の真ん中にいたのが良かったのかな」
幸い私も、一緒に作業していた後輩も無事だった。思わず息を吐いたが、地震はかなり大きかった。他のみんなは無事だろうか。余震もあると考えると……後輩と顔を見合わせ、眉を顰める。
「うわあああぁぁ!」
「きゃあああぁぁっ」
「いやぁあっこないで!」
悲鳴が響き出した。玄関の方面からか?1人ではない。不思議な物音もする。立ち上がり、辺りを探るってみるが、よくわからない。なんだ?何が起こっている?
ふと窓の方を見て絶句した。先程まで陽が出ていたはずなのに、窓の外は雨の日のように薄暗くなっている。
自分の心臓の音が聞こえるほど鳴りはじめた。肌寒いはずなのに汗が滲んでくる。まずいことが起こっている。それだけはやっと理解できた。震える後輩の肩を抱き寄せながら、混乱している頭でさらに状況把握を行おうとする。
かなり近くで窓の割れる音がした。もう地震からは5分弱たっているはず。いや、もっと短いのか?それすらもわからない。
ガンッ
唐突にドアがあいた。いや、開いたと言うより吹き飛ばされた。
吹き飛ばされたドアに目が行ったが、原因を見るため、ドアのあった場所を見る。
そこには、化け物がいた。最近ハマり始めたラノベや、漫画でしか見たことないような容貌。
なんだ?こいつは。涎を垂らした犬の顔が、マッチョの体の上にある。背丈はそんなにない。170ほど。手には…血であろうものに濡れた斧。血だとしたら何の血だ?まとっているのは皮の鎧?なんなんだ。本当に。訳がわからない。そして気づいた。ソレが斧とは逆の手に、人の頭を掴んでいることに。ということは斧の血は……
そこまで思考がいきついた途端、息を呑んだ。
近づいてくるソレから後輩を背にかばい、思わず机上の彫刻刀を掴む。コイツは人を殺すんだろう。
目があった。喉がなった。殺される。そう思った。
守らなければ。死にたくない。死なせたくない。夢中で彫刻刀を投げた。うまく刺さったせいか、それたも反撃すると思わなかったのか。歩むのを止め、怯んだ。その隙を逃さず、次はカッターで首を掻き切る。刃物はあっさりと通った。
ひと息ついて、吐いた。血の匂い。掻き切った肉の感触。ベタつく返り血。気持ち悪い。
何度も、何度も、胃が空になるまで吐いた。殺した。私が。人かもわからないやつだったし、守るためだったとはいえ、気持ち悪さは消えない。
元々血がダメな上、手に感触が残っていて、そこを意識してしまう。息をするのが疎かになっていく。誰かに縋りつきたい。ぐちゃぐちゃの何を考えているか自分でもわからない思考に沈んでいく。
やがて視界が揺れ始めた。視界が血とは別に赤く染まっていく。気を失ったら楽になるのだろうか。ふと、染まっていく視界の隅に泣きそうな顔をしている後輩の顔がうつった。
あぁ、ダメだ。落ち着け。ここで気を失って何になる。楽な方に行こうとする思考を止めて息をすることに集中する。
浅い息を深く吸うようにしながら整えていく。
柊弥。会いたいよ。君のことだから無事だろうけど心配だよ。
少し落ち着くと思い起こされるのは恋人のこと。そして友人、家族のことも思い出す。
腹を括ろう。ぐじぐじするな。こいつらは、悲鳴などを聞く限りまだまだいる。私が動けば救われる命がある。なら今は止まってる場合ではない。救うことにのみ専念するんだ。今動けなければ後々、悔やむことになる。それにあの人の彼女として恥じぬ行いをしなければ。
そう覚悟を決めた。まだ混乱している頭を冷やすため、血でベタつく顔を水で洗い、
「大丈夫か?みお。見苦しいところを見せてしまってすまない。」
「だいっじょうぶですっ!」
放置してしまっていた後輩をみる。泣きそうだが怪我は無さそうだ。良かった。にしても、この子は強い。錯乱状態に陥ってもおかしくない状況だ。なのに泣くのを我慢しようとすらしている。
とりあえず動くか否かを話し合い、私が、外に他の人を助けに行きつつ柊弥達の元へ向かいたい。そう伝えると、彼女も一緒に行きたいと言ってくれた。ありがたい。
あった布で血を拭い、私はナイフと彫刻刀を持って、後輩はカッターを持って美術室を出る。こんなものでもないよりかはマシだろう。
1分ほど進んだところでで女子生徒が2匹に襲われているのが見えた。走り出しながら叫び、
「こっちに逃げろっ」
彫刻刀を目に向かって投擲。隙を作って生徒を逃す。そのまま追ってきた奴らを迎え撃った。小さい頃に忍者に憧れて始めた武術が役に立つとはな。
「私が引きつけている間に!早くにげてくれ!」
止まってしまっていた2人に叫んだ。ハッとしたように遠ざかる2人の足音を聞きつつ、応戦。2匹は辛いな。豚と犬。豚の背丈はさっきのやつより10センチほど高く、180ぐらいか。
豚も犬も剣を1振りそれぞれ所持している。やはりよく分からないままだが、今は倒すが最優先。観察をやめ戦うことに集中していく。
ガッ
お腹にパンチをくらい、飛ばされる。
受け身はとれたが肩も、腹も、足も痛い。息が浅いせいか、肺も痛い。
どれくらい戦っていただろうか。連携が殆どないおかげで生きながらえている。
弓を使わないとすると私は二刀流が主な戦闘スタイルだ。普段の道場では右に100cm、左手に60cmを持って練習に参加させてもらってる。
二刀流のいいところは右でも左でも戦えること。
でもどっちにしろ今持っているナイフが大きめとはいえ、この刃渡りではリーチが圧倒的に足りない。
かなり詰んでる。
諦めるしかないのか?
そう考えて苦笑した。
でも諦められないんだよね。
会いたいし。戦える人は少ないどころかいないかもしれないし。こんなとこで倒れるわけにはいかない。それに普通に悔しい。
なんとか息を整え、立ち上がる。
そう考えると、やる気も出るな。
2匹を見ると、私をもうやったと判断したのか、争いを始めていた。言語はわからんがどっちの取り分だとかだろう。
チャンスだ。
背を向けていた豚を後ろから袈裟斬りに。よろめき、振り返ったところに首を目掛けて突く。
ありがとな。背を向けてくれて。馬鹿な行動をしてくれて。
血飛沫をあびても、怯んでいる暇はない。
唇を噛み、吐き気が込み上げてきたのを呑み込む。
豚の体を蹴り、ナイフを引き抜くと犬へと向き合った。
「さあ、これで1対1だ。」
自分より20センチ程高い所にある目を睨みつける。
これで終わりではない。2匹を倒したあと、息を整えつつ思う。血にはもう慣れてきてしまったが、この斬る感触には慣れられない。
しかし、さっき逃した2人も心配だ。それに悲鳴は止んできているが、ヤツらはまだいるだろう。止まっている暇はない。柊弥達の無事を祈りつつ、渡り廊下の方へとかけて行った。
編集していくうちに1500だったのが3,000まで増えてしまった……。次からもっと少なくなるように頑張ります……