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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第捌話:人狼娘

盗賊団の護衛を任されていたオードリーは、些細なことから依頼主と対立したためにほかの護衛達から命を狙われることとなった。だが、オードリーは次々と盗賊たちを倒していき、戦闘継続可能となったのはワーウルフの女性だけとなった。

「ウオオオオオーン!!」


 オードリーが、余韻に浸る間もなく今度は、腹の底から響くようなオオカミの鳴き声を発しながら、上半身が裸になったワーウルフが右手の鉤爪を振り下ろしてきた。


 だが、恥じらいがあるのか動きにキレがなくオードリーは、「フッ」っと笑った後に駄々っ子をあしらうように先程よりも遅い斬撃を剣でうけとめた。


 「馬鹿にしているのか?それとも、わたしが女だから手加減しているのか?」


 ワーウルフは、顔を真っ赤にして涙を浮かべていた。その表情は何物にも屈しない気高き狼だったが、次第に助けを乞う捨てられた子犬のようになっていった。


 「だったら、助けてくれ!私はこんなところにいるのは嫌だ。私は、もともとそこに居る奴隷たちと一緒の檻に入れられていた。」


 彼女はオードリーにしか聞こえない小さな声で話をつづけた。


 「だが、コルトネに仕えていくうちにその身体能力と度胸を買われ、いつしか護衛の一人として働くようになっていった。」


 オードリーは、彼女が話している最中も険しい表情を崩さなかった。そのおかげか、コルトネやガツマーには怪しまれていない様子だった。


 だが、さすがにそろそろ動かないとまずいと思った二人は剣を交えながら話し合った。


 「だが、しょせんは女・・・!夜は奴の付添人さ、抵抗すればひどいしっぺ返しを食らう。」


 オードリーと対峙しているふりをしているので彼には見えないが、彼女の背中には滑らかな肌にあるまじき大きな刀傷があった。


 「なるほど、おいぼれのところに来れば、その心配もなくなるというわけか?」


 「まあ・・・それもあるが、ローゼン王国は、女性の亜人ですら望まない性行為をされないと聞くからな。」


 「彼女たちを助けたいと思っているのか?」


 「ああ・・・。」


「それならば助けてやろう。」


 それを聞いて彼女の顔はパッと明るくなった。


 「ほんとか?ならば名乗っておかないとな・・・。私は、タビー。タビー・ブラウニーだ。」


 オードリーは、自分も名を名乗った。


 「私は、オードリー・ヒロード・シップバーンだ。では、タビーよ。一応聞くがなぜ貴様は、彼女たちと逃げ出す機会があったにも拘わらずにそうしなかった?」


 そう、実は昨晩コルトネから奴隷たちの檻の鍵を渡されて見張りをさせられていたのだ。


 タビーは、はっとした顔でしばらく彼を見つめていたが、何かを思い出したらしく理由を話した。


 「そ、それは、怖かったからよ。コルトネの野郎は大したことはないんだが・・・問題はガツマーだ。奴は魔眼持ちで、魔力を秘めている人物であれば逃げ出したことなんてすぐにわかるさ。」


 「・・・そうか。」


 オードリーは、一言そうつぶやくと先程の加減していた時とは打って変わり、スキル「剛腕」を使って、油断していたタビーを鉤爪ごと切り裂こうとした。


 タビーは、寸でのところでそれに気づき後ろに跳躍した。彼女ののど元には横一直線に伸びる浅い切り傷ができているので、少しでも遅れていたら首が飛んでいたであろう。


 「なにっ!!」


 「今の発言は、少なくともガツマーに関しては嘘だな・・・。裏切りは女のアクセサリーだって昔のパーティのリーダーがよく言っていたが、あいにく俺はそういうタイプの女は嫌いなんだ。」


 「裏切り?どういうことだ!タビー!!」


 コルトネは、すごい形相で唐草模様のようなものが柄に彫られた短刀をタビーに向けた。


 だが、それをオードリーは手で制止した。


 「いや、裏切られたのはこっちの方だよ。最も、お前さんも裏切るつもりだったから・・・あながち間違ってはいないか。」


 「・・・なぜ、私が嘘をついていると?」


 「ガツマーは、晩飯の焼き魚にあたったせいか、野営地からかなり離れたところにあった川で下着を洗っている仕草が見えたものでな。」


 ガツマーは、恥ずかし事実を暴露されて顔を赤くして膨れていた。


 「ちょっと!オードリーさん!何で知っているんでゲスかそんなこと?!ぷう!!」


 「ハハハ!!悪い、言い忘れていたが俺もお前さんと同じ魔眼持ちなのでな。」


 それを聞いて、ガツマーは戦慄した。なぜなら、通常魔眼で魔物や魔法使いを認知できる範囲は、地球の単位で表すと半径1kmがせいぜいなのだが、当時、オードリーがいたテントとガツマーがうん筋のついたパンティを洗っていた川までは、約五キロも離れていたからである。


 「馬鹿な!あそこからテントまで1ルーグ(約五キロ)も離れていたのでゲスよ!!そんなことができるのはS級の冒険者ぐらいしかいないでゲスよ!」


 タビーは、自分はとんでもない人に嘘をついてしまったことに対して顔を青くして戦慄していると、突然炸裂音がして自分の胸のあたりが熱くなるのを感じた。


 オードリーは、コルトネの方を見ると地球の中世あたりから登場する火縄銃によく似た武器をタビーに向けて撃っていた。


 「あ・・・が・・・。」


 彼女は、何が起きたかわからずに口から血を流して倒れた。


 「それは、火縄銃か?」


 コルトネはニヤッと笑って火縄銃の発砲準備を行い、今度はオードリーに向けた。


 「そうだ。よく知っているな・・・こいつはアシェーラ王国製のペガサス銃でな、威力もほかのものより性能も威力も段違いと来たもんだ。」

 

 「ほう、だが私の剣技についてこれるかどうかは解らんぞ。」


 「ふっ・・・くたばりやがれ!」


 コルトネは、手慣れているかのように火縄のそばで指パッチンで火をつけた。


 ドオンという発砲音とともに、鉛玉が勢いよくオードリーに向かって発射された。


 次の瞬間、彼は目にもとまらぬ速さで鉛玉を上に向かって真っ二つに切った。


 「ウオオオオ!!」


 オードリーは、コルトネとの距離をあっという間に詰めて刀を振り落とした。


 「強制鬱状態刀傷ネガティブペイン!!」


 オードリーがこの言葉を発すると、刀がまがまがしい赤色に変色してコルトネの銃を持つ左腕を切り落とした。


 鮮血が噴出してその返り血がオードリーの背中にかかった。


 「ガアアア!!!」


 耐えがたい痛みと恐怖がいっぺんに押し寄せたコルトネは、早く自分を癒すようにシュナラに言った。


 コルトネは、鋼の精神を持っており、普段は腕を切り落とされるほどの刀傷を負わされても全く動じることはないのだが、あたった人物の精神を砕くネガティブペインを喰らってしまったことにより、いつもより過度におびえるようになってしまった。


 コルトネの意思を汲んだガツマーはシュナラにだけ束縛魔法を解いた。彼女は、体の自由がきいたことにうれしさを感じながらも、彼の言う通りにしないと殺されるという恐怖感から、仕方なく回復魔法を発動させるため左腕を伸ばした。


 だが、オードリーの刺すようなまなざしがシュナラに向けられたので彼女は回復をさせようと伸ばした左腕をひっこめた。先ほどの奴隷商人が左腕を吹き飛ばされる光景や、女性であっても敵であれば容赦はしない彼を目の当たりにしたため、無意識に自分の左手を自らの豊満な胸にうずめた。


 「何をしている!?おい!!」


 左腕を抑えながら回復を訴え続けている彼の目の前に血まみれの剣が突き付けられた。


 「降伏しろ。さすれば命は助けてやる。」


 コルトネは、最後の力を振り絞って残った右手で短刀を腰のさやから抜いた。


 「てめえなんかこわくねえ!ヤローオブクラッシャアアア!!」


 オードリーは、コルトネの猪突猛進ともとらえられる攻撃をかわすと、突如起きた風とともに彼の左をすり抜けた。


 「いい心意気だ。だが、剣の腕前はまだまだだな。」


 パチンという刀のつばと鞘のあたる音が合図となったかのように、コルトネは上下真っ二つになって崩れ落ちた。


魔導士ガツマーは、主人であるコルトネがやられてしまったショックで腰が抜けてしまった。


「ひっ・・・ひい!!」


オードリーは、後ずさるガツマーに向かいながら自分語りを始めた。


「正直、この護衛任務はどうにも気が進まなくてね。性格上、幼気な少女を慰み者にする奴は本来であれば殺してしまいたいぐらい憎いのさ。」


そう言うと、おびえて膝を抱えるガツマーに剣を向けて呆れた顔でこう言った。


「その演技はもうやらなくてもいいと思うぞ。第二師団団長ヴォセム・メースト・ガツマー。」


果たしてガツマーのオードリーに対するおびえは演技なのか?次回もよろしく!

次回更新は五月九日です。

誤字脱字などがありましたら、遠慮せずにご指摘ください。


追記1:性処理はまずいと判断したので付添人に変更しました。

追記2:ヤローオブクラッシャーの元ネタ解る人って今の若者でいるのかな(;^ω^)


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