第肆拾肆話:奴隷救出作戦 ~其の肆~
一話からから最新話まで読んでみて矛盾点や誤字脱字があればコメントください。よろしくお願いします!
・・・他人任せじゃダメだね~(顔を歪ませながら)
「オオオオオ!!」
「アアアアア!!」
男二人の獰猛な叫び声とともに強烈な金属音が鳴り響いた。
「本当にいいのですか?艦長。ゲッツは、この世界じゃ恐らく一番切れ味の良い日本刀で戦っています。ベルノルトさんの剣の腕を信じていないわけじゃないですけど、いささか不利じゃありませんか?」
「為栗少佐、海軍軍人に必要なことはなんだと思う?」
「え?は、まあ、そうですね~。やはり、潮気とユーモアでしょう!!」
「フフン♪そうですね。まあ、私の場合は潮気よりも色気があるかしら。」
そういって、咲綾艦長はわざとらしく耳を覆っている長い髪を細い指でかきあげた。
「・・・・・・あ、ああ。そうですねハイ。」
「なによ今の間は~。」
艦長は、顔に影を作って為栗をにらんだ。口元は笑っているが、目が笑っていなかった。
「も、申し訳ありません!!!」
「怒ってなんかいないわ。ただ、今の状況を見て発言した方がいいわね。」
そう言われて、為栗少佐は考えるときの癖で口を尖らせた。
「あ、そうか!今は味方が敵と交戦中!!」
「そう、それを踏まえたうえで何が最適解か考えなさい。」
「なるほど、どちらに転んでもいいように対策を練っているわけですね。」
「そう言うこと。」
咲綾艦長の考えは、もしゲッツが勝利して予備の小銃をいただいて国へ帰った場合。仮想敵国のお偉いさん方に、自分たちが何と戦っているのか理解するものが少なからず現れるということだ。
・・・・・・
「ゲッツ上等兵殿!もう一度考え直すことはできませんか!?」
そう言いつつもベルノルトは、剣を振りかざす手を緩めない。
「俺はノスタルギー皇帝陛下に忠誠を誓うといっただろうが!!」
ゲッツも負けじと、金属音にかき消されないように大声を張り上げた。
「その皇帝陛下が、我々第七艦隊を厄介払いするためにここに送り出したとしてもか!?」
ベルノルトは、一瞬のスキをついて踏み込んで剣を下から上へ振り上げた。
「なぜそうだと分かる!?」
それをゲッツは紙一重でよけた。
「考えてもみてください!先遣部隊が上陸した新大陸は、あのドライウィンド盗賊団の第一師団と第二師団の団長が行方知れずになった土地。ドワーフやエルフが住んでいること以外、全くの未開の土地なのですよ!」
しゃべりながら戦っていたため、疲労が蓄積した二人は剣を振り回すことをやめて肩で息をした。
「俺は、たとえ・・・陛下にぼろ雑巾のように捨てられたとしても、養豚場の雄豚を見るような目で見られたとしても、亜人奴隷のように扱われたとしても、絶望の底にいた俺に救いの手を差し伸べてくれた恩義は・・・忘れねえ。」
「そう・・・ですか。」
ゲッツは息を整えた後、日本刀をベルノルトめがけて振り下ろした。
「オラアアアア!!!」
これをベルノルトは慣れた手つきで自分の頭上を刀で守った。
だが、ゲッツの生まれ持った怪力と日本刀の組み合わせの威力はすさまじく、受け止めた部分にひびが入っていた。
「へっへっへ・・・終わりだ裏切り者め!!」
「いや、終わるのはあなたの方です。元上等兵殿。」
「何!?」
次の瞬間、ベルノルトは肉薄していたゲッツを足払いでなぎ倒して、後ろ向きで倒れたところを刀で彼の心臓を突きさした。
「もはや・・・ここまでか・・・。」
鼻と口から血を流したゲッツの表情は、なぜか憑き物が取れたかのような穏やかなものだった。
「終わったようですね。」
女性の声がしたのでベルノルトが振り返ると、そこにはこの船の女性艦長が立っていた。
「ハイ、艦長!」
ベルノルトは、両足をそろえて右手の甲をおでこに当てるクラウドペガサス式敬礼を行った。
艦長は、ベルノルトに日本式の敬礼をした後、彼がゲッツとの戦いにおいて話していたことを教えてくれるよう頼んだ。
ベルノルトは、これまでのゲッツとの会話を一字一句違えずに彼女に伝えた。
すると、彼女は驚いた表情でそれを後ろで見ていた部下たちに日本語でこう叫んでいた。
「帝国軍人に告ぐ!ゲッツ上等兵殿は、使える主君は違えど帝国を・・・主君を守らんとする意思は同じである!!ゆえに圧倒的に不利と知りながらも最後まで帝国軍人らしく我らの宿敵としてここで戦い果てようとしている!よってここ駆逐艦『雷』甲板上にて、我らなりの最大限の経緯をゲッツに捧げる!」
いつの間にか涙ぐみながら、部下にそう告げた咲綾艦長は彼らの前で向き直りそれまでかぶっていた軍帽を脱いで床にそっと置き両膝をついた。何かを察知したベルノルトは彼女にぶつからないように数歩下がった。
艦長は両手両膝、頭をゆっくりと甲板につけた。それを合図に、後ろにいた日本軍人全員がゲッツの方に向かって艦長と同じことを行った。
「べ、ベルノルト・・・。」
ゲッツは、最後の力を振り絞って口を開いた。
「なんでしょう?」
「て、帝国を・・・皇帝陛下を、開放してやってく・・・れ・・・。」
「ハイ!必ずや・・・。」
ゲッツは二ッと笑うとそのまま力尽きた。
最後を見届けた俺は、ゲッツの体に突き刺さったままの自分の刀を引き抜いた。
しばらくして、立ち上がった艦長は白い布の切れ端を持ってきてくれた。
「どうも。」
ベルノルトはお礼を言って血が付いた刀を拭いた。
「ベルノルトさん。」
「ハイ。」
「この名場面で質問をするのもなんですが、この国の軍人の階級制度はどのようになっているのですか?また、あなた方の国では兵士が敵と戦って死んだ場合、階級はどうなるか教えていただけませんか?」
ベルノルトは、敵国と戦って死んだ兵士は二つ上の階級に繰り上がることとこの国の軍人が持つ階級を教えた。
すると、彼女は骸となったゲッツの方を向いてクラウドペガサス式の敬礼を行った。
「ゲッツ・ライナー・プッヘルト中尉に対して!敬礼ーッ!」
それと同時に日本軍人たちは、一斉に敬礼を行った。ベルノルトもその光景に目頭を熱くしながらゲッツに敬礼をした。
その時、どこからともなく音楽が流れてきた。
「これは?」
「『抜刀隊』・・・多分空母加賀にいる陸軍の第四海兵師団の仕業ね。酔狂なことをしてくれるじゃない。」
勇ましい日本の軍歌が流れる中、日本軍人は決闘の後片付けに追われた。
もちろん当事者であるベルノルトも例外ではなかった。
旭日旗と呼ばれる旗に包まれたゲッツの遺体は、甲板から海へ埋葬されようとしていた。
「捧げー筒!」
掛け声と同時に小銃を持った日本軍兵士が高々と銃口を斜め上に向けた。
「撃てーっ!!」
パンパンパンと乾いた音ともにゲッツは雷の左舷から海へ埋葬された。
その間にも、後ろで待機しているベルノルト含む乗組員たちは直立不動で日本式の敬礼をしていた。
「・・・ゲッツ中尉殿、向こうで見ていてください。アイメン。」
「アイメンとはどういう意味ですか?」
「我らの国教クリスティアーノ教の御祈りの言葉ですよ。咲綾艦長殿。」
「・・・アイメン。」
その間も抜刀隊はスピーカーから流れ続けていた。
抜刀隊とサバトンのシロヤマは聞いていて何か来るものを感じました。




