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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第肆話:荒野のドラゴン

政府の極秘研究所で、平賀博士の転送装置作動実験に付き合うことになった主人公の富士見は、言われるがままにほかの二人と一体で遠い星へ転送されることになった。そこで彼らを待ち受けていた物とは?


気が付くと俺たちは、だだっ広い荒野にたたずんでいた。


空気は、どことなく地球や火星居住区よりもきれいで澄んでいたのですぐにここが例の星だと判断した。


少しばかり、暑い気がするが恐らく砂漠に近い場所なのだろうと俺は思った。


「成功だわ!指定した座標とピッタシだわ!」


俺は、檸檬が訳の分からないことを言ってはしゃぐので訳を聞くと。


「実は、この実験。ちょー危険だったの。失敗すれば、体の一部が溶けたり、無事だったとしても正常な精神を保てなくなるのよ。それに、指定した位置座標と異なる座標に飛ぶこともある・・・簡単にいえば宇宙空間に放り出される危険性もあったの。」


それを聞いて俺を含めた二人と一体は戦慄した。


「そんな実験によく溺愛する孫を送り出せたでありんすね。」


「だっておじいちゃん言ってたもの。可愛い子には旅をさせよってね。」


「それ、下手をしたら死出の旅になったかもしれんのだゾイ。やはり科学者はどこかイカレているゾイ。」


どっちがだよと思っていた俺は、ふとここが中世程度の文明世界だということを思い出して周囲を警戒した。


だが、檸檬は心配いらないといった。


「大丈夫。おじいちゃんが事前に自作の天体望遠鏡で、この周囲にドラゴンや野盗の類はいないことを確認済みよ。」


檸檬が言い終わらないうちに、怪獣映画に出てきそうな鳴き声が荒野中に響き渡った。


前方を見ると広げた羽を合わせると横幅18m程度はありそうな巨大な赤色のドラゴンが現れた。


「いるじゃないのー!!」


俺を含めた三人と一体は、一斉にドラゴンとは反対方向へ向かって走り出した。


「もしかして、確認したときにたまたまいなかっただけで、近くに龍の巣とかあったのかもしれんゾイ!」


「そんなはずはないわ!だって、この周辺はくまなく見たけどドラゴンの巣はないっておじいちゃんが言ってたもの!」


走りながら一人と一体が会話しているうちにドラゴンは、火を噴こうと口を大きく開けた。


「クソ!火炎放射には水で対抗だ!」


やけになった俺は、巨大な水流を手から発射することを思い浮かべながらドラゴンに向けて手をかざした。


ドラゴンが2000度を超える炎と、俺が右手から大量の超高圧水流を発射したのはほぼ同時だった。


そして、俺の水流が一瞬にしてドラゴンの炎に打ち勝ち、そのままドラゴンの口に入ったかと思った次の瞬間、耳をふさぎたくなるような大きな爆発音と重い金属でできているはずのG3OPまで数百メートルまで吹き飛んでしまうほどの突風が吹いた。


しばらくして気が付いた俺は、あまりの衝撃で気絶しているみんなを起こして、衝撃でできた岩の陰からドラゴンがいたところを見た。


そこには、もうドラゴンの姿はなくそれらしき骨の破片や臓物の一部、粉々になったウロコや羽が、大きなくぼみの中にできた水たまりの中に浮いていた。


水は、ドラゴンの血がしみ込んだのか赤黒く変色していた。


「すさまじい威力だったでありんすね。」


「ああ、正直自分の能力がここまですごいとは思わなかったな。」


「高圧水流もそうじゃが、おそらく今のは高温の炎と水が引き起こした水蒸気爆発が原因ゾイ。」


「いずれにせよ、ものすごい大爆発音がしたからここから離れないと、騒ぎを聞きつけた盗賊や怪物にばったり出会ってしまうかもしれないわ。」


檸檬の意見に、俺を含めた皆は賛同してドラゴンから逃げようとした方へ歩くことにした。


ふと後ろを振り返ると、檸檬がドラゴンの血の池でなにかを採取していた。


「何をしているんですか檸檬さん?」


檸檬さんは、後ろを振り返って油性ペンで『さんぷる』とかわいらしく書かれた、小さな透明のプラスチック製の箱を俺たちに見せた。中には、先程倒したドラゴンの爪やウロコ、骨などが血の付いたまま入っていた。


「これも貴重な資源になりうる可能性もあるし、何よりあんなでかいドラゴンなんて、この世界でも一生拝めないと思うから実験材料のために取ったの。あ!そうそう、あとでドラゴンの血もスポイトで採取しなきゃ!臓物も持って帰りたいけど腐っちゃうかなー。ね!富士見さんってたしか異能が使えるんでしょ?臓物を腐らせない魔法みたいなのは使える?」


俺は、キラキラした目をしながら早口でしゃべる檸檬を見て、なるほど確かに平賀博士の孫だなと思った。


ちなみに檸檬さんは、マスクを着けたまま興奮していて怖さがより強調されているので、俺は目をそらしながら受け答えするしかなかった。


「あー・・・とりあえずやってみるよ。」


「やったぁー!!」


「とは言ったものの、本当に鮮度を持たせることができるかなー。」などと思いつつ、俺は、血の池に手をかざして吹雪が手から吹くのを想像した。すると、体が若干冷えるのを感じたと同時に、ゴーッというすさまじい音とともに冷気が手から発射された。


「こりゃすごいゾイ!!」


俺の手から発射された冷気は、見る見るうちに血の池を凍らせてその中に沈んでいた臓物を閉じ込めた。空気中の水分も凍ったのか、池の周りは真っ白な雪のようなものが積もっていた。


だが、すぐに「じゅわー」という音とともに雪のようなものは解けて、凍っていた血の池は見る見るうちに解けていった。


「氷が解けるにしては早すぎるゾイ。」


もしやと思い、俺は思い切って血の池に手を突っ込んでみた。


そして俺は驚愕した。先程凍らせたばかりなのにすでにぬるい。ということは・・・。


「生暖かいということは・・・地熱で温まっているのか?」


「だとするとこれは好機ゾイ。ここで温泉を掘り当てれば、お金を稼ぐことができるゾイ。」


G3OPは、右手の人差し指と親指をくっつけてお金のジェスチャーをした。


「でも、材料はどうするでありんすか?周りは何もないだだっ広い荒野でありんすよ。」


「歩いていけば何かあるんじゃないですか?」


檸檬の言葉に皆は賛同して俺たちは歩き始めた。


檸檬は、今後はいろんな意味で邪魔になると思ったのか、ウイルス検出装置で安全であることを確認したうえで、マスクを外してリュックサックの中に入れた。


しばらく行くと、明らかに地球にはないような真っ青な葉をつけた森が見えてきた。


「なんだあれは?」


「不気味なほど青い森ゾイ。」


「あの・・・みなさん・・・もう、歩いてから一時間もたちますよ・・・。少し休憩しませんか?」


見ると、どうやら俺たちは気づかないうちに歩く速度が檸檬より速くなっていたらしく、置いて行かれないために走ったのか、檸檬は眼鏡が斜めにずれて汗だくになって息を切らしていた。


「そう・・・いえば、富士見さんってあまり運動をしない引きこもりだとおじいちゃんから聞いたのですが・・・。」


俺は一瞬ムッとしたが、確かに言われてみれば五年以上も運動していないにも関わらず、徒歩で一時間以上もかかる距離を歩いていて全くつかれていないことに気が付いた。


「椿さん。俺の能力値ってどうなっている?」


「ええと・・・。」


椿は、スカートのポケットから能力測定眼鏡を取り出して装着し、俺の能力を鑑定した。


すると、椿は驚いた表情をしてこう言った。


「信じらりんせん・・・。檸檬さん、これを彼に見せてあげたいんけれど、どうやればいいのでありんすか?」


「見せたい人物が近くにいる場合は、空中に表示されている画面を右か左、どちらかに向かって横に勢いよくスライドしてみてください。」


 椿は、言われるがまま指をスライドさせると、『しばらく読み込み中』と右から左に文字が書かれた画面が現れ、すぐに次の画面になった。


 そこには、『誰に内容を送信しますか?』と書かれた文字の下に、上から『平賀 檸檬』、『富士見 力』、『G3OP』 と書かれていた。


 椿は、その中から『富士見 力』と書かれたものに触れた。


 すると、富士見のポケットから『プルルルル』という携帯の着信音のようなものが鳴り出した。


 俺は、ポケットから能力測定眼鏡を取り出して装着すると、『御剣 椿さんが送信しました。開封しますか?』と書かれた画面が見えた。俺は、その下に書いてある『はい、いいえ』から『はい』に触れた。


能力測定眼鏡の存在を知らない人から見たら、なかなか滑稽な光景だったかもしれない。


だが、俺はそんなことなど些末に思えるほどの驚愕の事実を目の当たりにした。


なぜなら、俺の能力がとんでもないことになっていたからだ。


次回、富士見力の驚愕の能力値が明らかになる!

次回更新は五月五日です。

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