第参拾玖話:対空戦闘
「対空戦闘用意!!これは演習ではないのです!」
艦内にこの声が響き渡ると、全員が一斉にクローゼットに向かって走り出し、救命胴衣を白のワイシャツの上から着込み、桜と錨のマークの下に大日本帝国海軍と右から左に書かれた白の海軍帽を脱いで、自分たちそれぞれのクローゼットにしまい、灰色の鉄鉢をかぶりその足で自分たちの持ち場へ向かった。
ベルノルトの護衛兼監視を艦長から頼まれた二人の兵士も、目にもとまらぬ速さで部屋から駆け出して戦闘準備を整えて二人同時に戻ってきた。
「スゴイ!我が海軍デモ、コンナニ準備が早い人は居ませんヨ。」
それを聞いて、二人は苦笑いをした。
「これが当たり前なのですよ。」
一方駆逐艦『暁』の艦長は、艦橋で船員たちの指揮を執っていた。
「敵の数と距離はいくつだ?」
「数、およそ40騎。距離約25km!」
「よし!駆逐艦『響』、『雷』、『電』にそれぞれ、ワイバーン40騎に対し四十式艦対空誘導弾をそれぞれ十発ずつ発射せよと伝えるのです!」
「この世界が中世ヨーロッパ並みの技術力だとしたら、いささかやりすぎなのでは?」
「なに、我々が今後この世界で生きていくには、ナメられないためにもここである程度力の差があることを見せつけてやるのです。」
そう言う綾乃の顔は、まさに悪役そのものであった。
「さあ、無駄口をたたいてないでさっさと伝えるのです!」
「りょ、了解!!」
その頃、駆逐艦『雷』に捕虜として捕まっているベルノルトは、護衛兼監視役の二人と談笑していた。
「ベルノルトさん。あんた、偵察役を任されていてよかったな。」
「ああ、私も先程の放送を聞いたとき身震いしましたよ。久しぶりの流れ人だからと言って、私が偵察を任されたときは貧乏くじを引かされたかと思いましたよ。」
「どうやら、貧乏くじを引いたのはお前さんじゃなく、あいつらだったみたいだな。ハハハハハ!!」
「そう言えば、あなたたちの名前をまだ聞いていませんでしたが?」
「おっと、これは失礼!」
そう言って二人は、ベルノルトに向かって敬礼した。
「私は、大日本帝国海軍第六駆逐隊所属の徳島一郎二等水兵であります。」
黒髪ショートの男性が自己紹介を終えると、今度は茶髪のツーブロックの男性が自己紹介をした。
「同じく大日本帝国海軍第六駆逐隊所属の為栗洋平少佐であります。」
「それにしても、ベルノルトさん先程よりも日本語がうまくなっていますけど?」
「それは、あなたたちの話す言語がアシェーラ語と酷似しておりましたので・・・最初は通じるかどうか半信半疑だったものですから。」
「え??じゃあ、この世界に日本に似た国家があるということなのか?」
「ハイ。」
「で、なんという名前だ?その国の名は・・・。」
その時、地響きのような音が艦内に響き渡った。
「な、なんですか?」
「始まったみたいだな。」
・・・・・・・・・・・
一方こちらは、第三飛竜空挺部隊。
「目標発見!蒸気戦闘艦らしき軍船が四隻、それよりもはるかにでかく船体が平べったい正体不明の船が一隻!!」
「計五隻ってところか・・・蒸気戦闘艦にあるはずの煙突がないな。なのに海上に漂うことなく動いている・・・もしや、あれは?」
「なんです?」
「いや、なに・・・ガキの頃に寝物語でたびたび出てくる船の特徴とよく似ているなと思ってな。」
「隊長!!四隻の船が後方から何かを発射しました!!」
「なんだ・・・あれは・・・。」
「こっちに来るぞーーーーー!!!にげ、」
ドォーン!ドォーン!ドォーン!
あっという間になすすべもなく第三飛竜空挺部隊は全滅した。
この戦果は、すぐにベルノルトが乗っている雷の乗組員にも伝えられた。
「戦果!龍四十騎すべて撃墜した。繰り返す!龍四十騎すべて撃墜!!!」
その艦内放送に、ベルノルトは開いた口がふさがらなかった。
「四十騎すべてだと?・・・バカな!あり得ない!!!」
「まあ、この船には敵を追尾する誘導弾がありますからね。」
「・・・・・。」
ベルノルトは、これほど偵察役を任されてよかったと思える瞬間はなかったと思った。
「ベルノルトさん。こっち側につくのであれば正直に話してほしい。」
「あ、ハイ。」
「先程の竜騎兵はあれで全部というわけではないだろう?」
「ええ、私が所属していた竜騎兵を含めて2000騎ほどです。」
「に、2000騎だと!?」
ベルノルトは、さすがにこの数に恐れおののいたかと思いきや、彼らは的確な答えを口にした。
それを聞いた瞬間、ベルノルトは自分たちが所属する第七師団の終焉を確信した。
「馬鹿な!そうなると、空母のような空を飛ぶものを大量に飛ばせる船が必要になるぞ!!」
「だとすると、偵察目標はその船ですね。」
「おい!徳島ァ!!捕虜を見張っていろ!俺は、艦長に報告してくる。」
為栗は、艦長に捕虜の証言に基づいて敵空母らしき船の探索を具申した。




