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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第参拾話:ゴドナベツ国の受難(後編)

砲台守のコンヒーロ姉妹は、突如現れたすさまじいほどの大艦隊に戦慄していた。


 ちなみに、黒い髪の毛をボブカットにした背丈が高いグラマラスボディなのが姉のプランチャで、栗色の長髪を長めのツインテールにしたロリ体型なのが妹のトペである。


 「姉御・・・。これからあたいたちどないなるんやろか?」


 妹の不安げな顔を見て、両親がいない今、姉の自分がしっかりしなくちゃと思ったプランチャは、自分の顔を両手ではたいて気持ちを鼓舞した。


 「あ、あほ!これからを心配する暇があったら村長さんの言う通りに奴らに鉛玉をぶち込めばええ!」


 トペは可愛くうなずくと、茶色の吊りスカートを翻してそばに置いてあった実体弾を姉に渡した。


 姉の方は、藍色を基調とした少し派手めな和服のような着物を、片肌脱ぎで着こなしており、真っ白なサラシからでも強調しまくっている胸を揺らして、妹からもらった実体弾を大砲に装填している。


 「耳、ふさいでな!!」


 トペが言う通りに耳をふさいだ次の瞬間、轟音とともに実体弾がすごい勢いで一際大きな蒸気船に向かって飛んでいった。


 「うまくいったぞ!このままいけば命中や!!」


 だが、プランチャが撃ってくるのを予想していたのかそれともまぐれか、彼女が撃ってから数秒後に蒸気船が前についている艦載砲で撃ち返してきた。


 「・・・え?」


 そして、彼女の目の前で信じられないことが起きた。


 なんと、彼女が撃った実体弾が蒸気船の艦載砲の砲弾にあたって砕け散ってしまったのである。そればかりか、一つだけだと思っていた砲弾が、実は発射された際に煙で見えていなかっただけで、向こうが三発同時に発射していたために、残りの二発がこちらに向かって飛んできたのだ。


 「うせやろ・・・。逃げろ!トペーーー!!!!」


 彼女たちが砲台から離れ、小屋へ逃れようとした次の瞬間、二つの砲弾が砲台の下の崖に着弾した。


 そして、崖は音を立てて崩れ落ちて砲台とプランチャは奈落に落ちていった。


 「キャアアアア!!!」


 「姉御オオオオ!!」


 間一髪で、トペはプランチャの手をつかんだ。ただ、いくらドワーフとは言え自分の二倍くらいの重さはある姉をつかんでいられるのも限界だった。


 「放せトペ!!このままでは、二人とも崖に落ちてしまうで!そうでなくとも、またいつ奴らが撃って来るかもわからへん!!」


 「嫌や!!砲台守だったオトンはサウザンド・リーフ公国との要塞戦で戦死し、オカンもオトンが死んだせいで病気を治す薬が手に入らずに死んで・・・今、姉御を失ったらあたいに何が残るんや!!」


 その言葉でプランチャは、ハッとなって緩めていた手を強く握った。


 「すまん・・・せやったな。」


 そう言うと、プランチャは満身の力を込めて崖を這い上がろうとした。


トペも姉が生きる気力を取り戻してうれしく感じ、姉の腕を力強く引っ張った。


トペは、無事崖から這い上がった姉を抱きしめた。


「姉御・・・もうあたいを一人ぼっちにしないでね。」


プランチャは、妹の頭を優しくなでた。


「ああ、約束するで!!」


その言葉に、トペは姉に向かって満面の笑みを浮かべた。


その直後、再び腹に響くほどの轟音が鳴り響いたため、驚いて彼女たちが船の方を振り向くと、船の艦載砲は彼女たちのいる場所とは違う方向を向いていた。


「あかん!あの方角はたしか・・・。」


プランチャは慌てて小屋に入り、テレビ電話のような物の受話器を取ってどこかにかけた。


「だめや!ディーヴァー砲台につながらへん!!」


彼女の悪い予感は的中していた。あの巨大戦闘艦は正確無比にこのアミスラス砲台とディーヴァー砲台をあっという間に無力化したのだ。


「姉御、大図書館に連絡や!」


プランチャは妹の言葉にうなずいて、今度は大図書館に電話をかけた。


電話に出たのは村長さんだった。


「村長じゃ。」


「ホンマすんまへん村長!!アミスラス砲台が・・・破壊されました!」


電話の向こう側からでも村人たちの動揺の声がはっきりと聞こえてくる。だが、村長が制したのかすぐに静かになった。そして、少し間をおいて村長のしわがれた声が聞こえてきた。


「そうか・・・実はディーヴァー砲台も・・・・。」


「やはりせやったか・・・。」


「姉御・・・これ・・・。」


不意に、トペが小屋で何かを見つけたらしく、プランチャの裾を引っ張った。


「なんやトペ、今は電話ちゅ・・・。」


彼女がふとトペの方を見ると、彼女の指さす先に隠し扉があった。


「どうしたのじゃ?プランチャ。」


「あ、えっとすんまへん!すぐ戻ります。」


そう言って彼女は電話を切って、扉のそばに置いてあった魔石ランプに明かりをつけて隠し扉から地下へと潜った。


石造りのらせん階段が延々と続いており、まるで姉妹を飲み込まんとするようであった。プランチャは、いつ何がでてきても対応できるように眉をひそめて周囲を警戒していた。


「姉御・・・怖い・・・。」


「心配あらへん。あたいがついているから心配せんでもええ・・・。」


「ううん。姉御の顔・・・怖い。」


「ぶっ飛ばしたろか!?」


「ごめんちゃい。」


しばらく進むと、朽ちかけた鉄の扉があった。力自慢のプランチャが、押しても引いてもビクともしないので、恐らく錆び付いているものと思われる。扉の隣には、下の細かな文字はかすれてほとんど読めないがアシェーラ語とドワーフ語で『関係者以外立ち入り禁止!(海上自衛隊)』と立て看板に書かれているのは辛うじてわかる。


「姉御・・・海上自衛隊ってまさかあの・・・。」


「八十年前に突如このオビーチェ村の海域に現れた一隻の船の船乗りたちのことや。」


プランチャは、トペに祖母から小さい頃に聞かされた海上自衛隊という船乗りたちに関する寝物語を教えた。それによると、実はオビーチェ村も百年ほど前までは、海獣リヴァイアサンの被害に長年頭を悩ませていた。そんな時、例の一隻の船が現れた。


最初は、彼らも海獣から逃げ回っていたが、それを見て助けに入った漁師が海獣に食われた途端に、まるで人が変わったかのように海獣に対して、たくさんの神の弓矢を用いて見事海獣を倒したという。


それから、しばらくはここで活動するための資源確保のためにオビーチェ村に世話になったらしい。


「すごい人たちだったんやね。」


「ああ、だが六十年ほど前に忽然と姿を消してしまったんや、今では自衛隊を知っているものはエルフやドライアドを含めて数えるほどしかおらん。」


「その、彼らが残していったもんがこの中に・・・。」


「ああ、このままだとこの国は確実に滅びる。今は、彼らの力を何とかものにするんや!!」


そう言ってプランチャは、ランプをトペに託すと腕力強化魔法を使って扉の破壊をこころみた。


「破砕拳(デストロイアームズ!!)」


グワラガシャンというものすごい音を立てて鉄の扉は、彼女の拳でひしゃげたまま吹き飛んだ。


彼女たちが、恐る恐る入っていくとそこには、一隻のイージス艦が静かに浮いていた。


半世紀以上もの長きにわたって、放置されていたために錆びによる劣化が目立つイージス艦が魔石ランプの光も相まって姉妹の目に妖しく映っていた。


次回更新は五月三十一日です。

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