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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第参話:極秘研究所

前回のあらすじ

富士見は、仕事も金もなくただただ腐っていく日々を過ごしていた。そんなある日、政府のお偉いさんから声を掛けられ、火星総督府の隠し部屋に連れていかれた。そこで声を掛けられ、驚いて声のする方を見ると、そこには白髪のぼさぼさ頭にオレンジ色の日除け眼鏡のようなものをかけた70代くらいの男性が猫背で立っていた。

俺が出くわした男性は、生物を使った実験をしているのか、シミだらけの白衣には赤黒いものも交じっていた。


よほど偉い人なのか、総理大臣を除いた全員が敬礼をした。


「平賀中将閣下。お望み通り、三人目を連れてきました。」


「おお!君が異能を使えるという富士見君かね?」


俺は、あまりの迫力に声が裏返ってしまった。


「ハ、ハイ!富士見ふじみつよしといマス!」


平賀はガハハと笑って俺の肩を叩いた。


「そんなに硬くならなくてもいい!では、富士見君。早速で悪いんだが、先に来てくれた二人と一緒に私の実験に参加してほしい。」


拒否権はないのかと思ったが、逆らう理由もないので承諾した。


「では、平賀君。我々は仕事があるのでこれで失礼するよ。」


「おう!しんちゃんも体に気をつけろよ!」


総理は、フッと笑うと護衛とともに研究所を後にした。


監視カメラがガンを飛ばしてくる白く無機質な廊下をしばらく歩いていくと、取っ手のついていない灰色の自動扉が見えてきた。


その横の画面に平賀が顔を近づけると、機械音声が流れてきた。


『オカエリナサイマセ。ヒラガハカセ。』


それと同時に、扉がスーッと開いた。


中は、廊下とは正反対の雑然とした雰囲気を醸し出しており、何に使ったのかわからない注射器や、モルモットやハムスターなどの小動物を飼うための籠、青や紫、緑といったこれまた訳の分からない液体の入った試験管が試験管立てに置いてあり、いかにも博士の部屋といっても差し支えの無い代物が、武骨で入り組んだパイプに見下ろされるかのように散乱していた。


そして、その部屋の奥の長椅子にブレザー制服の中にピンクのパーカーで黒のニーハイを着用した高校生くらいの女性と、80代くらいの老人を模したロボットが座っていた。


ちなみになぜか、女子高校生はそのかわいらしい恰好に似つかわしくない日本刀を腰に差していた。


そのロボットは、何やら女子高校生にちょっかいを出しては一人でゲラゲラと笑っていた。


平賀博士は、二人・・・いや、厳密に言うと一人と一体のそばまで俺を連れてくると、手をパンと叩いて注目させた。


「さて、全員そろったところで君たちにはある実験に参加してもらいたい!」


すると、パッツン前髪のポニーテールの女子高校生は、携帯をいじりながらなぜか廓言葉で言った。


「平賀はーん。さっきからこなたのジジイがうるさいんでありんす。」


「こら!G3OP!貴様はまた彼女にちょっかい出して・・・。」


G3OPと呼ばれたロボットは、ちょうど顔の位置にある画面に表示されていた笑った顔文字から怒った顔文字に変わった。


「なんゾイ!これからわしらは人体実験されるんだろ?だったら、椿ちゃんがこいつらのものになる前にわしのものにしてやろうと口説いていただけゾイ!!」


「ぬしは、そんなことを思っていたでありんすかえ!?」


あまりに下心丸出しの発言に怒った彼女は、顔を真紅に染め上げて、このエロジジイを刀で切り伏せようとした。


「G3OP!君は何を勘違いしているのかね?今回君たちにやってもらいたいことは、別の場所に転移できる装置の実証実験だ。」


あまりにぶっ飛んだ実験内容に、俺を含めた二人と一体は時が止まったように凍り付いた。


ちなみにG3OPは、椿さんの刀を頭上で真剣白刃取りした状態で凍り付いていた。


先に思考回路が戻った俺は、そんな突拍子もない実験になぜ自分たちが出る必要があるのかを聞いた。


すると、その質問を待っていましたと言わんばかりに俺の目の前で、両手を大きく広げて喜びを表現した。


「よくぞ聞いてくれた富士見君!」


そして、さらに俺に近づくと大げさに右手の人差し指をグイっと上げて説明をした。


「君たちには約190万光年離れた星に転送装置で行ってもらいたいのだよ!そこの星はどうも魔物や怪物が跳梁跋扈していてな、文明水準もほとんどの国が地球の中世暗黒時代と来たもんだ。」


「近いっす。」


そういわれると彼は、こんどは俺を含めた全員に向かって説明しだした。


「つまりだ!そんな化け物が跳梁跋扈する危険な世界で生き抜くにはそれ相応の力が必要だ!だから君たちを選んだのだよ。」


「なぜ、そんな危ない星にわざわざ転送させるんでありんすか?」


「それは、政府のお偉いさんに『転送装置の実験をするのであれば、手つかずの資源が眠っているこの星を被験者に探索させてくれたまえ。』って言われてな。文句があるならば彼らに言うと良いぞ。」


「・・・遠慮しときんす。」


さすがにお国に逆らっては、本当に何をされるのかわからないため、椿さんは不満を引っ込めた。


「では、諸君!あちらの装置に入ってくれたまえ。」


平賀博士が手のひらで示す方を向くとそこには、同じような白衣を着たに椿より二歳ほど上に見える女性が転送装置をいじっていた。


檸檬レモン!調整はおわったかね?」


檸檬と呼ばれて振り向いたその女性は、丸眼鏡に茶色の短髪、耳にはダイヤ型のリングピアスをつけていた。


俺の見たところ、胸はあまり膨らんでおらず背丈の割には控えめといった具合だ。


「ハイ!おじいちゃん!準備はできています。」


「おじいちゃん?」


「彼女は、わしの孫娘でな。容姿も頭脳も抜群なのじゃよ。」


「(。-`ω-)」


「・・・コラG3OP!イケメン顔を表示しても孫娘はやらんぞ。」


「(´・ω・`)」


「さあ!乗った乗った!時間は待っちゃくれんぞ。」


そう言って、平賀博士は二人と一体を強引に押し込んだ。


「そうだ!君たちに渡すものがあった。」


何かを思い出したのか、急に部屋の端にある自分の机に向かって走り出した。


かなり散らかっているせいで、平賀博士が机の上を漁るたびに失敗作であろう機械がガチャンと音を立てて落下していった。


「もう、おじいちゃんったら掃除ぐらいしたら?」


孫娘は、おじいちゃんのだらしなさに腕を組んで呆れるしかなかった。


「あった!これだ。」


そう言って平賀博士が二人と一体に渡したものは、彼がつけているのと同じオレンジ色の日除け眼鏡だった。


「これは何ですか?」


「こいつは能力測定眼鏡といってな、簡単に言えば視界に入った相手の能力を測定できる眼鏡なのだよ。ちなみにそれは、まだ発表していない最新型で従来のそれは、あらかじめ特別な身分登録をしておいた人物にのみ反応して測定するものだが、最新型は脳波を測定して誰に対しても反応する。試しにかけてみろ。」


俺は、恐る恐る眼鏡をかけてみた。すると、視界に入った平賀博士の能力値が彼の横に現れた。


内容はこうだ。(ちなみに縦書きで表示されている。)


名前:平賀 基 (ひらが はじめ)


年齢:75歳


魔力:0/100


体力:100/100


腕力:10/100


脚力:15/100


知力:90/100


職業:大日本帝国火星総督府極秘研究所所長


魔法属性:なし


使用可能魔法:なし


好きな食べ物:回らない寿司


・・・


など、左に行くにしたがってどうでもいい情報がズラーッと並べられているのだが、正直左にずらさずに見たい情報が見られるというのはありがたい。


「どうだ?身分登録していない私の能力がわかりやすく表示されているだろう?」


ふと横を見ると、良からぬことを考えているのか、同じように眼鏡をかけているG3OPは、にやけ顔を表示していた。


「すごいですな。グフフ・・・これを使えば、他人のあんな趣味やこんな趣味なんかも私がちょいと改造すれば丸見えゾイ!」


「残念だが、G3OP・・・そいつは私以外の人物が記憶媒体を書き換えようとすると大爆発を起こすようになっているんだ。」


「Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン」


G3OPは、くだらないことで頭を抱えているそばで椿さんもまた頭を抱えていた。


「どうしたのかね?こいつと一緒にいるのがいやか?」


「それもありんすけど。鉱物資源を持ち帰るのであれば、こちに戻る手段も必要でありんす。」


平賀博士は、その心配はいらないと言ってちょうどトイレから帰ってきた檸檬を呼び寄せて彼女の肩を叩いた。


「この、わたしの優秀な孫である檸檬ちゃんが私の作った設計図を基に、同じものを現地で作るそうだ。」


だが、それは打ち合わせにはなかったらしく、檸檬は俺が見てもわかるぐらい動揺していた。


「ふぇあ?おじいちゃん!そんなのきいてないよ~!!」


檸檬は、とても優秀な孫には見えないほどかわいらしくぴょんぴょん跳ねて抗議した。


「あーわかった!じゃあ檸檬には、お詫びとしてこの防護服を着せてやろう。私達にとって危険な細菌が潜んでいるやもしれんからな。」


平賀博士は、まるで孫がダダをこねる姿を見たかっただけかのように、彼女に色がピンクでかわいらしい三毛猫の顔のワッペンが左上についた毒ガスマスク付の防護服をすぐに与えた。


「わーい!やったぁ!」


富士見「あのー俺たちには・・・。」


博士「ないです。」


富士見「やめたらこの仕事。」


博士「冗談はさておき。心の準備はできたかの?」


少なくとも俺は、もうこの世界に未練はないのでうなずいた。


「ここに来た時からもうできていんす。」


「あっちの世界に行ったらエルフの嬢ちゃんを食いまくってやるゾイ!」


そう言いながら、G3OPは両手をワキワキさせた。


「おじいちゃん!このエロボジジイの介護は任せて!いざという時は電気回路をぶった切ってやりますから。」


「お慈悲~。」


どうやら、俺以外の奴もとっくに準備はできていたようだ。


「よし!お前さんら!日本人の名に恥じぬようせいぜい頑張ってくれたまえ!」


そう言って博士は、三人と一体が乗ったそれぞれの転送装置の電源を入れた。


すると、ヴォーンという徐々に大きくなる機械音とともに、俺の視界は真っ白に染まっていった。



 次回は、いよいよファンタジーな世界が広がる星で大冒険が始まります!!


 次回更新は、5月4日です。

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