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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第弐拾捌話:ゴドナベツ国の受難(前編)

ここから、少々残酷な場面が登場します。あと、そろそろストックがやばい・・・。

ここは、マーマンなどの海の亜人たちが生息するグレートオーシャン。その洋上を進む数十隻の大艦隊があった。そのほとんどは帆船だが、中には黒煙を上げて進む蒸気船の姿もあった。


すべての船の横に口径約十九~四十五センチの大砲が所狭しと並べられており、マストの上にはふちが黄色で羽の生えた白い馬があしらわれた青地の旗がなびいていた。これはクラウドペガサス帝国の旗だ。


 艦橋の窓から隅々まで手入れが行き届いた砲台を眺めながら、帝国最大の蒸気戦闘艦ハイザーキの艦長であるゲーウインツ・アヒム・メテシェはつぶやいた。ちなみにハイザーキはほかの戦闘艦とは違って、前の方にも全長四十五センチ、口径四十五センチの艦砲が三つ仲良く並んでいる。


 「今頃帝都では、ノスタルギー陛下が玉座についている頃だろう。」


 「そうすれば、俺たちは晴れて正規の軍となるわけっすね。」


 妙に艦長になれ慣れしいこの男は、狂乱の二等兵の異名を持つクロノラーズ・アルノルト・フーデマンである。


 艦長の方は、どこか飄々とした雰囲気で目は常に眠そうな顔をしている。だが、艦長とだけあって海軍が着用する紺色の制服はしっかりしており、しわやほこり一つない完璧な状態を保っていて、肩についている階級を示す金色の羽の彫刻や王家や貴族からもらった様々な勲章も、太陽に反射して光り輝いている。


 対してクロノラーズ二等兵は、艦長とは対照的に陸軍が着用する緑色の制服を着崩しており、着用が義務付けられている鉄鉢も禿げるからという訳の分からない理由でつけていない。


 髪もぼさぼさで、あまり手入れがされていないように見える。


 「ああ、そうだな。」


 艦長が、ここまで失礼なふるまいをされているにも関わらず叱らないのは、戦場においての彼を知っているからだ。


 艦長とクロノラーズ二等兵が、まだ見ぬ新大陸に夢をはせていたその時、艦橋の奥の扉が開き、眉毛が濃くガタイの良い軍人が現れた。


 「報告します!」


 「誰だ?」


 ゆっくりと、ドスの利いた声で艦長は振り向いた。


 「し、失礼しました!第一飛竜空挺部隊隊長ローデリヒ・マルセル・クレール一等卒でありますっ!」


 「・・・聞こうか?」


 「ハッ!十二時の方向に大陸を発見!大規模な集落も確認しました。」


 クロノラーズ:「攻撃はあったんですかい?」


 「・・・はあ、まあ、斧を投げられたぐらいで・・・見たところ未確認のドワーフの集落のようでした。」


 クロノラーズ:「情けないっすね。火球の一発や二発ぐらいケチ付けずに打てばいいじゃないっすか?」


 クロノラーズの上司に対する無礼は、今に始まったことではないが、彼の戦果を噂でしか聞いたことがないローデリヒは、腹の虫がおさまらずに彼の胸倉をつかんだ。


 「貴様!上司に対してなんだその物言いは!?だから貴様はいつまでたっても二等兵扱いなのだぞ!!」


 だが、クロノラーズは臆することなくニヤついた。


 「おんやぁ~そんなこと言っていいんすかねぇ?一等卒さん。言っておくけど、ぼくちゃんの戦闘能力はあんたをしのぐぜ?なんならいっそここでやっちゃおうかなー?」


 「その辺にしとかんか!!」


 艦長の鶴の一声で艦内はシンと静まり返った。それを確認した後、艦長はため息をついてクロノラーズにこう言った。


 「クロノラーズ君。この艦内には、私のように君の戦闘能力を直接目で見ているものは極わずかだ。下手に刺激するような発言は慎むように。」


 「へーイ。」


 「ローデリヒ君、ご苦労だった。次からは気を付けたまえ。」


 「ハッ!失礼いたしました。」


 ローデリヒは、帝国式の敬礼をして艦橋を後にした。


 「さて、亜人狩りの開始と行きますか。」


 艦長は、不敵な笑みで水平線を見つめていた。


 一方その頃、ゴドナベツ国の港町オビーチェでは突如現れた翼竜に乗る人種の話題で持ちきりだった。


 町の中心にある井戸では、ドワーフの奥様方が周りを囲んでその話題について談笑していた。


 ドワーフの奥さん①:「聞いた?ホイップの旦那さん。自前の斧で人種の乗った翼竜を追い払ったんだって!!」


 「えー!?嘘ー!?」


 ドワーフの奥様方は口を手に当ててオーバーなリアクションをした。


 ドワーフの奥さん②:「で、その翼竜ってどこからやってきたのよ!?」


 場所は変わりここは、ドワーフの働く男たちが集う酒場。今は昼時なので、ドワーフの男たちでごった返しており、中は酒と汗のにおいが充満していた。


 ドワーフの鍛冶屋:「海だと!?」


 ホイップの旦那さん:「ああ、そうさ。あの人種、翼竜に乗っかったまま奇妙なことを言い出したのさ。」


 ドワーフの鍛冶屋:「で、そいつは何と言っていたんだいジョン?」


 ジョンと呼ばれたホイップの夫は、木のコップに残っていたエールを飲み干してわからないと首を振った。


 「何言っているのかさっぱりわからなくてよ。イラついたんで、お前さんが作ってくれた斧をあいつに向かってぶん投げちまったのさ。」


 それを聞くと、鍛冶屋はものすごい剣幕でジョンに怒鳴りつけた。


 「テメー!俺が、丹精込めて作った鉄の斧を放り投げやがって!!」


 「ああ!?やんのかコラァ!!?こちとらちゃんと、鉄の斧は持って帰ってきたよ!だが、刃が欠けちまったから倍額の金額を払って直させてもらうぜ!!」


 「やってやろうじゃねえか!毎度ありぃ!!」


 このやり取りを見ていた司書のネビュラ・ロック・ボトムは、親友のジョンと鍛冶屋とのやり取りをあきれながら見ていたのだった。


 ズレ落ちた眼鏡を直していると、騒ぎを聞きつけたウエイトレスが近づいてきた。


 彼女の名前は、ウラカン・ラナ・インディベルダ。人種とドワーフのハーフで見た目は、肉付きの良い褐色の日本人女性といったところで露出度の多いメイド服を着ているので、たまに独り者のドワーフにターゲットにされるが、そのたびに回転エビ固めをお見舞いする。


 「またケンカ?ほんと見ていて飽きない人たちですね。」


 「全くだよウラカンさん。だけどジョンさん・・・これはちょっと厄介なことになりましたよ。」


 ジョン・鍛冶屋「あ!?」


 ネビュラは、噂の範囲内ということを付け加えて、彼らにクラウドペガサス帝国で穏健派の次期皇帝がクーデターで即位前に失脚して、クーデターを決行した亜人殲滅を掲げるノスタルギーが皇帝になり、手始めにこの国とサウザンド・リーフ公国を狙っていることを伝えた。


 だが、ジョンと鍛冶屋は臆することなくガハハと笑った。


 鍛冶屋:「そんな連中、俺たちが一ひねりだぜ!!な、ジョン。」


 「ああ、人間ってのはエルフみたいなもやしっ子の集まりだろ?何人集まろうとお前の鍛冶の腕と俺の体力さえあれば怖いものなしだぜ!!」


 ウラカン:「はあ、それはそれは頼もしうございますね。」


「それに、俺ぁウラカンちゃんがご奉仕してくれたらもっと頑張れるんだぜぇー。」


 そう言うと鍛冶屋は、ウラカンの方に向き直って彼女の豊満な胸を堪能しようと手をワキワキさせた。


「あほくさ。」


 そう言って彼女は立ち去ろうとしたが、あきらめきれない鍛冶屋は、去っていく彼女に対して後ろから素早く抱き着いた。


 普段は、さまざまな理由をつけてあしらうが、なぜか抵抗はせずにされるがままだった。当然、彼女に対して下心を持っていた男たちはヤジを飛ばした。


 「おっ!やっとその気になったか?でも、戦いはまだ始まっていねーぜ?」


 「そうね・・・でも、すぐに終わるわっ!!」


 すると、彼女は、自分の両足と彼の両足を絡めて、その場でそのまま前方向にでんぐり返しをした。


 「イデッ!!」


 彼女は、彼に対して上にのしかかるような形で彼の気道を尻でふさいだ。


 「ギブアップ?」


 「ギブギブギブギブ・・・ゲホゲホ!」


 彼女は、それを聞くとすっと立ち上がりしてやったりな顔をした。


 「あたしを抱くのなら、正面からズドーンと来なさい!」


 その直後、ズドーンというすさまじい轟音があたりに響いたかと思うと、店の外で先程よりも大きな炸裂音が鳴り響いた。


 何が起きたのか分からないお客さんたちは、彼女たちがいる奥の貴賓席へと走ってきた。


 「なに!?今の?」


 ジョン:「わからねえ。とりあえず外を見に行こうぜ!!」


 彼らが外に出ると、そこには信じられない光景が広がっていた。


 「なによ・・・これ・・・。」


 それは、目の前にあったはずの二階建ての建物が消し飛ばされ、周りも風圧で一部がえぐれて炎が上がっていた。


 謎の爆発で体の一部が吹っ飛んだ者、飛んできた瓦礫が目に突き刺さりながらも手探りで安全な場所を求めて叫ぶ女性、吹き飛ばされてそのまま即死してしまった者、臓物を引きずりながら助けを乞うもの、致命傷を負って息絶え絶えな我が子を抱きしめて必死に子供の名を呼ぶ母親など、大通りは阿鼻叫喚の地獄と化していた。


 ウラカンは、あまりのショックでその場で吐いてしまった。


 ジョン:「おい、大丈夫か?お前は裏で休んでいろ。フィンタ!ウラカンを頼む!」


 「任されたぜ!!」


 フィンタと呼ばれた鍛冶屋は、青白い顔で悶絶している彼女をおんぶして店の奥へと消えていった。


幸いにも彼女が経営する酒場は、エントランスの窓やドアが一部吹き飛ばされただけで助かった。


「オイあれ!蒸気船じゃねえか?かなりでかいぞ!!」


ネビュラが指さす先には、大きな蒸気船が砲台から煙を上げてこちらに向かってきていた。砲台の近くには戦闘員と思わしき人間がうろうろしていた。間違いなく、彼らがやったのが見て取れる。


「あ・い・つ・らー!!!!」

 

ジョンは、怒りで持っていた斧を木でできた柄がきしむくらい握りしめた。


次回更新は五月二十九日です。

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