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旭日の惑星  作者: 小林ミメト
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第壱話:サウザンド・リーフ公国

 地球からはるか191万9810光年先にある星。

 

 そこには、地球と同じ生命が存在できる環境が整っており、人間のほかにもエルフやドワーフといったおとぎ話に出てくるような生命体が存在する。


 彼らは、それぞれ地球と同じ『国』と呼ばれる共同体の中で日々暮らしている。

 

 その中の一つであるサウザンド・リーフ公国では、ある会議が開かれていた。


 この国は、主にドライアドと呼ばれる森の精霊が国民の80%を占めており、残りはハイエルフといった具合である。


 「今回、君たちを呼んだのはほかでもない。」


 そういって、しわだらけの顔を一層しわだらけにして神妙な面持ちで話すのは、この国の長であるエースト・アン・リーフ公爵である。


 「どうされたのですかな。リーフ公爵閣下?」


 緑色の長いひげをなでながらそう問いかけるのは、リーフ公の右腕であるハイエルフの参謀長ハマイ・ド・ラーンである。

 

 「実はな、あと80年後にこの国がクラウドペガサス王国によって亡びると創造主様がおっしゃったのだよ。」

 

 途端に議会はざわついた。無理もない、慣れ親しんだ故郷がそれを統べるものから80年後とはいえ、突然亡びます宣言されたのだから。


 「80年ですと?確かに我々ならばあっという間でしょうが、彼ら人間どもにとっては80年なぞ永遠に近いはず。それに、そのような長い年月を経て脅威となるのであれば今すぐにそれを叩くまでのこと。」


 ハマイの提案にリーフ公爵は首を振った。

 

 「そんなことをしたら、ほかの種族から叩かれるに決まっておる。それともみんなが納得できる理由を考えておるのか?」


 サウザンド・リーフ公国内では、創造主がそうおっしゃったと言ってそれを証明できるのであれば、どんなことでも許される・・・いや、許さなければいけないのだ。

 

 だが、それは公国内でのルールであって世界共通ではない。


 ましてや、『あなた方の国が危険分子となる可能性がありますと主がおっしゃったので滅ぼします』なんて言って攻め込んだ暁には、サウザンド・リーフ公国という国こそが危険分子とみなされて、滅ぼされてしまうかもしれない。


 「う、うーむ・・・・。」


 ハマイは、攻め込む大義名分があるわけではなかったので、腕を組んだまま黙ってしまった。


 「一つよろしいでしょうか?」


 そういって立ち上がったのは、黄緑色のストレートヘアーが美しいハイエルフ族の女騎士である。

 

 「ドリュアン騎士団団長、ラーナ・シノン君か・・・よい、話してみよ。」


 彼女は姿勢を正して、リーフ公に意見具申した。


 その時に、たわわに実った果実のごとく揺れる二つの巨峰にリーフ公爵と女性議員以外の全員がくぎ付けになった。


 「オーッ」という歓声が響く中、リーフ公は咳払い一つでみんなを正気に戻らせた。


 みんなの視線が自分の胸の方に行っているのを感じて、女性らしく少し顔を赤らめたが、すぐに騎士としての顔に戻した。


 「・・・クラウドペガサス王国が、80年後に攻め入ると創造主様がおっしゃったのですか?もしそうであれば、国をお守りする騎士団団長として死ぬ間際まで抵抗して見せます。」


 そう言ってシノンは、腰にさしてあるミスリルでできた剣の柄を握った。

 

 「そなたの心意気に感謝するが、もうすでに創造主様が手を打ってあると申したのだよ。」


 彼女は、それを聞いて緊張がほぐれたかのように座り込んだ。


 「・・・で、創造主様はなんとおっしゃったのですか?」


 リーフ公は、木製コップに注がれた水をグイっと飲み干すと神妙な面持ちで答えた。


 「それが・・・異星人の力を借りたと申されたのだよ。」


 「い、異星人ですか?」


 シノンは目を丸くした。なにせおとぎ話でしかなかった異星人の存在を創造主自ら接触し、さらにそのお力を借りると申したのだから。


 「さよう、我々の国・・・いや、クラウドペガサス王国よりも格段に技術が進んだ星があって、何でもその中にあるとある国の神官様の脳内に直接話しかけて、その国がこっちに来れるだけの技術を約50年早く得られるようにしたとおっしゃられたのだよ。」


 彼によると、その国では近いうちに、さらにその上をいく大国に戦争を仕掛けられて、このままではその国は負けてしまい。とてもではないが80年でこちら側に来られるだけの技術は得られないという。

 

 なので、その国の傀儡国家にある油田をその国に発見させる。そうすることによって、後は芋づる式に戦力は拡大していき。勝利とまではいかなくとも講和に持っていけるだけの力は得られるだろうと。


 「その国とは・・・どのような国ですか?」


 「みたまえ。」


 そう言ってリーフ公は、そばに置いてあった茶色の革袋の中から水晶玉を取り出してあるものを映した。


 それは、とある都市で歴史的建造物から最新の技術で作られたであろう建物がまるでスライドショーのように次々と映し出された。


 議会は、水晶玉に映し出されたそのあまりに洗礼された都市に思わず目を輝かせた。


 「みろ!馬もないのに自力で馬車が走っておるぞ!」


 「最近、スーヴァラシア皇国で発明された蒸気自動車の類ではないのか?」


 「いや、蒸気タービンとやらが見当たらない上に蒸気自動車の二倍ほど早い!」


 「遠くに見えるのは、黒くてでかい船だな。前と後ろ・・・それに横にも砲台が多数装備されてあるぞ!!」


 「それになんだ!?このひと種の数は・・・尋常ではない・・・。だが、人の見た目や神殿の雰囲気、看板の文字はアシェーラ人のものに似ておるな。実に興味深い・・・アシェーラ人の神殿だから『テンポー』か『シェーリン』といったところかの。」


 「上に張り巡らされているものから、何らかのエネルギーを取り入れて走らせている馬なし馬車もいますね。」


 「左端にある白い建物、クラウドペガサス王国のどんな大きな建物よりもでかい!上にあるものは時計か?」


 ラーナもこの先進的な都市に目を輝かせていた。ふと、彼女は大きな白い建物の上にはためくあるものを見つけた。


 「白地に赤丸・・・公爵閣下、これがこの国の国旗ですか?」


 「さよう、この国こそ80年後に我らを救う救世主となる国じゃよ。」


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。次回から、本格的に物語が動き始めます。


 どうぞお楽しみに!次回更新は5月2日です。

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