大正四年四月
葉室家。
「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます、伊集院さん」
京子お嬢様は相変わらず可愛らしい。
それにしても何度目だろうか。仮想現実の繰り返しは頭が変になりそうだ。
「本日のご予定は、学校を終えられましたらヴァイオリンのお稽古となります」
「分かりました」
俺は一礼してお嬢様の部屋を後にした。
真の終章を目指して、自動は使わずに全ての会話を自分自身で行う。その上で、お嬢様の夢を叶えなければならない。
既に前回、俺は練習に自動を併用してお嬢様の夢を叶えている。後は同じ手順を手動で繰り返すだけだ。
「令人さん、旦那様がお呼びです」
「分かりました、姉さん」
千代子は当然ながら女中頭だ。
「旦那様、ただいま参りました」
「伊集院くん、当家には慣れてくれたかね?」
旦那様、葉室萬蔵はお嬢様の通われる学校の中等部で国語教師をなさっている。代々続く華族ながら、その物腰は柔らかい。
「旦那様のご厚情を頂きまして、恙無く勤めさせて頂いております」
「それは何よりだ。娘や使用人からの評判も良い。このまま勤めてくれたまえ」
「ありがとうございます」
旦那様の身の回りの世話は新しく雇い入れた女中に任せてある。むしろ、半年後には初期設定の使用人は一人もいなくなるけどな。
これは何度も繰り返し葉室家の資産運用を行って来たので、最も効率的な人員配置を探り当てた結果だ。
「旦那様、朝食の支度が整いました」
障子の向こうから千代子が声を掛ける。旦那様を居室から食堂に案内するのも執事の務めだ。
葉室家は純和風の家屋なので、食堂と台所は離れている。その為、旦那様ご一家の食事は箱膳に盛り付けられて食堂に運ばれ、ご飯のみはお櫃を持ち込んでその場でよそう。
食堂にはお嬢様と奥様が既に座っていた。
「おはようございます、奥様」
「おはよう、伊集院さん」
千佳子夫人は平民の出とのことだった。だから京子お嬢様を子爵の令嬢として育てるのに、教育係や執事が必要だというのが旦那様の考えだ。
「本日の朝餉は、鯵を焼きました。それに、豆腐の御味御汁、大根膾です」
「目にも鮮やかだな。では頂こう」
旦那様が箸を持ち、味噌汁に口を付けたらご夫人とお嬢様の食事開始だ。大正時代は家長制度があるので、この辺りの作法は厳しい。葉室家では食事時は話をしない暗黙の了解もある。
静かに食事を済ませたら、旦那様の出勤とお嬢様の登校時間だ。
効率重視で専属の人力車を仕立ててある。車夫と呼ばれる彼は同業者から『韋駄天の一雄』と呼ばれるぐらいに走るのが速い。
「おはようござんす、本日もよろしう願いやす」
「一雄さん、いつもご苦労さん」
使用人が玄関前に並び、二人を見送る。人力車にお嬢様と旦那様が乗ったら韋駄天の一雄の本領発揮だ。
「行ってらっしゃいませ」
「うむ、では行ってくれたまえ」
「へい、行きやす」
韋駄天の一雄は猛烈な勢いで走り始める。あっと言う間に角を曲がって行ったけど、人力車でドリフトって、有り得ない演出だろ。
二人を見送った後、執事室に戻り椅子に腰掛ける。
特別舞台の達成報酬、『執事の眼鏡』は便利過ぎる道具だった。
お嬢様の能力値を確認するだけでなく、お嬢様が置かれている状況まで見えてしまう。ただちょっとした出来心で別の使い方をしようとしたら強制終了されてしまったのは、良い思い出だ。
「お嬢様、学校に着いたかな?」
執事の真眼を発動させると、校門を過ぎてご学友と談笑している姿が見えた。流石、韋駄天の一雄、速い、速過ぎるぜ。
お嬢様が無事に登校されたのを確認したら、次は屋敷の中の見回りだ。
声の想定
伊集院 令人 小林祐介さん
伊集院 千代子 今井麻美さん
葉室 万蔵 寺島拓篤さん
葉室 千佳子 坂本真綾さん
葉室 京子 生天目仁美さん
韋駄天の一雄
九月二十日 B型
身長132.7cm 体重32.5kg
B55.2cm W30.4cm H50.2cm
将来の夢 ???
好きな食べ物 オムライス
筋 力 8 空手 無
体 力 8 柔道 無
知 力 10 音楽 一
敏捷性 7 舞踊 無
気 品 15 茶道 無
色 気 7 華道 無
モラル 20 作法 一
信頼度 5
攻撃力 8
防御力 7
芸術性 13
礼 法 16
疲労 0
知力+8
体力+4
気品
色気
疲労 習い事一時間+
休息二時間-(連続で効果上昇)
学校 午前中+4 午後+2
習事 +8
就寝 -11
日程
学校 知力++ 体力+(一週間)
音楽 気品
作法 モラル
習い事 疲労++
自習10
執事10
メイド10
家庭教師10 知力++
日舞10 敏捷性+
空手10 筋力++
剣道14 敏捷性+ 体力+
薙刀 敏捷性+ 気品+
柔道10 体力++
合気道14 体力+ 色気+
茶道14 敏捷性+ 気品+
華道12 気品++
音楽10 気品+ 色気+
行儀作法10 モラル++