序章「剣士と少女」
なんか書くこと描くことも、何もかもが怖くなって活動を休止してから早一年半。ようやく精神的に立ち直り、こうして新作として前作のリメイク版を作る決意を持つことが出来ました。
未熟者ではありますが、暖かい目で見守ってください。
戦乱の世が終わりを迎えてから数十年後、泰平の世となった日本においてある噂が流れていた。
――黒い刀を腰に差した浪人風の剣士が、雪のように美しい白髪を持つ少女を連れていると。
――なんでもその少女はその神秘的な見た目以上に不思議な力を持っているらしく、ある時は風を起こし、またある時は手のひらから水が溢れるなど摩訶不思議な力を有しているそうな。
その噂はたちまち日本中に広まり、その少女を狙って欲に目が眩んだ者達が次から次へと少女に襲いかかるが、常に一緒に居る剣士が少女を守っていて誰も少女に触れることすら叶わない。
その噂が更に広がり、なんとしても少女を手に入れようとやる気を滾らせる者達が後を絶たないそうな。
そんな剣士に挑み、少女を手に入れようとする者がここにまた一人。
「ま、参った! だから、こ、殺さないでくれ!」
また一人、その剣士に敗れ、尻餅をつき命乞いをしていた。
そんな姿を見ても例の剣士は何の迷いもなく剣を振り上げた。
「うるせぇ、こいつを奪いに来た以上、死ぬ覚悟ぐらいはしてた筈だ。なら別にここで死んでも構わないだろ」
とても冷淡な口調、冷徹な眼差し、とても人を人とは見ていないような冷酷な剣士が、命乞いをする者に止めをさそうとしていた。
「死ね」
「ひぃ!」
無情にも、その刃が振り下ろされようとしたその時だった。
「ぐぇ!?」
剣士は突然、くの字になる程に背中を反らしながら勢いよく地面へと倒れ込んだ。
「な、えぇ?」
止めを刺されそうになっていた者はその光景に驚きながら、剣士の後ろに居た例の少女に目線を送る。
蹴ったのだ。
少女が背後から自分を守っていた剣士を蹴り飛ばしたのだ。
「……『烏乃助』。私の目の前で人を殺さないでっていつも言ってるじゃない。いつになったら覚えるの? 烏乃助の頭はやっぱり鳥頭なの?」
自分を守っていてくれていた剣士に対して強烈な蹴りを一発からの罵倒混じりの説教。
「あぁ!? 急になにしやがんだこのガキ! こっちは好きでもないのにテメェのお守りをやってんのになんだその態度! つーか背骨ずれたらどうすんだ!」
烏乃助と呼ばれた剣士は立ち上がりながら少女に鬼のような形相を向けながら怒りを顕にしていた。
そんな烏乃助の怒りを前にして少女は全く動じていなかった。
「ふんだ、あの程度の蹴りすら避けられない烏乃助が悪いじゃん。やっぱり烏乃助は激弱剣士だったんだね」
「んだとコラァ!」
唐突に二人の言い争いが始まった。それを見ていた者は今が好機と見て一目散に逃げていったのである。
「あ!? 野郎逃げやがった、すぐに追い掛けてぶっ殺してや……げぇっ!?」
「だから殺すな」
今度は脇腹に膝蹴り、これは痛い。
「……っ、なんでだよ。また噂が広まってお前が狙われる可能性が高くなっちまうだろうが、俺は嫌だぞ、お前みたいなババアみたいなガキを守りながら旅するのはな!」
「こっちだって、本当は烏乃助みたいな外道で悪党な人とは旅なんてしたくないよ!」
また言い争い、このどうにも相性が悪いこの二人が出会ったのは数ヶ月前の『出雲』の地。
そこから全てが始まったのであった。
※前作からの変更点
・前書き、後書きを書きません。
・おまけを作りません。
・精神が持つ限り書き続けます。