異世界転生して目が覚めたら、魔王になっていました
なろうラジオ大賞に応募するつもりで書いた、初めての異世界転生モノです。
ゆっくり瞼を上げると、視界に広がった場所。そこは城だった。なんだこの禍々しい城は。なんでここにいるんだ? 確か俺は死んだはずだ。親友だと思っていた男にナイフで胸を刺されて……。
ん? ということは――――。
「これが俗に言う異世界転生というやつか! ヒャッホウ!」
思いの丈叫んだ時、飛び跳ねながらスライムがやってきた。
「魔王様ー! お目覚めになられたのですね!」
「俺が魔王だと!?」
思わず声を荒げてしまい、スライムが怯えた表情で「ひぃっ」と大きく飛び跳ねた。
「そ、そうです! 先代の魔王様があっさり勇者に倒されてしまい、我々は困り果てておりました。しかし、つい先日、魔術師から『近いうちに異世界から現れし者が魔王となる』というお告げをいたしまして……」
「それで俺が呼ばれた、そういうことか?」
「は、はい! そういうことでございます、魔王様!」
なるほど……第二の人生が魔王か。勇者に倒されるフラグがたっているが、魔王として生きるのも悪くない。
「で、俺はどんな能力が使えるんだ?」
「確か、モンスターを生み出したり、召喚したりできるかと……」
スライムの言葉に、俺は感動して「おおぉぉ、それはスゲェ」とつぶやいた。
「ってことはモンスターなら強いモンスターも召喚できるのか!?」
「はい、魔王様のお力なら可能でございます」
「……よし、早速やろう! 勇者に倒されたら意味ないしな!」
「かしこまりました! 早速準備に取り掛かります!」
数分後……。
「魔王様、召喚魔術の準備が整いました!」
「ご苦労。早速やるぞ」
俺は魔法陣を描いていく。くふふ……どんな強いモンスターが出てくるかな〜。
描き終わると、スライムから教わった呪文を唱える。
「いでよ! 我に力を分け与えよ!」
魔法陣が輝きだし、風を起こす。そこで突然スライムが叫んだ。
「ま、魔王様! 魔法陣の描き方が間違っております!」
「な、なに! 魔法陣が違うのか!?」
「はい、その魔法陣は――――」
スライムが言い終わる前に、一人の男が現れた。
「ここはっ、魔王城!? なぜ呼ばれたかは知らないが、俺はクリージ! 魔王、覚悟しろ!」
「しまっ、た…………」
俺の、異世界生活が……。
俺は聖剣の一撃を喰らい、異世界生活は僅か五分で幕を下ろした。
ちょっとマヌケな魔王をイメージして書いてみました。
千字以上でショートショートを書くことはありますが、千字以内という少ない文字数で物語を作るのはあまり書かないので良い経験になりました。書いていてとても楽しかったです。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。