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第四話 ウォーカー新人大会-1



 マリアとの一件から一月あまりが経った、九月某日。街は無数の花火の音で、早朝からお祭り騒ぎだった。


 今日は《白薔薇》が主催する、ウォーカー新人大会の本戦当日だ。参加資格を有するのは、《白薔薇》に所属する現役ウォーカーの中で歴が丸一年未満の新人たち、総勢七十余名。


 俺やハルのように学園上がりの者もいれば、カンナのように独力で腕を磨き採用試験に合格した者、同盟国のギルドから移籍した者など、経歴は様々。


 参加表明をしたのが内69名で、前日までに予選を終え、今日の本戦に参加できる8名が既に決定している。俺、ハル、マリア、それからユーシスも、順当に勝ち残り出場権を手にした。


 予選は期間内に依頼達成によって獲得した経験値の総量を競うものだったが、本戦は実際に闘技場で剣を交える決闘デュエル形式。それも互いに真剣を用いるから、木剣同士の打ち合いだった学園のランク戦とは緊張感が違う。


「ハル、よく眠れたか?」


 明朝、既に起きて朝食を作っていた相棒にかけた第一声に対して、ハルは微笑とともに「うん」とだけ返した。初めてのランク戦の朝とは、流石に面構えが違う。


「どっちがマリアと当たっても、文句なしだぞ」


「わかってるよ」と苦笑しながら、ダイニングテーブルに二人ぶんのコーヒーカップを並べるハル。今朝のメニューは卵と火猪レッドボアのベーコンのサンドイッチだ。席についた俺の前に、湯気を立てるブラックコーヒーが注がれる。


「こんなこと言っといて、初戦で僕らが当たったら笑えないね」


「それはそれでいいけどな」


 いただきます、と手を合わせて一口コーヒーをすすった俺は、ふと相方が沈黙しているのに気づいて目線をカップから正面に戻した。向かいに座るハルは、端整な青い目を丸くして俺を見つめている。


「あ、そうだよね。シオンは優勝するんだもん、戦う順番なんて関係ないか」


「なに言ってんだ? お前が勝つかもしれないだろ」


 ハルは滅相もないとばかりに目を見開き、ぶんぶん両手を振った。


「ないない、無理だよ。万が一、いや億が一だってあり得ない」


「勝負に絶対はねえよ。もちろん負けるつもりはないけど、俺は勝ちの見えてる相手と戦いたいなんて思わない」


 天性の目を持っていながら、自分の実力だけ見えないとはおかしなヤツだ。


「俺は、お前とも戦いたい」


 食事を中断し、真っ直ぐハルの目を見て告げると、ハルは寝ぼけたような顔になった。俺が鼻を鳴らして再びサンドイッチにかぶりつき、モグモグ咀嚼そしゃくする間にも、ハルは小鼻を膨らませ、ほんのり赤らめた頬をぽりぽりかいた。


「でもお前に勝つ気がないんじゃ、興醒めだな」


 ハルは慌てて身を乗り出したが、よっぽどその言葉を口にするのが恐れ多いとばかりに、長いこと葛藤していた。やがて。


「ま……負けないよ」


「そこは勝つって言えよ」


「これが僕の精いっぱいだよ。今まで考えもしなかったんだから。シオン、僕相手に本気だしたことすらないだろ」


 それはお互い様だ。ハルが最も強くなるのは、相手に殺意を向けたとき。俺たちは訓練で剣を交えることこそあるが、互いの本気は一度も見せていない。


「まぁ、いいや。もし俺とやり合うってなったら、殺す気でかかってこいよ。手なんか抜きやがったら絶交だ」


「う……わかった」


「よし。ごちそうさま、お前もさっさと食え。早くしねーとカンナたちが来ちゃうだろ」


 手を合わせて食器を重ね、流し場に持っていく。洗い物を済ませる間も、ハルはずっと上の空だった。

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いつも応援いただきありがとうございます。更新を待つ間、こちらの新作はいかがでしょうか? 無能力者の主人公が物理とメンタルチートで頑張る異能学園バトルものです。 新作は↓ 塔の上のアンダーテイカー こちらから読めます。執筆の励みにもなりますので、ぜひ高評価お願いします!
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