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第15話-3

 ハルと二人でいた段階では、俺たちはこの密林に潜伏し、救助を待とうとしていた。だが救助に来てくれたユーシスは肝心の帰り道を知らない。夫婦石のペアが揃ってしまったから、俺たちの居場所を知らせる術もなくなった。


 ユーシスまで帰らないとなれば、もっと大規模な救助隊が編成されるかもしれないが、彼らは、俺たちがこの密林にいることすら思い至らない可能性がある。今後ここに留まり続けても、助けが来るのは一体いつになることだろうか。それまで俺たちが三人とも、元気に生きていられる保証は全くない。


 つまり、俺たちにはもう、ここから自力で脱出するという選択肢しか残されていない。


「お前の煉術で、パパッと瞬間移動とかできないのかよ」


「馬鹿か……煉術をなんだと思っている。世界中のどこかには、そんな超次元の煉術を使える人間がいないとも限らんが」


「じゃあ、ユーシスは煉術で何ができるんだよ」


「お前が知っているもので、ほとんど全てだ。造形煉術といって、煉素を何か実体のある存在に変換し、それを使って粘土細工みたいに色々なものを形づくる。どんな材質に変換するかは術者の技量や好みで左右されるが、一般的なのは土や石だな。あまり複雑なものになると割り増しで消耗するし、逆に造形の幅が狭まる」


「ユーシスは炎か。それで生き物も造れるんだろ? すげえよなぁ」


「といっても、命や意思まで創造できるわけじゃない。一挙手一投足、全て俺が命令している。かなり消耗するから連発は避けたい。造形煉術は、必要でなければシンプルな造形ほどコスパがいい。手のひらにかき集めた煉素の全てを、単純に一気に爆熱に変換すれば、それ自体が十分強力な攻撃になる」


 俺には正直、想像もできない世界の話だ。ランク戦でユーシスは三体の猟犬を一度に生み出し、同時に動かしていたが、あれはとんでもない高等技術だったに違いない。


「手のひらからの爆撃は、ランク戦でも最後に食らったな。意識ぶっ飛びかけたぞ」


「あれは確かにシンプルで強いが、短所は射程が短いことだ。それを解消するためにこの銃を開発部に依頼した」


 言って、ユーシスは腰のホルダーに差した赤色の拳銃を示した。


「煉術を行使するために煉素と行うコミュニケーションを"命令"と呼ぶが、この拳銃には既に、単純な命令を言霊に乗せて封入している。さしずめ"煉術を覚えた武器"だ。この銃は引き金に手をかけた瞬間に周囲の煉素が集まって炎の弾丸が造形され、引き金を引くと発射されるように命令式が組んである。予備動作に無駄がなくなり、消耗も減り、素手では不可能な射程が実現できる」


「良いことずくめじゃん。煉器ってやつか? 火撃ち石みたいな」


「……まぁそうだ」


 便利アイテムの火撃ち石と一緒にされたのは癪だったようだが、原理は同じはずだ。


「ということは、俺でも撃てる?」


「一発だけならな。俺は撃つたび周辺の煉素を銃身に集めて即チャージできるが、地球人のお前は煉器が少しずつ煉素を蓄えるのを待つしかない」


「なるほど、それも火撃ち石と同じだな」


 ユーシスが不愉快そうに鼻を鳴らしたので、俺は慌てて付け加えた。


「いや、それにしてもカッコよかったなぁ、銃から火球を連発するユーシスは。俺も、ド派手な煉術を使ってみてぇなぁ」


「……お前は、お前の煉器をつくればいいだろう。ここから脱出したら、剣型のをな」


 ユーシスに素っ気なく言われて、俺は思わず破顔した。その発想はなかったからだ。


「おぉ、そうだな! 俄然がぜん前向きになってきた。その時はユーシス、お前も付き合ってくれよ」


「なぜ俺が……まぁ、職人の紹介くらいは、してやらんこともない」

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