世界と出会うもの 2
『こちら北中学校正門前です。大山公園、北中学校と続いた怪奇な事件ですが、警察も……』
レポーターは北中学校の前でその事件について、警察が調べていると告げるとスタジオに戻り、事件について色々な人がなにやら話していた。
「ねぇ、ここって俺が行く学校みたいだけど…。」
少年はキッチンにいる彼の母に向かっていった。
リビングとダイニングそしてキッチンと一体となっているその空間はカウンターで繋がっており声はしっかりと届いた。
「そうね。災難だわ。休講になったんだから勇気もさっさと部屋片付けちゃいなさいよ。」
「もう終っているよ。片付かないのは姉ちゃんの方…。」
「あら、そうなの?望ったら…少しは女の子らしくならないかしら…。」
勇気と呼ばれた少年の母、沙弥は食器を出しながらため息をついた。
勇気もため息を付くと部屋を出て二階に上がった。
家の至る所にダンボールが置かれていて、ところどころ引っかかる。
彼の名前は水野勇気。
新しく北中学校に転校してきた生徒。
転校初日にいきなりなんかの事件で学校から数日休講になると連絡が入り、気落ちしていた。
―ガサガサガサ!!
勇気が二階に上がり、ダンボールの山を避けて自分の部屋になったそこへ向かおうとしたときその奥の部屋からすごい物音がしてダンボールを避けて誰かが顔を出した。
「ちょ!勇気、お願い電池買ってきて!」
勇気に声をかけてきたのは姉の水野望だった。
髪はぼさぼさでショート、眼鏡を掛けていて細身の少女だ。
服装はいつもボロボロのTシャツに短パンで女らしさにかけていた。
もう大学2年だと言うのにお洒落の一つもしないで部屋で自分の趣味に没頭していた。
「やだよ。自分で買いに行けばいいじゃん。」
勇気は自分の部屋のドアをあけようとしたまま望に向かっていった。
「おねがい!お駄賃弾むから!」
「う…。」
望はそのダンボールの隙間からヒラヒラと千円札を見せ付けてニヤニヤしてる。
その千円札で電池を買えば残りは勇気がもらっていいということだ。
勇気はその金に釣られる様に受け取った。
「マンガンはやめてね。二個入り以上で単一!」
望はそう言うとダンボールの山に消えていった。
「了解…。」
勇気はたったの千円に惹かれた自分を呪った。
勇気は家を出ると玄関の内側にちょこんと置いてあった自転車で走り出した。
望は勇気に電池を買いに行かせてダンボールをある程度並べて動きやすいようにした。
部屋でひたすら片付けやらなにやらしていたせいか昼も食べていないことに気が付いて1階へ降りるとテレビが付けっぱなしになっていた。
テレビではドラマの再放送をしていたが、望は見たことのないドラマだった。
望はその画面をチラッと見てダイニングの方に行き奥においてあったビニール袋を漁った。
昨日母が買い込んでいたお菓子やらカップラーメンやらだった。
父や望がいつも気が向いたときに食事をするせいか、常にインスタント食品が家にある。
望はトンコツスープのノンフライ麺のちょっと高そうなのを出すとキッチンに行きお湯を沸かし始めた。
望はパッケージを開けながらダイニングのテーブルの上にその用意を始めた時のことだった。
ドラマの中の男女が喧嘩をしているシーンがガタガタと変な音を鳴らした。
ずっとぶれてはいるがカメラに写っていたのは女の人だった。
そしてそのぶれがなくなると女の人が少し息を切らしながらマイクを持って何かを言っていた。
『今、情報が入ってきました!ここは聖明病院前です。どうやらこの中で何かが起こっているようです。』
『山西さん!その病院は北中学校の事件に関係していると見られている人物が入院していましたよね?何か関連性はあるんでしょうか?』
望はその画面を見てどうやら緊急ニュースに切り替わっていたらしいと気が付いた。
『あ、はい。今の段階では関係性についてはわかりません。我々は先ほど北中学からこちらに来たのですが、しばらく取材をしていたら、中から悲鳴が聞こえました!…あ!…今人が何人か外に出てきました。』
カメラは女性レポーターからサッと病院の入り口の方に写るとその出てきた人物を映した。
―ピー……
しかし、その途端に画面は夜中のテレビみたいにカラフルなテスト放送の画面になりすぐにスタジオの女性キャスターに切り替わった。
『あ…先ほどは不適切な画像が流れたことをお詫びいたします。…えっと……大丈夫ですか?…はい。
現場の山西さん!そちらの様子はどうでしょうか?』
女性キャスターが現場に言葉を掛けるとまた画面は病院前に戻ったが、今度の画面は女性レポーターと報道陣がいるのしか映していない。
何故か報道陣達はザワザワと騒いでおり、カメラを撮る人以外は走っていたり、何かを真剣に話したりしている。
その誰もが皆チラチラとそちらを見ている。
『え…と……あ…はい。…先ほどは失礼いたしました。えっと、今さっき人が数人病院の玄関から出てきたのですが、彼らは報道陣が近寄るとしきりに殺されると呟いており……え?…また誰か出てきた?』
女性レポーターは周りの様子を感じ取りその玄関の方を見て、カメラも同じようにそちらに向いた。
しかし、カメラには報道陣の群れが映し出されてその様子がはっきりと見えない。
『…駄目!あの子だ!…』
音声は女性レポーターの声を幽かに、そして同時に人の動揺する声とパトカーのサイレンの音を捉えていた。
その時だった。
『きゃぁぁぁ!!』
その音の中で突然女の人の叫びが聞こえたと思うと画面がガタガタと揺れて人やら地面やらを写していた。どうやら誰かがカメラマンにぶつかったりしていて、画面が乱れているようだった。
しかし、それは一瞬ではなくしばらく続いた。
音声は人々の叫び声や走る音を捉えていた。
―ゴゴン!
そして最終的にカメラは大きな衝撃音がして止まった。
そこに映されていたのは右側に地面らしき平面と病院の外の門が写っていた。
どうやらカメラは人の手を離れて放り出されているようだった。
カメラマンはどうしたのだろうか。
しばらく沈黙が続いた。
その時だった。門の影からスッと何かが現れた。
それは足だった。
サンダルを履いている。
少女だろうと思われる白い細い足だった。
彼女はどうやらスカートをはいているらしい。
それは白いスカートだ。
全体的に白いその影とは対照的に、その足には何か黒っぽい赤の液体が付いているのがわかる。
そしてその少女は画面の下から上に消えていった。
それからすぐに画面はスタジオに戻って女性キャスターの青白い顔が映し出された。
『…あ……失礼いたしました。…えっと…。』
女性キャスターは動揺を隠せずあたりのスタッフをチラチラと見ているようであった。
―シュー…
望の後方からその音が響いていた。
望はそれに集中していたせいかやかんの水が沸いていてずっと前からなっていたのに気が付かなくて、キッチンの湿度やら温度まで変っていた。
望はハッとしてカップラーメンにお湯をそそいだ。
そしてそれをダイニングテーブルに置いてそれを見ながらポツリと呟いた。
「ここ近いし…勇気大丈夫かな…」




