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夜に駆ける闇

 終着駅で降りた夕姫はボーっとホームのベンチに座っていたがそれを駅員に注意され一旦出るとふらふらとその町の駅近くを歩いた。

どこかに落ち着いてしまうと寝てしまうと思ったからだ。

夕姫にとって今は寝ることは恐ろしくて仕方がなかった。

夕姫は一旦戻るといつ始発が出るのか確認した。

その時刻表には6時3分との文字が記されており、思ったよりも遅いとため息を着いた。

そして夕姫の脳裏にある考えが浮かんだ。

あのおかしな能力は夕姫の畏怖すべきものだが、使ってしまえばいいと…。

夕姫は半分やけになって、電車の線路にそって行けるとこまで行ってみようと思った。


 夕姫は未だに空腹をおさえられないでいたのでビニール袋の中から一つ林檎を取り出した。

それをそのまま食べ夕姫は腹が満たされたためすぐに能力で飛び立った。


―ブワァ!!!

それは思ったよりもすごい風で跳び上がるときと着地する時に建物や木々を激しく揺らした。

しかもかなりのエネルギーを使う。

跳び上がる時はいいのだが、着地する時の方が大変だった。

それでも何度かそれを繰り返し、一駅向こうまで一時間弱でついた。

夕姫はそれまで使ったことのないほどのエネルギー消費にその駅前でヘナヘナと地面に座り込んでしまった。

息も荒く立ち上がれなそうだ。

時刻は二時ちょっと前だった。


それからしばらくそこでジッと座っていると身体は回復してきた。

飛ぶ前に食べた林檎が効いている様な気がした。

それは四時頃だったが再び夕姫は立ち上がり、その駅を後に飛び立った。


 今度は慣れて余裕が出てきたのか街を見下ろして眺めを見ることが出来た。

美しすぎる。

闇に輝く人々の作り出した光は思っていたよりもすばらしい物だった。

その光を目掛けて降り立ち、天に輝く星に目掛けて飛び立った。


みたことのない世界がそこにはあった。


まだいっぱいあるのだという期待とそれで十分だという気持ちが入り混じって矛盾は打ち消された。



 夕姫はまた次の駅の近くに降り立つと飛ぶのをやめた。

どうにもこうにも、飛ぶのは非常にエネルギーがいる。

もう夕姫の身体は限界だった。


しかし、その駅に着くと前の前の駅とは違い30分ほど早く電車が出るので、そこで乗ることにした。


それまでの間夕姫は寝ないようにしながらも身体を十分にやすませた。





「もうすぐ菊山だが…。」

柴田はそういうと時間の経過と共に伸びた顎鬚を右手で触りながら左手だけでハンドルを握っていた。

途中で道に迷ったり、コンビニで地図を買ったりと大変な道のりだった。

しかし、やっと菊山に着こうとしていた。時間は朝の5時前。

空がもうかなり明るい。

「変ですね…。もう10キロ圏内ですし…。まだ始発出てないですよね…このあたりの圏外にいるのかな…。」

勇気は眠い目をこすりながら持っていたモニターを見た。

そこにはまだ“LOST”という文字が出ている。

「とにかく1号沿いに進んでみるか…。」

柴田はそういうとさらにアクセルを踏んで車は加速した。

警察とは思えない荒い運転だ。

その間梨奈は疲れた表情で地図を持ったまま外を見ていた。

吉原は完全に夢の中だ。

 ―ジジ…

その時だった。

突然モニターが動き出し何か電子音的な音がした。

「あぁ!」

「どうした!」

勇気が思わず叫んだ。

それに呼応して柴田も叫んだ。

「モニターに出てます。10キロです。大体進行方向です!」

「何!?わかった!!」

柴田はそういうとパトカーのサイレンを鳴らした。

「え!!?」

勇気は突然の騒音に身構え、梨奈も少し驚きの表情を見せた。

―ブォン!!

パトカーは低くうねると急速に速度を上げた。

その速度に勇気も梨奈も恐ろしくなって座席にしがみついた。

吉原は相変らず変ないびきをあげていた。

「一気に追い上げるぞ…。」

柴田は顔を紅潮させて気合が入っていたが、その様子に後部座席の二人は顔を真っ青にした。

 モニターの数字はどんどん小さくなっていく。

梨奈はその運転にやっと慣れてきて外をまた見るようになった。

今度は前方や後方にまで視線をやっている。

「ねぇ、もしかして、今島川駅にいるんじゃない?」

そう言ったのは梨奈だった。

梨奈は転校をよくしていたし、地理が得意だったから地名や駅名などには詳しかった。

「え?島川?」

「そう…菊山から二駅先の…。菊山の次は金田でその次が島川…。さっき金田を通り過ぎたの。もしかしたら終電でおりてから歩くかあの能力を使うかで移動して島川からまた電車に乗るのかも…。」

梨奈はその推理を自信ありげに話した。

「なんでそう?」

柴田は見事に車を走らせながら梨奈に質問する余裕もあるようだ。

「なんとなく…。」

梨奈のその声の音量は少し下がったが、まったく自信がないようにも感じられなかった。

勇気も柴田も無言のままだったが、梨奈を信じないわけではなかった。

二人もそんな気がしたからだ。

「あと、1キロです!」

そのモニターの数字が減っていきあと少しというところまで来た。

「やっぱり、島川駅だ!!」

そう柴田が言った。

それに反応してその方向を梨奈は見た。

柴田は急いで駅沿いの道路脇に車を止めた。

「吉原起きろ!!」

柴田は吉原のおでこを思いっきりひっぱたくとすぐにシートベルトをはずし車から降りた。

「うう…あれ?」

吉原はおでこを痛そうに押さえると寝ぼけたままきょろきょろして、車のドアを開けて中を覗いている柴田を見た。

「寝ぼけてやがる…いい!吉原、お前はここで待ってろ!」

柴田はそう言うとすでに降りて駅に駆け出した梨奈と勇気の後を追った。

「えっと…」

一人残された吉原はおでこを抑えながら不思議そうな顔で走り去る3人の背中を見ていた。


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