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ドライブ

「で…どうするんですか?」

吉原はパトカーの運転席で車を走らせながらぼそっと言った。

柴田が応援に来たパトカーをぶん取って、夕姫の飛んでいった方向へ急いだ。

もちろんそこには勇気も梨奈も乗っていた。

勇気は発信機を付けていたことを説明し、それを追う様に説明した。

もちろん柴田も吉原も驚いた顔をしていたが、すぐにそれを認知し、勇気の指示に従った。

勇気は望に貰ったモニターを付けると矢印と数字だけが表示される奇妙な画面を見た。

何となく理解はしたが、センスのない望が作っただけある。

緑の背景に赤い文字で目がチカチカする。

そのクリスマスカラーのモニターはその四角い両端の端に二つずつのアンテナが出るらしくそれを広げるとモニターが変化を始めた。

どうやら発信機の信号を感知したらしい。

数字が100単位で減っていく。

方向は南で距離にすると2・3キロ。

車で移動するたびにその距離は減っていった。


勇気が試しにモニターを北側に向けるとそれに習うように矢印が南を向いている。

当てにはなりそうだ。

そのまま、4人はその矢印の方向に向かっていったがふいに吉原は言った。


「彼女捕まえても、結局あんな能力持ってたんじゃ…。殺されるか逃げられるかどっちかじゃないですか?」


それを聞いた助手席の柴田はジッと頬杖をついて前を向いていた姿勢のまままま吉原をみた。

その眉間に皺を寄せて吉原を睨むとまた前を見据えた。

モニターを見ていた勇気と梨奈は二人で互いに見合わせてすぐに前を見た。

「もしかしたら、私がいれば、あれは出てこないかもしれません。それなら解決方法はあると思います。」

梨奈は何か自信を持っているように言った。

「解決方法…か…だが、それも確証はないんじゃないか?」

柴田は重い口を開いてそのしゃがれた声で言った。

「そうですね。…でも、夕姫を救えるのは私だけだから…きっと…。」

梨奈はその透き通った瞳で柴田の座っている助手席の方を見た。

柴田はその様子をバックミラーで見た。

その目を見て一瞬鳥肌が立った。

「そうか…。」

柴田はそう言うと黙ったまま前を見ていた。

梨奈は柴田のその様子に少し視線を落とし、シートに背中を預けた。

しばらく静寂が4人を包んだ。


「ん?」

その素っ頓狂な声は勇気から発せられた。

勇気はずっとモニターを見ていて目頭を押さえたすぐ後にまた声をあげた。

「あれ?!移動している?早いなぁ…。」

モニターの矢印が南側から東側へ向いていき、数値はどんどん増えていく。

さっきまで表示は300メートルほどになっていたのに、気が着いた時には1キロに達していた。

そして一回その進行が収まりはしたがその後もどんどんと数値は増えていき10キロあたりをこえたところで画面の文字が一旦消え大きく英単語が映し出された。

「…ロスト……って、おい!!??」

勇気は半切れでモニターに向かって叫んだ。

それと同時に車は一旦停止した。

「これじゃないのか?」

そう言ったのは柴田だった。

柴田は停止した車内から窓をあけ上を見上げた。

その場所はおそらくさっきまで夕姫の居たであろう場所だった。

駅。

ビルからニョキっと突き出た高架が東の方へ続いている。

「なんで…。」

吉原がボソッと呟いた。

「おかしくはないさ。」

柴田はそう言うと車からおり、前方を通って運転席の方へ回った。

「え?」

吉原は驚いて戸惑った。

「代われ!お前の運転じゃお上品過ぎるんだよ!」

「はいぃ!!!」

吉原はそういうと車から飛び出し、回り込んで助手席に座った。

まるで暴力団にでも居そうな形相の柴田にびびって吉原はうまくシートベルトを閉められないでいた。

「しっかりつかまってろ!」

柴田はそういうとすぐにサイドブレーキを下ろした。

柴田はハンドルを握り吉原を鬼のような形相で睨んだ。

「ちょ…ちょっと待ってください!」

吉原はそう言うと急いでシートベルトを止めた。


―ブォン!!!


突然車が唸り急発進し、少し行った先でUターンした。


「うう…。吐きそう。」

いきなりのスタントのような運転に吉原は吐き気を催した。

「気合が足りん。」

柴田はそう断言して車の加速をあげた。



しばらく走ったあたりで、国道に出ると吉原は落ち着いてきたのか疲れたのか身動きしなくなった。

勇気は未だにLOSTという表示のモニターを抱えていた。

それだけが頼りなのである。

「この時間から考えると夕姫の乗ったのは終電ですね。そうなると遠くてもその止まったところにいるかと…。」

梨奈はそう言いながら携帯を見ていた。

どうやら、乗り換え案内のサイトで確認していたらしい。

「どこだ?」

柴田は前を見据えたまま言った。

「菊山です。」

梨奈がそう言うと4人はまた沈黙し、車内は静寂に包まれた。



―ゴゥ…ゴゥ…ゴゥ…ゴゥ…


その奇妙な音が突然その静けさを引き裂いた。

「ん?」

勇気はその前の助手席に座っていた吉原の顔を乗り出して覗くとすっかり寝入って、変ないびきまで立てている。

柴田はそれをチラッと見ると眉間に皺を寄せてまた前を向いて黙り込んだ。

後ろの二人は軽くため息をすると座席にさらに深く腰かけた。




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