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矛先 2

吉原は夕姫のすがたを見て名前を呟くとその目をそらせなくなった。

夕姫は何故か右手にビニール袋を持っている。

柴田の方はもう随分夕姫を見つめている。

「久しぶりです、柴田刑事に吉原刑事。」

夕姫はそう言うとニヤっと笑った。

「え?お知り合いなんですか?」

夕姫の横にいた巡査が暢気に笑顔で柴田に話しかけた。


「あ…危ない!下がってろ!!」


―ヒュン!


柴田がそう叫んだ瞬間夕姫は巡査を睨むようにした。

そして何かが夕姫から巡査に向けて放たれた。


―ビシャァァ!!


「あ…」


―ドサ…


「きゃぁぁぁ!!!!」


巡査の首に大きな切れ目が出来たと思うと血が噴出した。

その間は数秒であっという間に巡査はその場に倒れこんだ。

柴田の後方のあたりから女性が悲鳴をあげ、それに続いて人々の動揺の声があたりを取り巻いた。


車を運転していたもう一人の巡査は車の付近でそれを見ていた。

顔を真っ青にして言葉も出ない様子だ。


「な…」


柴田はその夕姫の様子を見てワナワナと手を震わせて睨んでいた。


「殺し方知りたかったんでしょ?」


夕姫がそういうと後ろにいた巡査が車に乗り込んで急に走り出した。


それに一番に反応したのは吉原で彼はそれを目で追った。


そして次に夕姫が後方で発信した車が横目で見える距離になるとそちらを見た。


―ドサ…ゴロゴロ…


夕姫は持っていたビニール袋を無造作に地面に落とした。

林檎がゴロゴロと転がりその車の方へゆっくりと向かう


夕姫は右手をサッと左から右に振った。


―ヒュン!ヒュン!ヒュン!……


それは連続して発生してその車に向かって飛んで行った。

音だけを残して色も形もないそれを感じた吉原と柴田は目を見開いてそれが施す業を見た。


―バシィ!!パキーン!!ズシャ!!グシャ!!


様々な破壊音がなる中その車は過激に壊れていく。


―ズズン!!…


その音を終止符に車は門より数メートル右の壁にぶつかって止まった。

誰もがそれを見て息を呑んだ。

一人としてその場から動けなくなった



―ドドーン!!!!!!!!!!


一時の間をおいてその大破した車はさらに大きな音をたてると爆発し赤黒い火柱を散らした。

車の残骸が当たりに飛び散りそれが近くにいた人達に襲い掛かった。

モクモクと上がるその火は夕姫の顔を照らし出した。


夕姫はそれを見て笑っていた。


柴田はその火柱から夕姫に目を移しそれを目撃した。

火のせいで熱くなっているはずなのに悪寒が走って気持ち悪くなった。


吉原は柴田の後ろでその火元に行くか署に戻るかそこにいるかでパニックになり挙動不審な動きをしていた。


「何故……お前はなんなんだ…。」

柴田のハスキーで低い呟くような声が夕姫の耳に届くと火を見ていたその瞳が柴田を映した。

炎の光を受けて赤く煌めいている。


「真実が欲しいの?」


夕姫は妖しく微笑みながらそう言った。

その顔は大人でも子供でもない、人間のようでもないまるで機械のように気味の悪い冷たい笑顔だった。


柴田は眉をしかめて夕姫をジッと見つめている。

吉原はその声にハッとなって柴田の後ろで動きを止め夕姫を見つめた。


その間ずっと転がっていた林檎が数メートル先で止まったのはそのころだった。


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