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望 1

 空は再び一日の経過を示すように暗くなっていく。

しかし、今日は夕日も見れないほどの曇り空でいつ雨が降ってもおかしくない。

勇気はそこで前日置いていってしまった自転車を回収し、梨奈も自転車を取りに行きまた出発した。

勇気と梨奈は町中走り回ったが夕姫を見つけることもできなくて疲れきっていた。

「あー…生き返る…」

二人はコンビニの駐車場でパンと飲み物を買って食べていた。

気が付いたら日が暮れ始めていたので昼食の時間を忘れていた。

ほとんど夕食の時間だったが、二人はまだ家に帰る気はなく、腹の足しに食べていた。

「まいったね…。手がかりもなんもないや…。」

二人は縁石に腰かけてため息をついた。

―ピロピロピロ…

その時突然勇気のかばんから何か電気的な音がした。

どうやら勇気の携帯電話のようだ。

「ねーちゃんから電話だ…。」

そう言うと勇気はそのまま電話に出た。


『ちょっと、勇気!あんた今どこにいんのよ…。母さん心配しているよ。ここらへん物騒だし、方向音痴だしって…。どうしたの?昨日から変だよ。』

「いや、その…。」

『困ったことあるんなら手貸すよ?』

「大丈夫だよ。それに姉ちゃんそんなに当てにならないし…。」

『あー!!言ったな!?私すごいんだからね!?盗聴器とか探知機とか発信機とか作れちゃうんだから!』

「余計アブねーよ!!」

『むー…とにかくそろそろ帰ってきなさいよ。』


勇気と姉、望は電話でも喧嘩口調だった。

勇気は姉とのやり取りについて梨奈に言った。

「そう…やっぱ、そろそろ帰った方がいいかも。」

梨奈はそう言うと自転車に向かい勇気もそれに従った。

「じゃ、また連絡するね。」

そう言うと梨奈は家に帰る方向とは逆の方に走り出そうとした。

「え!?ちょっとまって!梨奈ちゃんはまだ捜すつもりなの?」

「あ…だって、居ても立ってもいられないし…。」

梨奈は苦笑いをして勇気を振り返ってみた。

「とにかく今は帰ろう?明日までに何かいい案を考えてくるから…」

勇気はそう言うと梨奈の自転車を無理やり帰り道の方へ向かせてにっこり笑った。

梨奈はそんな勇気の気迫に押されてそれを承諾した。


 勇気は家に着いてちょうど母の作ってくれたご飯を平らげると姉の望に呼ばれて部屋へ入った。

昨日今日で随分片付いてきてはいたが、処せましとダンボールやらガラクタが置かれている。

望は回転する椅子に座っていた。

「あんた今日どこ行ってたの?」

望は不意にそのガラクタを持ったまんま椅子をくるっとまわして勇気の方を向いて言った。

「うん?…まぁ、色々と…。」

「…ふーん……あのさぁ…ちょっと謝っとかなきゃなぁと思ってさぁ…。」

「え?何を?」

「実はさぁ…」

望は椅子から立ち上がり勇気の方へ歩みよった。

「これ…あんたのかばんに忍ばせてあったんだよね…。」

そう言って望は小さな四角いプラスチックの箱のようなものを渡した。

真っ黒で一本短い線が外に伸びている。

「何これ?」

勇気は不思議そうにそれを見た。

「なんだと思う?」

望はニヤリと笑った。

それを見た勇気は嫌な予感がしてぞっとした。

「まさか!?」

「うん、そのまさかかな。」

「…。」

「盗聴器だったりする。」

勇気は固まってしまった。


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