水野家 2
「ごめんね。なんか変な話いっぱいしちゃって…。明日夕姫ちゃんの家に行くなら僕も付いていっていい?気になるし…。」
勇気がもう遅いからと家の玄関で梨奈を見送っていた。
「そんな、危ないよ。何があるかわからないし、それに夕姫とは今日始めて会ったんでしょ?」
「…まぁそうだけど…なんか名前も同じ発音で運命的なものを感じるし…梨奈ちゃん一人でも危ないでしょ?」
「う…ん…。」
梨奈は苦笑いをして頷いた。
梨奈は心のどこかで安心していた。
やはり、昨日と今日の夕姫を見て会いに行くのは危険であるだろうと予測が付いたし、今日は勇気が自分を連れて走っていなければ助かっていたかわからない。
「じゃぁ、明日、また電話するね。」
梨奈はそういうと門をあけて出て行った。
梨奈の家はそこから数メートル程度らしくて送る必要はないと言われていたので梨奈に手を振って別れを告げた。
勇気はその門の方を見てハッとした。
「あ…自転車置いてきちゃった。」
勇気はしばらくそこに呆然と突っ立っていた。
「あの子可愛かったわね。どこで知り合ったのよ。」
勇気が家に入りリビングのソファに座り一息ついたところでキッチンの方から牛乳を飲みながらやってきた望にからかわれた。
望はニヤニヤしながら勇気の横に座って牛乳をさらに飲み干した。
口にはその白い後が付いていた。
「今日知り合ったばっかだよ。余計な詮索すんなよ…。」
勇気はちょっとうざったそうに答えてテレビを付けると昼間におこった病院の事件についてニュースが流れていた。
勇気は公園と学校の事件については知っていたが病院については家を出てすぐにおこったせいで初耳だった。
どうやら勇気の居たあたりに近い病院だ。
そこには被害者の人数などが表示されていて勇気はその数に驚いた。
―死亡3名 重傷4名 軽傷16名
「これ…北中学のと同じ事件なの?」
勇気は食い入るようにテレビを見て呟いた。
「そうそう、それね。勇気が出かけてちょっとしたら起こってさ…ちょうどその時報道の人が近くにいたらしくて、すぐにテレビで流れてたんだよね。だから勇気が帰ってこないのちょっと心配しちゃったよ。」
勇気は望の方を見てすぐに画面にまた視線を戻した。
勇気はその報道を見れば見るほど明日の自分を案じた。
しかし今更後戻りはする気はないし、夕姫と梨奈のことが気がかりだった。
いかないということは眼中になかった。
望が部屋に戻りなにやらガタガタと音が鳴り出す頃にはテレビを消してダイニングの椅子に座った。
母が自分に用意しておいてくれた夕飯にはラップが掛けられていた。
その冷めた夕飯を食べてお風呂に入り床に着くまでずっとそれについて考えていた。
勇気はいざという時にどうすればいいのか必死で考えたが思い浮かぶことなくその夜は眠れぬまま刻々と過ぎていった。




