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八話 魔物との遭遇

 それは俺が異世界に転移して2日目の出来事だった。


 森の外へ繋がっているであろう人間が整備したと思われる道を昨日のうちに見つけていた俺達は、今日もその道を辿って森の外を目指していた。


 時刻は体感で昼過ぎといった頃だろうか。歩きやすい道に出た事で飛躍的に進行速度を早める事に成功していた俺達は、遂に視界の先に木々が途絶え、開けた草原に繋がっている景色を捉えた事に歓喜していた。


 こんなに歩いたのは何時ぶりだろうか。何せ十年間も引き篭もっていたのだ。

 体が鈍らないように運動だけはしておきなさい、とカーチャンに諭されて簡単な筋トレと柔軟体操だけは毎日続けていた事が功を奏していた。

 (ありがとうカーチャン)そんな感謝の言葉を心の中で述べて再び俺達は歩き出した。出口まであと少しだ。


 その時だった――


 俺達の後方、森の奥から足音らしき地鳴りが響いてきた。

 人の足音では無いだろう。人間の体重ではここまで重い足音は鳴らせまい。

 では馬の類だろうか? これも違うだろう。四足歩行の馬が駆ける際に鳴らすリズムの良い足音とは程遠い、重厚で且つ間隔の広い足音がするのだ。そしてその足音は一つでは無い、距離が近づくに連れて複数匹の集団である事が理解できた。


「タカシ、走りますよ!」


 カー子の叫びに我に返ると、俺は慌ててその場から駆け出した。足音はどんどんこちらへと近付いてくる。

 俺達の歩いてきた道を使っているのだ。違う、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()のだ。


 俺達が見つけた道は人が整備した道路などではなかった。

 俺達人間よりも遥かに大きく重い生物が何度も通る事で踏み固められて出来た獣道、いや魔物道ともいうべき存在だった。


 不注意にも俺達は昨晩このモンスター道の道沿いで野宿をしてしまっていた。

 寝込みを襲われるという最悪の事態こそ免れたが、寝泊まりした跡を発見して追ってきたのだろう、今こうして追われる羽目になっている訳だ。


「「「ブモォォオオオオオオオオ!!」」」


 後方から発せられた叫び声に走りながら振り向くと、俺は視界の端に此方に向けて迫りくる醜悪な巨人の集団を捉えていた。

 異形の集団(それ)は確かに二足歩行の人型と呼べる姿をしていた。しかし、決して人では無い。3メートルはあろう巨漢に固太りした屈強な体つき、緑色に染まった鱗を連想させるザラついた肌に身を包み、その醜悪に歪んだ面構えにはどの個体にも豚のように上向いた鼻面、下顎から生える巨大な牙が確認できた。

 

 その姿はまるで――


「あれは、オークなのか?」


 現実世界の漫画やゲームで見た事のあるオークそのものだった。いや、それよりも醜悪で禍々しい、そして何より大きすぎるのだ。

 なるほど、こいつらが頻繁に通り歩いているのであれば草木の生えぬ道が出来上がっていたのも頷ける。それにしても俺のイメージするオークという種族よりも一回りも二回りもデカイ。これではまるで巨人じゃないか。


「ジャイアントオークの群れですね。森の奥に集落でもあったのでしょう」


「ジャイアント? 普通のオークじゃないのか?」


「オークの上位種です。個体でオーク10匹に匹敵する脅威を持つ脅威度Bランク相当の危険なモンスターになります」


 また新しい単語が出てきたな。語感から意味は想像できるがBランクというからには相当恐ろしいモンスターなのだろう、それが群れで襲い掛かってきているという。


「なんだって異世界に来て早々にそんな凶悪なモンスターに絡まなきゃならんのだ! それも群れで! 普通こういう場合、最初はスライムとかゴブリンとか雑魚モンスターが1匹単位で現れて経験を積んでいくのが王道だろ!」


「そんな都合のいい話あるわけないじゃないですか! 彼等にだって多少の知能はあるんです。いつ外敵と遭遇するかもわからない場所で単独行動する個体なんて余程のアホか絶対的強者だけですよ!」


 そんなやり取りをしている内に俺とカー子は森を抜けて草原に出る。

 しかしジャイアントオーク達に諦める様子は無い、それどころか段々と互いの距離が縮まってきていた。

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