表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

再編、その原本と編集作品

色々と想定外

作者: 黒田明人

この小説は気分次第で追加されていきます。

なら、連載にしろよと言われそうですが。

他の短編集でもやっていますが、ノルマの無い書き物は気が楽なので、このままでお願いします。


ちなみに作者は元々読み専だったのが触発されて書いているだけなので、出来のほうはそれはもう酷い物なのだろうとは思っています。

そんな作品など読む価値無いって方は、そのままブラウザバックしてください。

それでも構わないという方のみ、読んでいただけるとありがたいと思います。

それと、豆腐メンタルにはきつい物言いは堪えるので、もしお言葉をいただけるにしても、お手柔らかにお願い致します。


もうすぐコンビニに着くなと思いつつ、ぼんやりと町を歩いていた。

夏も終わってもうすぐ秋祭りの季節だなと、そんな事も思いながら。

オレの名前はよくある名前でさ、珍しいもんじゃないよ。


マウンテン、リバー、ニュー、ワン……こんな感じな。


こんな合言葉みたいな苗字はどうなんだろうなとか、くだらない事を考えていたのがいけなかったのか、前方不注意で飛んできた不明物体を避けきれず、まともに命中して後ろに倒れた。

そこで後頭部を強打したまま、何も分からなくなっていった。



白い空間……あの世?


『三輪車にひかれて死ぬとは、また珍しい奴じゃ』


あれって三輪車かよ。


どっから飛んできたんだ、そんな物。

それにしても、そんなの普通は避けられるだろ。

どんだけボケてたんだ、オレは。

そんな事をつらつらと考えていると、神様らしき人に言われたんだ。


珍しいから普通は1つだけの特典を2つやると。


それで転生になるんだと感じ、ともかくそのリストがあるからと見せてもらったんだけど……


『動物の名前が分かるスキル』『植物の名前が分かるスキル』『鉱石の名前が分かるスキル』『魚の名前が分かるスキル』『生活魔法』『木登りが上手にやれるスキル』『穴掘り』『熟睡できるスキル』『腹下しにならないスキル』『二日酔いにならないスキル』『犬の気持ちが分かるスキル』『猫の気持ちが分かるスキル』『泳げるようになるスキル』『冬眠ができるスキル』


この中から選べってふざけてんのかよ。


どうやら昔からこういう転生をやっているらしく、スキルは先着順とか言われたが、はっきり言って出がらしだろ。

珍しいから2つじゃなくて、こんなのしか無いから2つくれるってはっきり言えよ。


『急ぐのじゃ』


仕方が無いな。

この中で一番ましなのは、まずは生活魔法だろう。

なんせ他に魔法と名が付くのが無いぐらいだし。

後はどれも似たり寄ったりだな。

不眠症なら熟睡ができるスキルとかは欲しいだろうが、生憎とオレの寝つきは良いからな。

二日酔いと言われても、そもそもそんなのには無縁だ。

冬眠って熊じゃあるまいし。

折角の異世界で冬眠してどうするんだよ。

せめて料理のスキルでもあればな。

料理と言えば、色々と衛生観念も低いだろうし、残飯放置とかしそうだよな。

そうだな、まあ残飯処理に穴掘りスキルといくか。


意外と穴を掘るって重労働だし、そういう機会があったら楽に掘れると助かるからな。


『早く決めるがよい。時間が無いからの』


何をそんなに慌ててんだ。

トイレでも我慢してんのかよ。

まあいいや。


そうして生活魔法と穴掘りを決めた事を報告する。

そうするとすぐさま送ろうとするから、説明を頼み込んだ。


『時間が無いのじゃがの』


そう言いつつも、何度も頼めば億劫そう声だが、何とか説明してくれた。

まずは状態を知るスキルを教わったが、これは世界の人間なら誰でも使えるらしい。


階級 1

状態 正常

体力 100

魔力 100

技能 生活魔法・穴掘り


名前も無ければステータスも分からない、本当に状態だけしか分からない代物だった。

それからスキルの説明になったんだけど、おざなりで終わって残念だったよ。


なんであんなに急いでいたのかな。



送り込まれた先は野原?


見渡す限りの草原で、遠くには山々が連なって雲を頂く程の高い山も見える。

普段住まいのコンクリートジャングルでは、映像でしか見た事のない雄大な大自然。

左手の遠くに森のようなものが見え、後ろには木もまばらな林がある。

空気も澄んでいて、少し肌寒いぐらいだけど、過ごしやすい感じがするな。


広大な草原にはちらほらとワンコみたいなのが居て、こっちに駆けて来るのが見て取れる。


ウエルカム、アナザーワールドってか。


『ウォンウォン』

『ガルルルルゥ』


可愛いなぁ、それに元気だし、そのむき出しの牙とか、まるで食い物を見つけたような……え?


うえ、いかん、オレ何をボケてんだ。


気付けばすっかり囲まれていて、今更逃げられるとも思えないし、なにより遠巻きにしておいてじわじわと迫る感じとか、間違っても友好的には見えない。


こいつらは敵だと、そう自然に思えた。

死因・転生ボケとか洒落にならねぇ。

てか、街じゃなかったのかよ、送り先。


武器なし、金なし、攻撃スキルなしって詰んでねぇかよ。

くそぅ、こうなったらアレしかない。

ざっくりと教わったままに、スキル発動のコトバを連発する。


『ホール』『ホール』『ホール』『ホール』


唱えるたびに狼らしき生物の直下に穴が開き、その唐突さからドンドン落ちていく。

調子に乗った彼はただひたすらに連呼をしまくった。

気付けばもう周囲に狼は居ない。

ただ、妙に反響する鳴き声が、まるで仲間を呼んでいるようにも聞こえてくる。

どうやら穴の中に更に穴が開いたようで、妙に深い穴からはさすがに出られない様子。


はぁはぁはぁ、何とかなったかよ。


穴の中に穴が開いて、そのまた穴の中にまた開いたんだな。

連呼して正解だったけど、いきなり武器なしで草原とか想定外だぞ。


やってくれたな、神様。


それにしても物悲しい鳴き声だな。

そろりと覗いてみると、穴が歪に開いたようで、真下の様子はよく分からない。

確か階級1だと1メートルの深さと言っていたから、きっと段々にずれて開いたんだろうな。

やたらとくぐもっている声もあるって事は、前向きに落ちて頭から逆向きに突っ込んでいる奴も居たりして。

本当なら出してやっても良いんだけど、出したらまたきっと襲って来るんだろうな。


だったら可哀想だけど、このままにするしかない。

そう思った彼は、そのままその場から遠ざかる。


後方の林の中に走り込み、傍に生えていた木に登ろうとする。


元々彼はそういうのが得意であり、地面は危険と思っての事のようだった。

そうして人心地付いた彼は、そのまま木の枝の重なり合っている場所で横になり、そのまま眠り込んでしまう。


平和な国からいきなり送り込まれた世界で、いきなり遭遇した命の危険。

初めて発動したスキルとその結果に、彼の精神はかなり疲労したようであり、気付いた時には深夜になっていた。

少し肌寒さを感じたものの、落ちなくて良かったと思いつつ、夜じゃうっかり下には降りれないと彼は、そのままスキルの検証を開始した。


穴を掘る能力は何となく分かったが、生活魔法のほうはおざなりだ。

確かにざっくりと説明は受けたものの、それを実際に見た訳じゃない。

となれば検証の必要があると、まずはスキルの説明を思い出していた。



「穴掘りは何となく分かったがよ、生活魔法の説明を頼むよ」

『生活魔法はの、着火、飲み水、丸洗い、風出し、それと小物入れじゃ』

「小物入れってもしかして、アイテムボックスみたいな」

『残念じゃがそのような代物ではないの。ほんの僅かの量を入れておけるだけじゃ』

「それってどれぐらい入るんだ」

『ああもう時間が無いのじゃ。スキルは階級で進化するからの、後は自分で調べるのじゃ。では元気での』

「ちょ、待って、まだ説明が……」

『さらばじゃ』



ああ、そうだったと彼は思い出す。

いきなり時間が無いとか言って追い出されたんだった。

そう思い、枝の先の葉に『着火』と……ぼわっ。

小さな炎が出現し、1枚の葉が燃え上がる。

感動していた彼だったが、すぐに消えて辺りはまた真っ暗になる。

急に明るくなってすぐに暗くなった為、周囲が暗黒に染められて何も見えなくなっていた。


ああ、失敗したなぁ。


しばらくじっとしていた彼の目が慣れ、薄ぼんやりと周囲が見えるようになる。

空には衛星と思しき代物が2つ煌々と輝いており、だからこそ深夜でも周囲が薄明かりの中にあった。

本当に異世界に来たんだなぁと、しみじみと彼はそう思っていた。

しばらくぼんやりしていたものの、次なる発動を試してみる。

両手をおわんのようにして『飲み水』チョロチョロチョロ……


おっとっと、こぼれる。


少しずつ増える水をこくこくと喉を鳴らして飲んでいく。

乾いていた喉が潤され、ようやく頭がはっきりしてくる。


そういや、喉が乾いたからコンビニに行こうとしていたんだったな。


そんな事すらも忘れていた自分に呆れながらも、続きをしようと思い立つ。

水はドンブリに1杯程は出たようだったが、確かにそれぐらいじゃ飲み水に使うしかやれそうにない。

だけども魔法は魔法だと、気分が向上してくる。

それに、階級が上がれば進化すると言っていたし、もっとたくさん出るようになるかも知れないし。


さあ、次はどんなのかな。


彼は調子に乗って油断していた。

異世界でいきなりピンチになったものの、スキルで容易く回避した為に、ちょっと舐めていたと言っていい。

肌寒さを感じていたのに『丸洗い』と唱えてしまったのだ。

もちろん彼は両手を洗うつもりで。


バシャッ、ザバザバ……うわぁぁ、何だこれぇぇ……


うぇぇぇ、なんだよこのスキル。

いきなり水を浴びさせられて服ごと身体を洗われたぞ。

しかも、濡れたままとか、寒くて堪らないぞ。

頼むぞ、温風で……『風出し』


さ、寒いぃぃぃ、ストップストップ、止まってぇぇぇ。


どうやら発動したからにはいきなりは止まらないようで、彼は必死になって止まってくれと念じる。

歯は既にガチガチと音を立て、まともなコトバにならないながらも、止まれ止まれと必死につぶやく。

しばらく吹いていた風だったが、何とか止まってくれたものの、やたら寒くて仕方が無い。


くそぅぅ、こんなの想定外だぞ。


生乾きになりはしたものの、あんな冷たい風とか反則だろ。

このままじゃヤバい、何とかしないと。

木の上なんかじゃ何も出来ないと彼は開き直って下に降り、そこらの落ち葉や枯れ木を集めて着火で火を灯す。


最初からこうすれば良かったなぁ。


生乾きの服が少しずつ乾くと共に、その湿気が湯気となり、顔が汗ばんでくる。

だけどこのまま我慢して身体を温めないと、こんな世界で風邪なんて引いたらどうしようもない。

そうして彼は朝まで身体を温めていた。


良かった、危険な動物が来なくて。


ほっとすると共に腹が鳴る。

そういや何も食べて無かったと思いつつも、今やれる事はこれだけと、またしても両手に飲み水を出して飲む。


これからどうしようかと思っていると、上空から雫がポタリポタリと落ちてくる。

やっと人心地付いたのに、また濡れたのでは今度こそ風邪を引いてしまう。

そう思った彼は必死に雨宿りの場所を探す。

しかし、林の中には何も無く、まばらに生えた木では雨宿りにもなりそうにない。

どうしようかと思っているうちに雨足が強くなっていく。

そうして思いつく。

彼はホールと唱えて穴を掘り、そこに飛び込んで横にホールと。


やっぱりだ。


少しずつ少しずつ、横に横にと穴は延びていく。

水が来ないように途中に下向きの穴を開けつつ、彼は掘り進んでいった。

空気が心配なのでしばらく進んだ先で止まり、まずは直下に穴を掘り、その穴の中に更に穴を掘る。

そうしておいて細い、空気穴になりそうな穴をその上に掘ると、途端に水が流れ込むが狙ったとおりに大穴の中に落ちていく。


かなり深い穴になったろうから、これでいけると思う。


何度も使ったスキルのせいか、妙にだるさを覚えた彼はそこでまた眠りに就いた。

それからどれぐらい経っただろうか、彼は急に身体の変調に気付いて目を覚ます。


なんだこれ、身体が妙に突っ張るような。


まるで身体の中から何かが溢れ出そうな不思議な感覚、だけど不快じゃない。

それどころか力が溢れてくる、本当に不思議な感覚。

何が起こったのか分からないまま、状態を見てみようと思い付く。


階級 12

状態 正常

体力 210

魔力 210

技能 生活魔法・穴掘り


どうしてだか階級が上がっていた。



雨も上がったようなので、彼は斜め上に向けて穴を掘る。

階級が上がったせいか、1発で地上までの穴が開き、速やかに外に出られた。

マスクデータっぽいステータスも向上したのか、身体が妙に軽い。

外に出ると雨上がりの空気は湿気ていて肌寒い。

それでも昨夜のような事はなく、やはり階級の上昇のせいで身体が丈夫になっているようだ。

彼はどうして階級が上がったのかを考えつつ、ふと昨日の事を思い出す。

もしかして……そう思った彼は、狼達と遭遇した場所に行ってみた。

あちこちに開いた穴からは、弱々しい鳴き声が聞こえ、それが少しずつ減ると共に彼の力は増えていく。


お前ら泳げないのか。


出してやりたいけど、襲われるのは嫌なんだ。

だから悪いな、そのままくたばってくれ。

どうやら経験値になっているみたいだしさ。

即興の落とし穴だったのに、罠って事になっているみたいだな。

けど、まさかこんな事になっているとは、本当に想定外だ。


かなり離れていたはずなのに、彼の仕掛けた罠という認識なのか、しっかりと経験値になっているらしい。

可哀想だけどこのまま放置するしかないと、彼は心で謝りながらも全てが終わるまでそこに佇んでいた。


そうして階級も18に上がり、以前とは比べ物にならないぐらいになった彼は人の居る場所を探して歩き出す。

見殺しにした狼達に心で謝りながら。


これも弱肉強食……だけど、食べないんだから罪は重いよな。


そんな彼だったが、しばらく歩くうちに気分が上昇していく。

それ程に階級の上昇は彼にかなりの恩恵をもたらしたようだった。

彼の行く末には何が待ち構えているのか、それは今は分からない。

だけどもうこの世界で生きていくしかないと、前向きに生きていこうと思う彼だった。


しばらく歩くと村のような物が見えてくる。


彼は良かったと思い、何か食べ物を分けてもらおうと勇んで村に歩いていく。

外壁が妙に崩れているのが気になるが、修理中かも知れないし、何ならそれの修理の仕事があるかも知れない。

そんな前向きな気持ちも門を潜った時に消失した。


え、誰も居ない? 嘘。


ここから普通に異世界体験になると思ったのに、こんなの想定外だぞ。

そこは廃村のようで、何処に行っても人の存在は無かった。

もちろん畑は荒れ放題で何も……


これ、食べられないかな?


まるで雑草そのものだけど、柔らかそうだし何とかなるかも。

そう思った彼だったが、さすがに生で食べるのは気が引けたのか、台所用品が残ってないか探し始める。

しばらく探していた時に、穴の開いた道具をいくつか見つける。

無いよりはましだと、鍋を『丸洗い』で洗った後、斜めにして『飲み水』で水を入れ、こぼれないように組んだ石に載せてそこらの枯れた草木で『着火』で火を灯す。

しばらくすると湯が沸いたので、雑草みたいなものを入れて湯掻く。

緑色の汁が出てそれが妙に青臭いが、だからこそいけるかもと彼はそれを口に含む。


木の枝の箸じゃ巧くつまめないけど、無いよりはましだよな。

うわ、まだ苦いや。

もっと煮ないと。


それでも食べられない事もないようで、同様の草を摘んでは湯掻いて食べていく。

何とか腹の足しになったような気がしたので、後は水で何とかしようとまたしても『飲み水』に頼って腹を誤魔化す。


それにしても、本当に良かったな、生活魔法と穴掘りが残っていてそれを選んで。


誰も取らなかったのは多分、もっと凄いスキルがあったからだろうけど、そうじゃなかったら動物や植物の種類が分かっても、今頃は狼に食われていただろう。

あれを何とかしたにしても、風邪を引いていたかも知れない。

更に言うならこんな風に料理の真似事も無理だったろうし。


何にしても不幸中の幸いだったなと、彼はそう思った。


 

ボロ家でも雨露ぐらいは何とか防げそうで、とりあえずしばらくの間はここで過ごそうと考えた。

狼の件もあり、生物は存在している。

ならばそれらを狩れば食べ物は手に入る。

廃村を巡って目ぼしい物を探しつつ、今後の事を色々と考えていた。


刃の折れた槍、弦の無い弓、折れた矢、刃の欠けた包丁などなど。

そんな中、鍛冶屋みたいなボロい家を発見し、そこを仮の住まいに決めた。

埃だらけの中を掃除……『風出し』で吹き飛ばし……


うげぇぇ、ゲホッゲホッ、たまらねぇ。


慌てて外に走り出る。


あんなに埃が立つとは想定外だったな。

やれやれ、窓の外から出入り口に向けてやれば良かったか。

それでもそのうち落ち着いたようなので、ゆっくりと中に入る。


自前の下着を雑巾にするのも嫌だと思っていたら、ボロボロの布のようなのを見つける。


試しにこれに『丸洗い』とやってみると、今度はちゃんとそれが洗われるようだ。

つまりあの時は手は前に出していたけど、何も考えずにやったのが失敗だったんだな。

テーブルや椅子をそれで拭きながら、そんな事をつらつらと考える。


ちなみに小物入れの詳細は入れてみると分かった。

刃の折れた槍は入らず、弦の無い弓も入らない。

だけど折れた矢は入り、刃の欠けた包丁も入った。

その事から大きさに制限があるようであり、長い物は無理のようだ。

後は重い物も無理のようで、石臼っぽい代物はとても手では持てないが、小物入れにどうかと思えばやはり入らなかった。

その代わりそれが壊れたような、両手で持てるぐらいの欠片だと入ったが、次の欠片は入らなかった。

それからも色々な重さや長さの品で確かめたところ、2メートル角ぐらいの大きさの箱に物を入れるような感じで、重さは自分が持てる程度の重さが限界のようだった。

最初の頃を調べてないので何とも言えないが、推理としては階級×10センチ角の大きさで、現在の筋力で持てる範囲の重さだと思われた。


階級 18

状態 正常

体力 270

魔力 270

技能 生活魔法・穴掘り


この数値も簡単な推移で増えていて、階級が上がるごとに10ずつ増えているようだ。

つまり階級18なら1.8メートル角の大きさで、持てる範囲の荷物が入る事になる。

ただし、斜めにすれば入ると思うのに、2メートルぐらいの弓は無理だった。

その事から、長さの制限は一辺の長さにイコールすると思われた。


小物入れって名前の割には便利かも。


それからも彼は廃村中から色々な品を集めては、仮の住まいに置いてまた探しにいく。

元々、そんな技能は無いから鍛冶とかはやれないが、鉄は熱すれば柔らかくなるぐらいの事は知っている。

そうして急に冷やしたり叩いたりしたら硬くなる事も。

だからその真似事と言うか、もどきぐらいなら何とかなるかも。

そのうちに持ち手の折れたハンマーを見つけ、それを何とか修理して使えるようになった時、これで何とかなるかもって思えたんだ。

そうしてそれをひとまず置いて、畑の雑草をよくよく見ていると、妙に見た事があるような草を見つける。


これってヨモギじゃないのかよ。


匂いも確かにそんな匂いだ。

他にもフキっぽい葉の丸い草とか、ネギみたいな草とかが見つかる。


何とかなるかも。


だが、残念ながら調味料が無い。

何とかならないかと、廃屋全ての台所と思しき場所を探していく。

そうしているうちに、ツボの中に何かの結晶がこびり付いているのを発見する。


これって塩だよな。


自信が無かったので、少しだけ指に付けて舐めてみる。

どうやら確かに塩のようだが、妙にいがらっぽい。

それでも無いよりはましだと、彼はそれを削って集めた。


これ1度溶かしてゴミと分けたほうがいいな。


またぞろ穴の開いた鍋を活用して、塩水にすると何やら浮いている。

それを何かで漉せばいけそうだけど、生憎とそんな代物は無い。


もったいないけど、仕方が無いよな。


ズボンの後ろのポケットを引っ張り出し、千切って漉し袋の代わりに使う。

集めた中で欠けた湯飲みがあったので、それですくっては入れて、またすくっては入れる。

とりあえず漉せたのでひたすら熱して再度の結晶化を図る。

パチパチとはぜるような音と共に、鍋の中に白い結晶が現れてくる。

それを慎重に削って容器に入れ、舐めてみると今度は少しましのようだ。


これが限度かな。


村中の塩ツボを回収して、繰り返して一握りぐらいの塩を確保する。

漉した代物が何なのかは分からなかったが、表でよく見ると何かの破片のような。

これってもしかして昆虫の……つまり、いがらっぽいのはそれの死骸が。


うわぁぁぁ、ダメだ、考えない、そんな事は考えない。


折角の戦利品がおぞましい代物に思えそうなので、余計な事は考えない事にした。

それから気を取り直して様々な草を塩で煮て食べたところ、以前とは比べ物にならない味となり、これなら何とかなりそうだと一息をつく。

囲炉裏のようなところに火を灯し、穴あき鍋を熱しながら次々と草を放り込んでいく。


山菜汁っぽいな。


異世界に来て、やっと料理っぽい食べ物を食べた瞬間であった。



それからも試行錯誤は続いていく。


例えば鍋の修繕であるが、鉄とか溶かせないのでどうしようかと思った挙句、小銭入れの中の10円玉の活用を思い付く。

銅ならば鉄の容器で溶かすのは無理でも柔らかくなるはず。

まずは叩く為の台をどうにかしないと、鍋の中をいきなり叩くとかやれそうにない。

そこで思い付いたのが壊れた石臼で、早速にもハンマーで叩いて整形していく。

硬いので簡単には形が変わらないが、叩き台ならばこれぐらいのほうが安心だ。

それで何とかそれっぽい形になったので持ち帰り、鍋を逆向きにして割れ石臼に載せる。

穴の大きさは10円よりも少し大きいので、まずはそこに10円玉をはめてみる。

このまま叩いても多少は伸びるだろうけど、接着しないと意味が無い。


熱を加えないのならニカワでも良いだろうが、生憎と煮炊きするには相応しくない。


『着火』のスキルを10円玉の表面限定で試してみると、1回じゃ無理だけど何度もやると柔らかくなった。

スキルを使いながら叩いていくと少しずつ伸びていくような感じがする。

そのうち10円玉の原型を留めなくなり、動かしても外れない感じになりはした。

ただやはり多少水が漏れるのは仕方が無いので、鍋を空焚きして継ぎ目の辺りに草の汁を流して焦がしてみた。

ダメ元だったんだけど、少し漏れが減ったような気がする。

それから煮炊きはその鍋もどきを使い、コンスタントに山菜汁もどきが作れるようになった。

他の穴開き鍋も同様に修理して、何となく使える代物になったんだ。


そう言えば、あの穴って落とし穴の罠になるよな。


と言うか、落とし穴の罠を作るのがとても楽だろう、なんせ穴を掘る労力が要らないんだから。

そう思って村の外で色々と試してみたんだけど、穴の形状には底の形状も含まれるようで、尖った槍みたいな底にするのも可能だったんだ。

そうして草原のあちこちに穴を開けて落とし穴にしてみたんだけど、知恵ある存在への警告の為に木の枝を1本差しておいた。

未だ人には会えないけど、この世界に狼しか居ないはずもない。

もしかしたら誰かが通りかかるかも知れないし、それが冒険者みたいな専門職じゃなくても木の枝で気付くはずだ、ここに罠があると。

こっちも生存が掛かってんだし、それに気付かない奴の事まで考えてられないんだ、悪いな。


警告するだけありがたいと思えよな。


フタにする為の木の枝は小物入れで持ち帰っており、それを使って縦横に組んで落ち葉とかを置いて土が落ちないようにしたうえで、土を被せてそこらの雑草を植えて軽く抑えておく。

欠けた包丁がちょうどのこぎりのような役割を果たし、生木でも細ければ何とか切れたんだ。

一番欠けて使い物にならないような包丁の刃を更に欠けさせてギザギザにして軽く研いでみたところ、何となく細い枝ぐらいなら切れない事もないぐらいになったからそれを使っているんだ。


そうして石臼で作った叩き台は硬いので、その叩く場所を使えば何とか包丁が研げるんだ。

ギザギザ包丁にも使ったけど、それなりの包丁もそれで研いだんだ。

もちろん、本物の砥石じゃないから効率は悪いけど、ひたすら研いでいるとそれなりに切れるようになった。

そうしていると叩き台の表面もツルツルになるので、ますます作業には調子が良くなった。


一石二鳥だな。


後は折れた槍も何かに使えないかと思っているうちに、それを取り外したらノミにならないかなと気付いたんだ。

槍の穂先はちゃんとした鍛冶屋が拵えたんだろうし、ならばかなり硬いに違いない。

ちょうど斜めに折れているから、その辺りをもう少し研げば、本物には及ばなくてもそれなりのもどきにはなりそうだ。

直したハンマーとセットで使えば、色々な作業に使えそうで見通しが明るいな。


そうして何とかそれっぽい形となり、まずは底に大穴が開いて潰れた鍋だった代物から、金属の端材を作り出そうと思った。

ハンマーで曲がっている面を軽く叩いて直した後、色々な形状に切り取っていく。

鋼と思しき槍の穂先は、ハンマーで叩いてやれば金属に食い込んでいき、ガタガタながらも金属片が取れていく。

一塊で取れた金属片を更に加工して、不細工だけどお玉みたいな代物も完成した。

色々取った鍋だった代物はもう、鍋の側面しか残っていない。

だけどその代わり長方形の板になりそうで縦に切断して伸ばしてみると、これがちょっとノコギリの刃みたいに見えてくる。

となればこのままノコギリにしちまおうと、比較的まっすぐなほうを刃にしようと、ガタガタのほうを少し折り返して叩いて曲がりに対する強度を確保して、ノミもどきでノコ刃っぽく刻んでいく。

目立ては出来ないけど先だけでも研げば細い枝ぐらいなら何とかなるだろう。

そんな訳でノコギリもどきに木の棒を付けて持ち手にしてみたら、細い枝ぐらいなら何とか切れる代物になった。


のこぎり包丁の引退である。


もっとも、それはそれで肉を切るのには使えたので、罠で獲れた動物を捌くのには重宝した。

動物と言ってもやはり狼であり、ワンコの親戚とか普通なら食べないんだけど、今はどんな肉でも欲しい。

まずは皮を剥いでそれを口の欠けたツボの中に入れて水を注いでおく。

確か2日ぐらい浸けた後で煮ると、ニカワになるとかサイトで見たような気がするんだ。

他にも何か必要だったような気もするけど、それが何か分からないんだけどね。

それでも他に接着剤なんて知らないから、試してみようと思っている。

そりゃもちろんいきなり成功などするはずもないから、その原料を大量に集めて研究しながらになるだろうけどね。


早速にも罠の調査に出かけると、獲物が数匹掛かっていた。


なのでその場で解体作業を始めたんだけど、さすがにいきなりは気分が悪くなったんだ。

そりゃそうだよね、あちらじゃそんな事、全くやった事もなかったのに、いきなりスプラッタな光景に耐えられるはずが無い。

それでもやらないといけないんだと自分に言い聞かせ、吐きそうなのを堪えながら何とか解体をしたんだ。

もっとも、やっているのうちになんとか吐き気は収まってくれたけど、気持ちが悪いのは仕方が無いと思った。

だけど手もぬるぬるしているし、血でドロドロになった肉は、とても食おうと思えるような代物じゃない。

なので試しにと『丸洗い』してみたんだ。


そうしたらぬるぬるは取れるわ血も綺麗に洗い流されるわで、これぞ肉って感じの代物になったんだ。

しかも内臓なんかも綺麗になっちゃって、もつ鍋になるかもだなんて、そんな事まで思えるようになったんだ。

そうして綺麗になったのを小物入れに納め、そこいらの残り物は穴の中に放り込んで他の罠に向かったんだ。

やはりこういう作業は村の外でやらないと、いくら洗い流しても臭くなるだろうし、虫でも湧いたら大変だし。

もっとも、こんな作業を罠の傍でやっていたりしたら、他の生き物に襲われかねないけど。

その為に一応だけど穂先を外した槍の本体も持ってきており、けん制しながら穴に落としてやろうとは思っている。

それもこれも、最初の狼の群れを退治したのが自信に繋がっているんだとは思うけど、油断は禁物だなと気を引き締める。


ちなみに使用後の穴の形状変化がやれるのが分かり、素材を取った後の残骸を入れた穴は元に近い浅さまで埋め戻してある。

だけどあくまでも穴掘りスキルなので全ての土を元に戻す事はやれないようで、だからこそ10センチの深さの穴へ変化させている。

本当はもっと浅くもやれそうだけど、以前埋めた場所でうっかりと穴を開けると、発酵してヤバい代物が出るかも知れないと思っての事。


何はともあれ、料理もどきの開始である。


ノコギリ包丁でまずはざっくりと切ってブロックにします。

それを適当にスライスして鍋もどきで煮ていくと鍋のお湯が汚れてきて、これがアクとかいう代物なんだなと思った。

なのでそれをお玉もどきですくって捨てていくと、そのうち濁らなくなってきた。

そうしてその肉を鍋から取り出して小さく切り、折れた矢から拵えた串に刺していく。

さすがにいきなり野生の肉とか、固くて臭くて慣れないとまともに食えないとか聞いた事がある。


なので一度炊いたんだ。


肉のエキスは抜けちゃうだろうけど、市販の肉しか知らないからさ、そんな肉もどきはきっと口に合わないと思うんだ。

そのうち慣れるにしても、今はこうして柔らかくしてアクも抜いてから焼くしかない。

1ブロックを全て串に刺した後、囲炉裏っぽいところの周囲につらつらと差しておいた。

これで他の作業をしていても自然に焼けるに違いない。


そうして汁物を何とかしようとしていたら、実に香ばしい匂いが漂ってくる。

ああ、これこそが肉が焼ける匂いと思ったらたまらなくなり、そのままお食事になりました。

肉を食いながら汁を作り、そうしてこのまま本格的に食べていきます。


いただきまーす。



あれがまさに肉の味だった。


アクっぽいのを抜いたせいか、塩味の焼肉っぽい感じだったけど、程好い柔らかさで凄く美味しかった。

なので何本も焼いて腹一杯食べちゃったんだけど、あれって塩をやたら使うんだ。

なのでスライスして干し肉にしようかと思い、やはり塩をまぶして囲炉裏の上に干しておいたところ、それっぽい代物になりました。


ていうか、これって燻製もどきだよね。


そうしてその燻製もどきな干し肉もかなり増えた頃、小物入れの中に入れた物が腐らない事に気付いたんだ。

肉のブロックを入れたまま作業していて忘れていて、燻製もどきの干し肉が完成してそれを小物入れに入れようとした時に気付いて、ヤバいと思って出してみたら入れた時のままの状態だったんだ。


これって逆の意味での想定外だな。


恐らくオレの生活魔法は普通の生活魔法って訳じゃなく、神様からの貰い物だから特別製の可能性がある。

だってそんな世界の中で学べるようなスキルとか、わざわざ特典とか言うはずもないし、1つとか2つとか限定する理由にもならない。

そんな特殊な限定版だからこそ、特典という名で与えるんだと思ったんだ。

だからゴミスキルに見えたとしても、実はそれは世界の中のスキルとは似て非なる代物じゃないのかと思うんだ。

例えばだけど、覚えているのが鑑定の出来損ないなスキルだけど、あれも進化すればちゃんとした鑑定になったりするんじゃないかと思えるんだ。

そうして他のスキルも進化するのなら、ゆくゆくは凄いスキルになると思えば特典とした意味も分かるってもんだ。


それはともかく、燻製っぽい干し肉は小物入れ送りとなり、余った肉ブロックもそのまま小物入れに収まった。


今日の夕食は山菜と肉の鍋である。



ニカワ製作をやると、それっぽい代物になりました。


不純物のろ過に困ったものの、以前使った後ろポケットのろ過袋でゴミなんかは取れたので、それっぽくなった状態で口の欠けたツボに入れて小物入れの中です。

そろそろ持てる限界が近いようで、入れる物も限定しなければ。

とは言うものの、罠で少しずつ階級の上昇があるようで、現在は25になっています。

なのでもう少し余裕があるかも知れません。


そして遂に弓が入ります。


後は穂先の無い槍が入れば完璧です。

3メートルぐらいなので、もう少し上がれば入りそうです。


着火も階級の上昇と共に進化しました。

なんと温度が変えられるんです。

なのでバーナーみたいな着火もやれるようで、持続時間も延ばせました。

ただ、長時間は無理のようですが、それでも鉄がドロドロに溶けたのにはビックリしました。


そこいらから石を拾ってきて溝を彫り、溶けた鉄を流し込みます。

なんと、極浅の穴を石に開けられました。

なので手間要らずです。

さすがにゴミに見えても神様からのスキル、半端ありません。

なのでこれもこの世界にあったとしても別物なのでしょう。


そんな訳で釣り針を拵えてみました。


釣り針の形状の、底が丸い穴をパターン化して、2つ拵えて鉄を流し込んだ訳ですね。

もちろん反転パターンなので、2つ合わせて熱して初めて1本の釣り針になります。

極小の着火をバーナー状態にして、瞬間的に溶かしてくっ付けます。


え? どうやって鉄を溶かしているのかって?


うん、普通なら溶かす容器に困るよね。

それはですね、石臼の欠片をざっくりと形成して、その中央に底が丸い穴を掘るんです。

そうすると石のヒシャクのような代物になり、その中に鉄を入れて高温着火で溶かすんです。


槍の穂先のノミが良い仕事をしてくれました。



今日は絶好の釣り日和。


とは言うものの、竿は弓でも構わないけれど、テグスがありません。

抜くとハゲが心配なので、髪の毛は根元で切りましょう。

はい、そういう訳で髪の毛のテグスです。


切る物が無いので困りましたが、包丁の先で少しずつ切りました。

元々、散髪に行かないといけないと思っていたものの、何となく面倒で放置していたので、肩甲骨の中ほどまでになっていたのです。

野郎のポニテとか見苦しいので、近々と思っていたところにこんな想定外な事態になってしまいました。

なので60センチ近くある髪もありまして、根元の辺りで適当にザクリと切って、数本ずつ繋いでテグスの代わりにしました。

さすがにそれで縄を編むほどに器用じゃないし、第一編み方なんて知りませんので、ニカワを活用してくっ付けたんです。


3本束ねの髪の毛テグスの完成です。


実は村の中に川が流れていて、かつては野菜なんかを洗っていたのかも知れません。

そこには何か泳いでいるようで、早速にもそこらの石をひっくり返します。

中々虫が出ないのですが、そのうちそれっぽいのを見つけました。


それを自家製釣り針に刺して釣りの開始です。


一応は返しっぽいのも拵えてありますが、事によるとすぐに欠けるかも知れません。

念の為に焼き入れはしたのですが、硬くなり過ぎると脆いとか言いますし。


来た来た来たぁぁぁ。


小魚ですが一応は釣れました。

ですが、一発で針が終わってしまいました。

こんなに寿命が短いとは想定外です。


苦労したのになぁ。


 ◇


進化した生活魔法は半端ありません。


開いた魚に『丸洗い』を使ったら、鱗やら骨やらヒレやら皮やらが洗い流されて魚肉だけになりました。

なので今日の山菜鍋は魚肉入りです。

それは良いのですが、そろそろ塩が心許なくなってまいりました。

まだありはするのですが、このままだともうじき無くなってしまいそうです。


そろそろ旅立ちの時期なのかも知れません。


幸いにも残留物で様々な道具は出来ましたので、道々の役に立ってくれるでしょう。

階級も30を越えたので、かなりの道具が小物入れに入っていますし、塩味串肉も入っています。

塩を直接揉み込むと量を使うので、塩水に浸けてから焼いています。

なので薄味串肉になりはしたものの、かなりの数になったので毎食でも1ヶ月ぐらいは食べられそうだけど、塩分の取り過ぎにはならないと思います。


そんな訳で、長らく住んでいたこの廃村ともお別れです。


可能な限りの道具と食べ物を小物入れに詰め込み、手には手製の槍と背中には弓と矢の容器と袋を背負っての旅立ちです。

あれから弓の弦にと、そこらのつる草の中でも丈夫そうなのを見つけ、既に試射も終えています。

20回ぐらい撃つと切れてしまうのですが、予備も10本ぐらいは小物入れに入っています。


矢も枝を切って乾燥させて、やじりも拵えたまでは良かったんだけど、肝心の矢羽の為の鳥がどうしても見つからなくて、仕方なくボロ布を矢羽に見立ててニカワで貼り付けています。

一羽も出会わないとは想定外でした。


とりあえず矢は10本しかありませんが、メインウエポンは槍なので弓は保険です。

その代わり、やじりは可能な限り拵えて小物入れに入れてあります。

そうして愛用していた修繕した鍋も一応は背中に背負っていますし、包丁の類も腰に差してあります。

刃物サックは狼の毛皮で何とか拵えましたが、ニカワでくっ付けてあるだけなので長持ちはしないかも知れません。


ハンマーは惜しいので持参しますが、叩き台は残しておく事になりました。

階級が上がったせいか、かなりの荷物なのに辛くありません。

実はリュックを拵えようと思ったのですが、どうにも無理なようでナップサックの出来損ないになってしまいました。

ただ、狼の毛皮の利用なので寝る時には枕になりそうですが。


ああそうそう、毛皮で上着も作りました。


もちろん上着もどきであり、実際には毛皮の毛布に近い代物なので、どちらかと言えばコートという感じです。

それと言うのも段々寒くなってきたので、それがどうしても必要だったのです。

もっとも、冬らしき時が過ぎるのを待ちたかったのですが、生憎と塩がヤバいので仕方が無いのです。


恒星の移動する関係から方角が分かり、南に進んでみようかと思っていますが、金星のように西から登って東に沈むなら逆になるので、地球型なのを祈るばかりです。

そう言えば攻撃魔法もどきが出来たんでした。


『高温着火』の投擲です。


そんな訳で投げ易いサイズに切った木も持参していまして、投げたら即座に点火するんです。

そうすると瞬間的に炭化するんですけど、それが灰になるまでに到達すると派手に燃えるんです。

目標にぶつかって散らばった炭に引火するように、なのでちょっとした爆発魔法もどきです。


そうして風出しも進化しまして、強風も可能になりました。

さすがにウインドカッターとかは無理ですけど、強い風はそこいらの石ころも吹き飛ばします。

しかも瞬間強風の場合だと、ちょっとしたノックバックに似た現象になります。


風で殴る感じですかね。


試しに狼で実験してみましたが、可哀想に飛び掛った体勢のまま吹き飛んでしまいました。

そうして何度もやっていると逃げてしまいました。

周囲の狼にそれをやると、皆最後には逃げるんです。

だけど良い練習になりました。


目指せエアマシンガンです。


飲み水も大量に出るようになったので、浴槽っぽい穴を掘ってお風呂もやれていました。

側面と底を硬い感じに拵えると、水も漏れない造りになるんです。

そうして水は着火で温めました。

浴槽の中に鉄板を敷き、それの表面に着火をするんです。

高温着火なのでいきなりブクブクとなりますが、何度もやっていると温水になってくれました。

石鹸とかは無いので『丸洗い』してから温まるだけですが、階級上昇で垢も除去してくれるようになり、それだけでも清潔が保たれていました。


ですがもう、それもしばらくはお預けです。

これからは風呂無しの生活が続くと思いますが、何とか丸洗いの水の温度の変化がやれるようになれば良いと思っています。

もちろん風の温度もですが。


さあ、行きますか、新天地へ。


歩く歩くひたすら歩く。


そうして敵が出ればエアマシンガンもどきで対応して、きついならそこに落とし穴。

あんまり持てる量に余裕が無いので撃退を主眼にしているが、それでも襲ってくるなら倒さなくてはならないようだ。

それでも少しずつは進んでいるようで、周囲の様相も少しは変化している。

そのうち前方に森が見えてきた。


そう言えばこの辺りって……左を見ると見覚えのある林がある。

どうやら北に進んだようで、逆戻りになってしまったものの、当時はそんな方角の事まで考える余裕なんて無かったからな。

そう言えば狼穴は相変わらずまだあるようだけど、その中はどうなっているのかな。


うえぇぇ、腐ってるとか想定外だよ。


後始末をしておこうと、全てを限りなく浅い穴にしておいた。

病原菌とかあるのか無いのか分からないけど、もしあった場合は死の草原とか言われたら困るからな。

それから林に向かい、以前登った木の根元にやって来る。


この木の枝は寝るのにちょうど良かったんだよな。


周囲が涼しいと言うか寒いぐらいなので、早めに休息を取ろうと思ったんだ。

まだ夕方ぐらいだけど、もうかなり肌寒い。

本当はこんな時期に移動なんてしたくないのに、塩がもっとあればと思うが、無い物は仕方が無い。


木の上の枝が交差している場所に横たわり、今度は用心で落下防止のつる草ロープを付けておく。

以前落ちなかったからと言って、今回も落ちない保障は無いからだが、寝返りさえ打たなければ落ちる事は無さそうだ。

もっとも、そんな奇跡に縋る気も無いので、用心に越した事は無い。


夕食は薄い塩味の串肉で済ませ、コートを羽織って袋を枕にしてのんびりしていると、歩いて疲れたのか眠くなってきた。

以前と違って葉もまばらな枝なのでかなり風の通りが良く、コートを作っておいて正解だなと思いつつ、眠りの中に入っていった。



翌日は晴天でした。


冬の空とは思えないカラリと晴れた空を眺め、塩味串肉を食べて移動を開始する。

コートを仕舞おうかと思ったが、身体が温まるまでは羽織っておこうとそのままにして、とりあえず移動開始だ。

そこらに落ちている小枝を拾い、背中の袋に入れていく。

ここらにはそういう物もあるが、この先にもあるとは限らない。

確かに森は見えているが、どんな場所なのかも分からないのだから。


そのうちに森の詳細が分かるようになってきたが、これはただの森じゃないようだ。

何と言うのか、何かのガレキが散乱している感じからすると、都市が崩壊してそこが森になった感じと言おうか。

中に入っていくと、外からじゃ分からない中の様子が見えてくる。

やはり、町が森になったような感じのようで、石造りの建物の残骸があちこちにある。

既に木造の建物は土に還っているようだが、石造りだけが残っているって感じだ。


つまりこれは遺跡になるぐらい古い町の名残りであり、ただの廃墟って訳じゃ無いみたいだ。

この世界に考古学の概念があるかどうかは知らないが、こういう場所の調査とかはやらないのかな。

崩れそうにない石造りの建物を選んで入ってみると、太古に使っていたと思われる道具の成れの果てが見つかる。

何に使うのかは分からないが、これなんか……手に持とうとするとバサリと崩れた。


どうやら形だけは保っていたが、相当に風化が進んでいたらしい。

これが学者なら、貴重な文化的遺産が、とか言うんだろうけど生憎とそんな趣味は無い。

あちこちで探してみるものの、使えそうな代物は見つからない。


ただ、これはという物が見つかった。


どうやらここは公衆浴場の跡地のような感じで、しかも露天風呂だったようだ。

屋根が崩れたような感じじゃなく、最初から無いみたいだからだ。

さすがにこんなにでかい浴槽に水を張ってまで入りたいとは思わないが、風呂の習慣のある者達が暮らしていた事は収穫だ。

つまりこの世界にも浴槽に湯を貯めて入る習慣があるようだからだ。


小説なんかでは蒸し風呂とか、そもそもそんな習慣すらも無いとか、様々な設定があったようだけど、こういうタイプの環境は望ましい。

ただこれが他の町にもあればの話だけど、それはそうなった時に期待するしかないだろう。

そうして中をうろうろしていると、妙な物を見つけた。


これ、何だろう?


丸い球のようなものに棒がくっ付いている感じ。

そこまで朽ちてないようで、棒は頼りないが球は多少欠けているものの丸さを保っている。

もしかしてこれって、そう思って肩をトントンと叩いてみる。


うん、多分だけどこれ、肩叩きだ。


風呂の中で肩を叩くってのも変だけど、他に考えようもないからな。

球はガラスっぽい材質で柄は石っぽい材質なので長期間でも朽ちてないんだろう。

それにしても肩叩きが1つだけポツンとあるのも変な話だな。


とりあえず、これは持っていこう。


大した重さでも無いので何とか小物入れに入ったので、何かに使えれば良いかと持っていく事にした。

他に目ぼしい物は無いみたいで、もう少し先に進んでみようと歩き出す。

相変わらず道にはガレキが散乱していて、所々に木が生えていて歩き辛い。

それでも何とか進んでいくと、また景色が変わった。


これはまた想定外。


一面の石畳はあちこち破損しているものの、さっきの場所とは比べ物にならない。

これは年代が新しいのかも知れないと思った。

第一、通路に木とか生えてないし。

木造の建物の名残りが分かるぐらいの古さのようで、石造りの建物もしっかりしている。


なのに誰も居ないんだよな。


何が原因で放棄したのかは知らないけど、これだけの規模の町を捨てるなんてもったいない事をするものだ。

今度の町は残留物がかなりあり、それもあんまり朽ちてないので調べるだけの事はある。

これは少し腰を落ち着けて調べてみるのも良いかも知れない。

そもそも南に行こうとはしているけど、特に目的がある訳じゃない。

確かに塩が欲しいけど、あの廃村でも手に入ったんだし、ここにももしかしたらあるかも知れない。

それを調べてからでも遅くないだろうし、それぐらいなら塩味串肉も保つだろう。

そういう訳で暫定5日の調査期間を設ける事にした。


5日間ここで色々と物色して塩が見つかれば住処を探して滞在継続、無ければ諦めて移動開始にする。

そう思っていたんだけど、いきなり塩のツボを発見して拍子抜ける。


無いかも知れないと覚悟していたのに、こんな想定外なら嬉しいな。


穀物の袋は無いみたいだけど、ツボには塩がかなり入っている。

ざっと数えたら8つもあり、これならば相当長く保ちそうだ。

さすがに全ては小物入れに入らないので、重い物を出して何とか入るように調整する。

背中に背負う重さが増えたものの、まだまだ余裕はある感じだ。


他にも無いかと探してみるが、塩のツボ以外では目ぼしい物は無かった。

他の建物はどうかと思い、あちこち入ってみたものの、殆ど何も無い感じ。

家具の残骸はあるものの、まともに使えそうな物は無かった。

もっとも、焚火にするには材料に事欠かないようで、家具の残骸を暖炉みたいな場所で炊く。


ああ、暖かいな。


今日はここで休もうかと、あちこちから家具の残骸を集めてくる。

そうして叩き壊してマキにして、くべていけば部屋中が暖かくなっていく。

もちろん隙間風は自由自在にそこらを走り回っているが、それでも外よりはましだ。

それでも大きな穴だけは塞いだので、かなり部屋が暖かくなった。


そうしてまた家具の残骸を叩き壊していると、チャリンと何かの音がする。

よくよく見ると金色の丸い金属が何枚か散らばっている。


これって金貨かな。


知らないおっさんの肖像画が描かれた金貨のようで、裏には花のような模様が描かれている。

他にも無いかと思い、残骸を物色してみた感じでは、どうやらヘソクリみたいなのを入れたまま忘れたような感じで、朽ちた皮製の入れ物の中に合わせて28枚見つかった。


これはそのうち使えそうだな。


またしても小物入れ行きである。

その日は結局そこで就寝となり、もはや恒例となった塩味串肉が夕食になった。

ただ、こう毎回肉だけでは拙いので、数は少ないけど手持ちのスープを消費する事にした。

熱々でツボに入れて小物入れに入れたスープは5つしかないので大事にしようとは思うものの、肉だけの食事じゃ心配なのでここいらで摂ろうと思えたんだ。


久々に味わう山菜汁はとても美味しく、野菜不足だったのを痛切に感じた。

本当は毎日食べないといけないんだろうけど、こんな石の町では雑草すらも生えてないからなぁ。

もちろん、多少はありはするが、食べられそうな草って感じじゃない。

それこそセイタカアワダチソウみたいな本当の雑草っぽくて、とてもじゃないけど食べようって気にならない。


それでもこれはこれで使い道が無い訳じゃない。

カゴまでは無理にしても、それっぽい代物は以前も拵えていて、簡易の道具入れにしていた事もある。

荒いろ過にも使えるので、腕を磨く意味もあってそれを編んでみようと思った。

そこいらに生えている雑草を集めて回り、草を編んでカゴっぽい代物を拵えていく。

最初の頃よりはコツを掴んだのか、調子良く編めているような気がする。

これに慣れたら麦藁帽子も作れそうなので、夏場に備えて意欲も沸いてくる。


確かにあちらの世界なら安価で売られているような帽子だけど、こちらの世界にあるかどうかは分からない。

あれはあれで夏の暑い盛りにはちょうど良い帽子なので、今から腕を磨いておけば麦の藁が無くてもこうして雑草では編める。

藁に似たような草で編んで乾燥させれば、それっぽくなりそうな気もする。

それに何事も経験しておいて悪い事はあるまいと、熱中して編み始める。


こういうの、好きなんだよな。


そういや昔、牛乳の紙パックでカゴとか作っていたよな。

あれは母親の趣味の手伝いだったが、もうあちらの世界には両親は居ない。

まさかフルムーンの旅行で両親共に亡くなるとか想定外だったな。


そうして天涯孤独になって3年目だったっけ。

そういや当時、もうすぐ墓参りにとか思っていたような気がする。

不義理になっちまったけど、想定外だから勘弁してくれよな。


それにしても誰が投げたんだろう、三輪車とか。


あれって殺人だろうけど、投げた奴はちゃんと罪に服したんだろうな。

頼むから二階からガキが投げたとか、そういう落ちだけは勘弁してくれよ。

罪にあたわずな年齢でも、殺した事実は変わらない。

しかも、そんな年齢だと歪んでしまうかも知れないよな。

あの辺りは都会だったから、人通りもそれなりに居たはずで、目撃者も居ただろうから騒ぎになったろう。


まあ、全ては妄想だけど、酷い事になってないといいな。


確かにあちらの世界では死んだけど、こうして今は生きているんだし、あんまり恨みとかも無いんだ。

そりゃ人にまだ会えてないから少し寂しいけど、元々は独り暮らしだったから慣れている部分もある。

今はとりあえずは生きていられるから何とかなっているけど、そのうち人の住まう町に行きたいものだ。


さて、何とか形になったし、今日はもう終わりにしよう。



昨日作ったカゴっぽい代物を日に干しておく。

つば付きなので帽子もどきとも言うが。


今日は周辺の探索を兼ねて物探しを継続する。

既に塩が見つかったので気も楽になっているので、特に焦る事も無い。

そんな事を考えていたら何かが動いた。


あれは? 動物? 何の?


狼かと思ったら別の動物のようで、そろりと見ているとどうにもブタのようなイノシシのような。

イノブタか、とか思ったけど、こんな所にそんなの居るはずもなし。

とりあえず捕らえようと、落とし穴発動です。


ブギャって鳴いたな。


もちろん穴の底には槍っぽいのが林立しており、串刺しになっておりました。

穴を戻すと、これはイノシシですね。

早速にも腹を裂いて丸洗いです。

はい、肉のブロックになりました。

それは良いんだけど、小さなブタのような生き物が……うわぁぁ、孕んでいたのかよ、ごめん、想定外だ。

そんなの知らなかったけど、これはさすがに食えないな。


穴を掘って埋めておきました。


いや本当は柔らかくて美味いとは思うけど、気分の問題です。

気を取り直して今日は焼きたての肉料理になりそうです。

皮と肉を小物入れに入れて更なる探索の開始ですが、変な建物を発見です。


丸い屋根ですが、中はどうなっているのかな。


ツボがつらつらと並んでいますが、中には何が……これは何だろう。

茶色の粉のような物がたくさん入っています。

とりあえず小物入れに入るだけ入れて、表に出して中の粉を出してみましょう。

匂いは無いようですが、これを舐めるのはどうにも勇気が湧きません。

仕方が無いので地面に少し出してみますかね。


サラサラと地面に粉を少し出してみると、茶色と言うよりは褐色って感じの粉なんだけど、これは何なんだろうな。

どうにもよく分からないので、毛皮袋に詰めて小物入れに死蔵しておきます。

もしも有用な物だったら、町とかで売れるかも知れませんし。

もっとも、こんな廃墟にある代物なので、恐らくは無いと思いますが、アイテム名だけでも知りたいものです。


狼の毛皮の毛を剃って表面を軽く炙った皮を、なめした後でニカワで袋状にした代物です。

手間だったので10枚ぐらいしか作っていませんが、ツボよりは軽いのでこれからも増やしたいと思っています。

そんな訳で詰めていくんだけど、これはまた量がやけに多いな。

こんなに量があるとは想定外だけど、これって何の粉なんだろう。


狼袋8つも使ってしまい、少し後悔していますが今更の話です。

そういや、イノシシの皮も何かに使えそうなので、それも丸洗いしておきました。

後はイノシシの牙とか骨とかも、使えそうなので仮宿に持ち帰りましょうか。


さて、今日はもう探索は止めににして、骨細工といきます。


暖炉に火を入れて暖を取りながら、鍋で骨を煮ます。

骨髄を抜かないと細工がやれないので、ついでにニカワも作ってしまいましょう。


ああ、臭いから外でやろうかな。


鍋が熱いのでそのまま小物入れに入れて、外で焚き火の準備をして鍋を載せてひたすら炊きます。

この鍋は作業用なので、これで食べ物を炊いたりはしません。

これはこのまま置いておくとして、かつて作っておいた材料で細工をやりましょうか。

あんまり材料は無いんだけど、畳針ぐらいなら作れそうなので、包丁で骨を削っていきます。


穴を開けるのが大変そうに思うでしょうが、そこはチート穴掘りスキルです。

極小の穴を貫通ギリギリに開けて、そうして貫通させて磨きます。

本当に見事に進化してくれました。


磨くのはつる草の細い代物を通して両足の指に括ってピンと張り、針を往復させるだけで、少しずつ削れていきます。

さすがにちゃんとしたヤスリは無いのですが、目の細かな砂を木のヘラにニカワでくっ付けたもどきを使います。

強くこすると取れてしまう代物ですが、比較的柔らかい物を磨くぐらいはやれています。

畳針みたいなでかい針ですが、皮を縫うにはこれぐらいじゃないと折れてしまいます。

縫うと言っても穴を開けてつる草の紐を通すだけの用途ですが、これだと穴が小さくてもやれそうなのです。

包丁サックの継ぎ目をこれで縫ってみます。


金属片で作ったポンチもどきで穴を開け、つる草紐を通した骨針で縫っていきます。

外れかけていたので心配していたのですが、これで丈夫になりそうです。

それが終わったらコートの修正もしましょうか。


木の枝を3センチぐらいに切って中央に穴を開けた、ボタンもどきがやっと使えます。

周囲はツルツルにしたのですが、今までは紐を通すのが大変で、そのうち針を作ったらと思っていた代物でした。

細い骨針も作り、細いつる紐を通してコートに取り付けていきます。

片方にはつる紐を輪っかにしたのを取り付けてあり、もう片方にボタンもどきを付けるんです。

短い木の枝にまずは通して、そして結んでニカワで緩み止めをします。

そういうのをいくつか拵えて、いよいよ取り付けていきましょう。

あんまり多いと大変なので、4つにしてみました。


さあて、試してみます。


ちょっと慣れないと難しそうだけど、何となくボタンって感じです。

強度が心配なので無理は出来ないけど、これで前が閉じるのでもっと寒くても耐えられそうです。

そこら辺を歩いてみると、以前とは違って風が入り込みません。


成功ですが、こうなると靴も欲しくなりました。


今履いている運動靴はまだまだ使えますが、そのうち壊れてしまうでしょう。

もちろんニカワを使えば修繕も可能そうですが、何時までも使えるとは限りません。

なのでイノシシの皮で靴に挑戦してみます。


足型など無いので自分の足を使います。


縫い代を考えて包丁でザックリと切った後、ポンチもどきで穴を開けていきます。

そうして穴を合わせてニカワで貼り付けて、穴はリベットで止めてしまいましょう。


手作りリベットですが、材料は1円玉です。


ハンマーを叩き台に代用して、槍の穂先ノミで叩きます。

アルミなのですぐに潰れて、あたかもリベットのように固定できました。

底は木で形を拵えて、削って調整していきます。

対称な底が出来たら皮だけの靴と底をニカワで貼り付けて、釘もどきで止めていきます。


やはり鍛冶屋っぽいあそこは便利でした。


ここには暖炉はあっても炉が無いので大っぴらにはやれませんが、それでも作っておいた物があるうちはこれでやっていきましょう。

釘を打つ時には半分だけ穴を開けるのがコツのようで、以前いきなり叩いたら割れてしまいました。

それはともかく、何となく靴っぽくなってきましたが、今度は狼の毛皮で中敷きを作りましょう。

時々洗わないと臭くなるので、取り外しが出来るようにしていますが、靴擦れが心配です。

もっともこれは代用品なので、ここで動き回るぐらいが関の山でしょう。

さすがにこれで戦闘をしようとは思えませんし。


履き心地は余り良くはないですが、裸足よりは全然ましです。

運動靴は小物入れに入れておき、これで動く事にしましょう。

しばらくうろうろしてみましたが、すぐに壊れる事も無いようで、もっと慣れたらもう少しまともな靴も作れそうで希望が湧いてきます。


でもこれ、音が煩いな。


カランコロンとまるで下駄のようだけど、靴だからね。

完成したので隙間にニカワを流し込んで隙間対策です。

釘を叩くのに隙間にポンチもどきを差し込んで叩いたりしたので、貼り付けておかないと泥とか中に入りそうだ。


それはともかく、今日はもう寝ます。



昨日は靴作りで1日が終わってしまったので、今日はまた探索の続きです。

イノシシ焼肉を食べた後、重たい物を置いて小物入れを軽くして、まだ見ていない方向の廃屋の探索をします。

褐色の粉袋や塩のツボは出しておき、道具類も出しておきます。

またぞろ何か発見しても困りますし。


入り口にはカギなどありませんので、そこいらの石畳を剥がして戸の代わりに立てています。

本当にもう階級が上がったせいなのか、やたらと怪力になっている気がします。

もっとも、両手で持ち上がるのでそのまま小物入れに入れて、入り口で出すだけですが。


探索を開始してすぐにまた何か見つけました。

今度は何かの道具かと思えば、またぞろ肩叩きのような物でしたが見つけました。

これが本当にそうなのかは実は謎ですが、とりあえずもらっておきます。

他にも半円形のガラスっぽい板とか、ひし形の石の板とか、全く使い道が分かりませんが、とりあえず持ち帰ります。

そんなこんなしているうちに、ボーリングの球のような物を見つけました。

大きさはそっくりだけど、穴は開いていません。


これ何だろうな。


そこまで重くないのでもらっておくか。

そのうち手動式ボーリングとかやっても良いし。

穴を開けるのはその時で良いか。

どのみち塩水焼きの串肉もかなり減っているし、少しぐらい荷物が増えても問題無いだろう。


階級 32

状態 正常

体力 410

魔力 410

技能 生活魔法・穴掘り


うん、かなり上がったし、大丈夫だよね。



木の切り方の新方式を開発した。


とは言うものの、木の直径ギリギリの穴を開けるだけだ。

そうすれば軽く片方を叩けばその方向に倒れていくんだ。

5センチ残しぐらいで穴を開け、ハンマーで片方の薄いところを叩く。

そうするとバキバキっとなって倒れていく。


うん、簡単だな。


ただこれ、貫通はやはりやれないみたいで、薄皮1枚残しぐらいの穴にするのが精一杯みたいだ。

つまり、階級が無茶苦茶上がったとしても、星の反対側に穴が開かないって事になるね。

まあそんな事はあり得ないんだけど。


ともかく木を切り倒して何がしたいかと言うと、直径50センチで長さが50センチの丸太が欲しかったんだ。

これなら簡単に燃え尽きないだろうから、高温着火でも余裕があると思っての話。


投げたぁぁぁ……『高温着火』……よしよし、良い感じ。


岩に当たって爆散してしまいましたが、中々の威力です。

まるで花火を間近で見た感じで音もそれっぽいです。

それでも重さがあるので持ち運ぶとしても5個までかな。


獲物を探してうろうろしていたら、熊みたいなのを発見しました。

すかさず穴を開けて落とし込み、丸太を自然落下で『高温着火』します。


ドォォォン……


まるで大砲のような音がしました。

哀れ熊さんは即死です。

まさかそこまでの威力があるとは想定外でした。

折角の毛皮がチリチリになっています。

仕方が無いので毛を剃って使うとしましょうか。


早速、穴を浅くして処理開始です。


さすがにこれは小物入れには入らないので、すすけた毛を剃り落として捌いて肉と皮を取りましょう。

本物の熊かどうかは分からないので、熊の手は放置しておきます。


ザックリと皮の処理をした後は、丸洗いで汚れを落とします。

そうして巻いて巻いて肩に担ぎ、肉は小物入れに入れましょう。

後の内臓やらは穴に捨てますが、これが熊なら肝臓とかが薬になるんでしょうね。


仮宿に戻って皮をなめします。


特別な薬品とか無いのでここは『丸洗い』に活躍してもらいましょう。

余分な脂肪分が洗い流され、綺麗な皮になりました。

ここからが問題で、腐ると困るので燻製にします。

と言っても囲炉裏の上に干しておくだけなので簡単です。


確かにここには囲炉裏はありませんが、暖炉の煙突の中で燻します。

どのみちススなどはまたぞろ『丸洗い』で洗い流せば良いので、気兼ねなく燻製にしてしまいましょう。

油断して燃やさないように気を付けて、火との距離を考えて設置します。

後は料理をやったり焚火をやれば、そのうち完成します。


なんかさ、お茶でなめしって聞いた事があるんだよ。


だけどさ、お茶がそもそも無いからさ、燻製にしてみようと思ったんだ。

干し肉も燻製にすると腐りにくくなるからさ、皮も同様じゃないかと思ってやってみたら、何とかなっただけなんだ。

だから見てくれは最悪だけど、使えれば良いのよ、使えれば。


でもここまで酷くなるのは想定外です。



今日は洗濯の日です。


寒いので部屋の中でやりましょう。

とは言うものの、部屋の中も石畳なので、そこに穴を開けます。

早い話が浴槽ですが、そこに入って『丸洗い』をします。

部屋は暖炉で暖かくしてありますので、水を被ってもまだ耐えられます。

そうして風出しですが、暖炉のすぐ近くから発生させると、温風になるんですね。

この方式で温風ヒーターのような事になり、風邪を引かずに清潔になるという方法です。


ただ、これ、蒸れるんだよな。


なのでここは素っ裸になってしまいましょう。

そうして身体だけを先に洗い、服を別で洗うのです。

裸族みたいですが、誰も居ないので問題はありません。


そのまま洗濯をして、干して風を当ててとやっていますが、相変わらず裸族のままです。

ああ、この開放感は癖になりそうです。

どのみち食事は塩水串肉なので、食べてまた洗濯の続きです。

下着と普段着と靴下と、運動靴に道具類もこの際、洗っておきましょう。

そんなこんなで夕方になったので、今日は早めの就寝です。

またぞろ塩水串肉を食べてと。


今日はこのまま寝てみようかな。


誰も居ないかこそやれる、裸族の生活ってか。

ああ、さわさわして、くすぐったくて寝られるかよっ。


くそっ、想定外だ。


服着て寝よう、いつものように。


おやすみなさい。



起きるのが辛くて昼まで寝てしまいました。


裸族の生活とかやっていたので、風邪気味なのかも知れません。

それでも昼過ぎには起きれるようになったので、遅めの昼食の後は道具整理をします。

今日は大事を取って外出は控え、家の中でのんびり過ごします。

それにしても、いつまでもここに居る訳にもいきませんが、まだまだ外は寒いので動くのが嫌です。

獲物もそれなりに獲れるので冬篭りも可能ですが、石の家はどうにも落ち着きません。


それに、やっぱり寂しいです。


なので少し暖かくなったらすぐに移動出来るように、荷物の整理をしておくのです。

謎の褐色の粉の狼袋ははとりあえず小物入れに死蔵するとして、塩のツボから狼皮に移して入れておきます。

ツボもあちら産のような物じゃないのでやたら重いんです。

後は廃村から持って来た口の欠けたツボは廃棄する事にします。

ここには欠けてないツボがあったので、これを利用する事にします。

やはり重いですが、最低1つか2つは残しておかないと、何で必要になるか分かりません。


比較的大きなツボを1つと、小さなツボを2つ持って行く事にします。

大きなツボに塩を纏めて入れて、小さなツボに小分けします。

8つのツボの塩はかなりの量なので、でかいツボに満載になった後、小さなツボにも満載になってまだ3個残っています。

こうなれば後は残った狼皮を使うしかありません。

それで何とか全部収まりましたが、またぞろ袋を作らないと必要な時に困ります。


あの熊皮、袋にしようかな。



燻製になった熊皮をスリスリして柔らかくします。

以前は断念したリュックに挑戦するのです。

今回はランドセルを参考にして、四方を1円玉製リベットで固定してしまいましょう。

消費税の関係で十数枚あった1円玉ですが、全部リベットにしてしまったのでもうありません。

その代わり100本ぐらいの数になったんだけど、とても小さいんです。

穴はギリギリ通る大きさにして、無理に通して叩いて固定します。


実は穂先ノミに柄を付けまして、細工トンカチ風にしてあります。

あんまり派手に叩こうとすると、柄からすっぽ抜けるので注意が必要ですが。

またしてもハンマーを叩き台にして、細工トンカチでリベットを叩いて固定してしまいましょう。

この時、皮革が型崩れをしないように、中に四角い箱を入れておくと良いようです。

そんな物はもちろんありませんので、丸太から形成した木の板です。

重いですが、これでも型崩れ防止にはなるので、このまま拵えていきましょう。


トントンカンカンと、熱中していたら完成していました。


四方のリベットが痛々しいですが、ひとまずはそれっぽい形になりました。

もちろん繋ぎ目にはニカワを流してあります。

フタは長いままの皮革でランドセル方式ですが、なんせ留め金が無いので工夫が必要です。

フタに長方形の穴を開けまして、本体には『Ω』こんな代物を取り付けます。

後は『T』の形の物を拵えまして、上から差すんです。

飛び跳ねたりすると外れるかも知れませんが、移動するだけなら問題無いはずです。

後は長方形の穴の保護に、かつて壊れた鍋から切り取った金属片を『U』に曲げた代物を使って叩いて固定してしまいましょう。

1センチぐらいの大きさのをそれなりに作っていますので、何個か使えばいびつながらも保護になりました。


さて、背負い紐にいきましょうか。


ランドセルのように固定したほうが楽そうなので、この際それを真似てみます。

購入して僅か1ヶ月でベルトのバックルが壊れたのは想定外ですが、この際それを流用してしまいましょう。

ベルトを半分に切って、芯材にします。


使い~だしたら~バキリと~バックルが~割れて~やむなく~♪


ちょっと懐かしい歌の替え歌をやってみました。

誰も居ないからこそやれる事ですが、誰かが居ると味噌が腐ると叱られます。


それはともかく、今はつる紐をベルト代わりにしています。


さてと、皮革を芯材にぐるぐると巻いていきましょう。

もちろん金物は全て外して材料入れに入れてあります。

ある程度巻いたら穴を開けて何ヶ所かリベットで止めてしまいましょう。

これに使うのは5円玉リベットです。

キノコみたいに成型したので、まるで本物みたいです。

ちゃんと中央に穴を開けて、細い丸棒を叩けば反対側が開くようになっています。

渾身の作な代わりに、僅か10個で精根尽き果てましたが。


実はそんなに苦労して作ったは良いが、使い道が無くて死蔵していた品なので、ここで使ってしまいます。

片方5個のうち中間にワッシャを両面にかまして1個使い、両側に2つずつ使います。

巻いた皮革が外れないようにニカワで接着して、鍋材から拵えた2つ穴ワッシャで本体と背負い紐を挟んで止めてしまいましょう。

まずはセンターにリベットを打った後、上下を止めれば仕上がりです。


もう鍋材の金属片も残り少なくなりましたが、これからはそこまでの工作も無いだろうし、特に問題も無いとは思いますが。

ただ、小銭がピンチなので、もうリベット作戦も怪しいです。

残りは100円玉が2枚と50円玉が1枚と10円玉が6枚、これだけです。

そうして精緻で美麗な異世界の紙幣は、ずっと死蔵のままです。


と言っても千円札が2枚しかありませんが。


コンビニとか、デビットカードで楽々支払いだったし、リアルマネーは自販機用ぐらいだったなぁ。

もちろん自販機でもカードが使えたりもしたんだけど、小銭のほうが手軽だったからな。

あれがせめてコンビニの後なら、何か品を持って来れたかも知れないけど、まあそんな事を言っても仕方が無いよな。

それはともかく、ランドセルもどきが完成したので、早速にも色々と入れてみましょう。


おっとその前に底板を入れないと。


底板の四方に穴を開け、でかいモクネジみたいなのを焼いて熱してねじ込みます。

ネジ溝が出来たら他の穴も同様にやった後、木の枝を同じサイズで4本、長さを10センチぐらいで揃えて切ります。

この時、穴の直径の倍ぐらいの木の枝を使い、半分ぐらいまでで木の皮を剥いて削っていきます。

穴にギリギリ入るぐらいに削ったら、底板にニカワを塗ってリュックの底に貼り付けます。


リュックを裏返して穴の位置に穴を開け、木の枝にもニカワを付けてねじ込みます。

焼き溝はニカワの為のものであり、外れ止めになればと思っての事です。

そうして4つ共ねじ込んだら床に置いてみます。

ガタ付きが無いかを確かめて、ガタ付くようなら削って調整します。

後は木口に丸く切った皮をニカワで貼り付けたら完成です。

丸い皮はあんまり意味がありませんが、それでも濡れた地面に置いてもリュックの底が濡れないようにはなりました。


最後に持ち手を作ります。


と言っても単なる皮紐を『U』の形に貼り付けるだけなので簡単です。

用心でリベットは打ちますが、あんまり使う予定では無いのです。


まあ、飾りですかね。


完成したので屋内に置いておきましょう。

そのうちニカワが完全に乾燥したら、荷物を入れようと思います。

さて後はご飯を食べて寝るだけです。


実はニカワを塗るのに使っているヘラは、かつてはクレカと呼ばれていた物でした。

あれは柔軟性があってとても塗り易いです。

さてと、今日も充実していましたね。


おやすみなさい。



朝起きて爪が伸びているのに気付き、石床でまた削ります。

爪切りとか無いのでこうするしかないのですが、何とかしたいものです。


これじゃ猫だよ。


朝食の後、周囲の探索中に面白い物を見つけました。

段々になった石の板です。

これはもしかして洗濯板なのかも知れません。

石の洗濯板と言うのも変ですが、まさか囚人の拷問用とかじゃないですよね。


段々の上に正座になっての石抱きは東洋の専売特許と聞きましたが、異世界なのでもしかしたらあるかも知れません。

気持ち悪いので持ち帰るのは止めました。

どのみち洗濯は丸洗いするだけですし、使わないですから。


また肩叩きを発見。


どうにもおかしいですね。

もしかしたら別の用途があるのかも知れません。

決まって浴室のようなところで見つかるので、もしかするとお風呂用品なのかな?


あーあー、本日は晴天なり。


マイクじゃないようです。

あ、魔力を注いでいませんでしたね。

むんっ……うわぁぁぁ、お湯が出たよ。


これって魔法のシャワーかよ。


それにしても朗報です。

まさかこんな品があるとは思いもしませんでした。

今までに3つありますので、もし壊れても心配ありません。

そもそも水晶球みたいなのと石のような持ち手なので壊れそうにありませんし、そもそもこんな遺跡のようなところで見つかったのに、魔力を注いだら使えるんですから丈夫なのでしょう。


お風呂が楽しみになりました。


折角なので早速お風呂タイムといきますか。

仮宿に戻って裸族となって浴槽の真ん中で魔力充填。

ああ、これは良いですね。

打たせ湯っぽい感じで気持ちが良いです。

ただこれ、魔力を止めるとお湯も止まるので、ひたすら流し込まないといけないのが難点です。

なので恐らくは従者とかに持たせて、使わせていたのでは無いかと思います。

どう考えても庶民が使うような道具じゃありませんし。


いくら何でもそんなに安い代物なら、もっとあちこちの家に転がっていても良さそうですから。

そもそも、木造が庶民で石造りの家が貴族か上流階級だったんじゃないかと思います。

朽ちた木造の敷地面積と石造りとを比べての結論ですが、恐らくは合っていると思います。

それにしても、こんなに便利な代物なのに、ここを放棄する時に持って行かなかったんですね。


急ぎだったんでしょうかね。



お風呂で気持ち良くなったので昨日はそのまま寝てしまいました。


なので今日は動きます。


探索もかなり進みまして、残りは僅かです。

この辺りは敷地面積も広いので、王族かその辺りじゃないかと思います。

誰も居ないので無断侵入にはならないと思いますが、どうにも気分は泥棒さんです。

まるで昔のゲームの勇者のように、中を色々物色しています。


家具も多少は朽ちていますが、上等な品なのかそこまでの事も無いようです。

長持ちする家具とか元の価格はかなり高いと思いますが、いくらお金があるからと言って、そのまま捨てて行くのは贅沢ですね。


お、手頃な入れ物を発見。


防腐剤でも塗られているのか、殆ど朽ちてない入れ物です。

持ち上げると何か音がしますが、何が入っているのでしょうか。


やりました、お宝です。


指輪が4個に手鏡が2枚で、櫛が1本、それとペンダントが3本あります。

これらはそのまま皮袋に入れて小物入れ行きですね。

あちらの世界の品なら問題ありませんが、こちらの世界では魔道具の可能性があるからです。

呪いの指輪とか洒落にならないので、ちゃんと調べてからです。


人の居る街に行けばその手の職の人も居るだろうし、以前拾った金貨を使えば鑑定も可能だと思うし。

そうしないと何かのトラブルがあっても誰にも助けを求められない状態だし。

異世界人に会わないうちにゲームオーバーもつまらないからな。


どうにもリポーター風にやって来たが、いい加減飽きたな。

丁寧口調でのリポートも最初は良かったが、段々とつまらなくなってきた。

こういうのは相手が居ないと空しいだけだな。


さてと、この入れ物も持って行くか。


材質は木のようだが、普通の木じゃないだろ。

こんな遺跡みたいな場所で木の容器とか、何か特殊な塗料でも使っているか、特別な材質って事だろう。

まあいいや、使えそうだからもらっていくぞ。


2段引き出し木箱確保だ。


早速これに細かい材料を入れておくか。

1円玉リベットの残りを入れて、この際だから千円札と100円玉と50円玉も入れておくか。

その代わり、小銭入れには金貨を5枚入れて、残りはこの下の段に入れておくか。

ああ、あと少しあるワッシャと2穴ワッシャと4穴ワッシャも入れておこう。

それにしても、リベットに代わる代物も考えないとな。


もっとも、あれはニカワ接着用の補助みたいなものだし、完全固定になったらいけるとは思うんだが。

なんせニカワもどきって感じだから、本物よりも接着力が弱いと思うんだよな。


だからちょっと心配でもある。


材料がふんだんにあるならボルトナットで止めたいところだ。

さてと、他の部屋も見て回ろうか。


うっ、これは、どうしようかな。


欲しい物があるんだけど、これを小物入れに入れてしまうと、色々な物が入らなくなるからな。

かと言って担いだまま移動するってのも少し嫌だし。

とりあえずは仮宿に担いでいくか。


今日からベッドです。

毛皮を敷いておこう。

うん、やっぱりこれだな。


けどなぁ、謎素材のベッドとか持って行けないよな。

木材っぽいのに朽ちてない、本当に謎なベッドだけに、持って行きたいんだけどな。


ベッド込みでどれぐらい入るかのテストをした結果、死蔵品の褐色の粉と塩は何とか納まるけど、後は2段引き出しの木箱を入れたらもう殆ど入らない。

特に食料品が入らないのがネックだけど、これは何としても持って行きたいんだよな。


仕方が無い、レベリングするか。



森の深いほうに入っていくと、何かしらの気配を感じるようになる。

それのなるべく大きなほうへと移動していく。

本当は食いもしないのに狩りたくもないが、塩の串肉も少なくなったし、あれも拵えておこうか。


さあ来い獲物。


実はどれぐらい入るかの重量の件だけど、大体の目安が付いたんだ。

まずは筋力係数だけど、オレの体重が65キロぐらいだったので、吊り合うシーソーみたいなのを拵えて、体重と同じ重さの物を拵えたんだ。

そうしてそれと同じ物をいくつか拵えて、まとめてどれぐらい持てるかってのを階級30の頃にやったんだ。

そうしたところがちょうど3セットがギリでさ、だから3倍になっているのかなと思ったんだ。

かつてのオレは米の60キロの袋がやっとだったから。


階級30で3倍って事はさ、階級が40になったら4倍になるんじゃないかと思う訳よ。

現在が36だから、これを50まで上げれば予定収納量になると思うので、ここまでレベリングをしようと思う。

そうして獲物は解体して、とりあえず毛皮と肉以外は放棄の予定だ。

色々に使えるのは分かるけど、今はそんな余裕が無い。

そういうのは階級が上がってから考えるとして、今は移動に向けた準備を優先するつもりだ。

確かにまだまだ寒いが、雪までの事も無い。

だったら狩れるだけ狩って素材にしまくって、それらを全部入れられる容量にするのさ。


イノシシ発見と同時に穴で墜落死。

浅くしてとりあえず小物入れに収納する。

とりあえず重い物は仮宿に置いてあるから、今回は獲物をそのまま入れて移動の予定だ。


熊発見と同時に穴で墜落死。

槍底だと手間要らずで楽でいい。


こりゃ何だ。


でかいなこいつは。

大穴を開けて墜落……死なないぞ。

深さ20メートルはあると言うのに、中で騒いでやがる。


一つ目小僧のでかい奴だけど、あれ何て言ったかな。

サイクロン、トロプス?  いや、違うな。

なんかこう、音は似ているんだけど、ちょっと収まりが悪いような。


ええい、喧しい。


丸太爆弾食らえ……『高温着火』……ドオオオン……

なんて名だったかなぁ。

サイクル、トロンボーン? 少し離れたような気がするな。

サイコロ、トロント?

サイクツ、トロケル?


何かさ、2つの単語を合わせたような名前だったんだ。

サイクロン、ブス……ああ、サイクロプスだ。


サイクとロプスだった。


サイクは細工でロプスってのはある小説の登場人物でさ、細工物を得意とする職人なんだ。

だから細工ロプス工房ってのがあってさ、サイクロプスの名前を見た時に、細工ロプスで記憶されちまったんだな。

それはさておき、まだ死なないのかよ。


しぶとい奴だな、こいつは。


ただでさえ攻撃手段が限られているってのに、こんなしつこいとか想定外だぞ。

よし、こうなったらそこらの石を投げて、当たる寸前に高温着火を使ってやろう。


よしよし、火傷したな。


ドンドン追加してやるから、とっとと死んでくれ。



結局、あれから石は30個ぐらい投げて、ようやく死んだんだ。

あんな敵とか、もう倒すの嫌だぞ。

でもその恩恵はでかかった。


現在階級46になっている。


1匹倒すだけで階級が10も上がった事になるな。

これは準備が必要だな。


そうしてひとまずは仮宿に戻り、敷石から投げられるサイズの石の球を拵えていく。

一通り出来たら細い穴を開けるんだけど、中が広いタイプの穴にするんだ。

そうして獣の油を流し込んで、埋め戻しの要領で注ぎ口を塞ぐ。

僅かなくぼみが残るのは仕方が無いけど、これぐらいなら大丈夫だろう。

穴の中はかなりギリギリに広げたから、投げて当たれば割れるはずだ。


本当にチート穴掘りさまさまだな。


高温着火で火山弾みたいになったところで衝撃で割れて中の獣脂が湧いて出て、それが高温で一気に燃えるとなると、ちょっとした焼夷弾っぽくなるんだけど、これって早い話が火炎瓶の石版なんだよな。

火炎瓶は投げ方にコツが要るけど、丸石内在獣脂投擲発火方式なら、コツとかよりも高温着火のタイミングだけになる。

これはもう慣れたものなので、目視が可能なら失敗は殆ど無い。

そんな訳で調子に乗って丸一日造りまくってました。


幸いにも狩りの途中だったから獣脂は大量にあったんだ。


 

投擲着火焼夷弾が正式名称に決まりました。

それを調子に乗って100個も造りました。

多すぎるので半分ぐらいは試験で消費の予定だ。


ソフトボールクラスの球を投げると同時に着火して、火山弾状態で対象に衝突して、割れて獣脂が溢れて点火されて、対象は油を被った状態でそのまま燃えるって感じになるはずだ。

その場合、球の威力が高ければ、粉砕した石材がそのまま高温の散弾にもなるから、油での攻撃と高熱の散弾での攻撃の複合って事になる。


あくまでも想像なんだけど、狼の群れの中心に投げてやると、周囲の狼まとめて倒せそうな気がするんだよ。

高温高圧の獣脂がいきなり解き放たれて、しかも発火点に到達して広がりながら燃えるんだからさ。

それに高温の石の散弾が加わるんだから、範囲攻撃も可能なはずだ。


エアゾール爆弾に近いイメージなんだけど、果たしてどうかな。

そうして改めてサイクロプスが居た辺りまで遠征する。

やっぱり人間、目標が出来るとモチベーションが違うよな。

あのしぶとさは想定外だったけど、そのお陰でこちらも想定外な威力の攻撃手段を得た。


さあ、ドンドン来やがれよ。


あの遺跡から南東の方角にひたすら歩いていくのだが、中々出会わない。

あいつだけ野良だった可能性もあるけど、出来ればたくさん居て欲しいものだ。

あれに対してはもう、素材とか言わないからさ、その命が欲しいんだ。


つまりは経験値がさ。


おや、何か動いたが、そこに居るのか?

2匹か、よーし、まずは腰の辺りまで埋まれよ。


唐突な落とし穴で素直に落ちるそいつらに対し、全力での投擲と高温着火。

可能な限りの高温をイメージし、ピッチャーみたいなモーションで全力で投げる。

手から放たれた石の球は猛烈な速度で対象に向かって宙を飛び、そこに点火されて火山弾のように突進する。

さすがに速度が高いので認識も遅れ、そいつの顔にまともに命中した。

その途端、猛烈な爆発が起こる。


さすがにそれは想定外だぞ。


まさか1発で首が消えてなくなるとかよ。

おまけに爆弾が近くで爆発したみたいに衝撃波が走り、耳がキーンってなっちまったぞ。

血の噴水がにわかに出現し、傍らの存在は呆然としている様子。

再度の全力投擲でそいつも同様となり、階級は一気に62にまで到達した。


参ったな、まだ2発しか使ってないんだぞ。


なのにもう目標階級をオーバーしちまうとかさ、残りの98発の使い道に困るな。

それからもそこら中を探索した結果、18匹の生存を確認後、全てを殲滅しておきました。

いやはや、とんでもない威力だったが、これはうっかりと外前には出せないぞ。

禁術ならぬ禁アイテムとか言われそうだ。


頑張って精製したんだけどなぁ。


もっとも、それで威力が上がっちまったのかも知れないけど。

圧搾機みたいな道具を拵えて、ズボンの裾をちょいと短くして、その布地をフィルターにして、

全力でてこの原理で圧力を掛けて、それで何とかトロトロの油になったんだ。

だから流し込むのが楽になって、ついつい100個と。


重いけど残り80発は死蔵かな。


容量を増やす為の試みが、余分な荷物を抱える羽目になるのも想定外だけど、こればっかりはうっかり捨てる訳にもいかない。

確かに地面に埋めれば安全だけど、こんなものがもし人目に触れたらその使用法は無理でも投げて火矢で着火ぐらいなら思い付くかも知れない。

そんな新たな発想はいずれ進化して、ツボに油を入れての火炎ツボになるかも知れないんだ。

凄惨な戦場の発端になるとか、絶対に嫌だから外には漏らさないぞ。

もっとも、そういう発想が既にあるなら、そいつに便乗して思い付いたとか言えば良いから楽なんだが。


それにしても階級が……増えたものだな。


階級 84

状態 正常

体力 930

魔力 930

技能 生活魔法・穴掘り


まさか生活魔法で最終兵器が出来るとは、全く当時は考えもしなかったな。

だけどこれで容量の心配は無くなったかな。

いくらあれが重いと言っても、中が中空で獣脂が入っているだけだから思ったよりは軽いしよ。

今の筋力じゃ握り潰さないように気を付けないといけないぐらい、薄い石の球だから比重は軽い。

それにしても、ちょっと上がり過ぎたような気もするが、まあ、多いに越した事は無いのかな。


仮宿に戻って久し振りの風呂に入ろう。


なんせ狩り終わるまで狩っていた獲物を解体して肉を焼いて食っていたからな。

寝る時には地面の下で寝ていたし、そこでトイレも済ませたから何とかやれたが、本当に穴掘りスキルにして良かったよ。

最終的には仮のアジトみたいな感じになってさ、厨房もどきはあるわ、トイレっぽい穴もあるわでさ、このままここで暮らせそうとか思っていたものだ。

ちゃんと崩れないように、鍾乳洞にある上下が繋がった石の柱みたいなのを残して穴を掘る感じのイメージでやったからさ。

だから中も鍾乳洞みたいな感じで硬くしたから崩れる心配は無かったんだ。

あれ、誰かが発見したら太古の遺跡とか思われたりして。


おお、入り口の石版のなんと軽い事。

両手で掴んでヒョイと除けて入れるようになった。


ただいまと、言っても返事は 返らねど、ついしてしまうは、寂しさゆえか 字余り。



ううむ、いくら素材は要らないと言ってもだな。

小説ではよくある、魔石っぽいのを発見したら、やっぱり回収しちまうよな。

そんな訳で都合21個の魔石もどきがここにある。


動物には無かったからどうかと思っていたが、となるとあれは魔物とか言うカテゴリーになるのかな。

そんなばかでかい図体の屍骸は、全部土の下に埋めておきました。

さすがにいくらでかいとは言え、人型生命体を食おうとは思わないよ。


そんな事よりもだ。


これ、何かに使えないかなとも思うんだが、こういうのは売ればかなりの価格になるとか言うよな。

もっとも、表でうっかり売った日には、大騒ぎになりそうなものだけどな。

だから売り方さえ巧くやれば、当座の生活費にはなるだろうけど、それを言うなら金貨28枚もあるからな。

あれがどれぐらいの価値かは知らないが、最低でも28万円ぐらいにはなると思うんだが。

だけどそれなら物価次第では1月分の生活費になっちまう。

となると、こういう魔石らしき代物を溜めておいて、必要で売るって事も必要になる。

さすがにいつまでも野人で居たいとは思わないよ。


やっぱり文化的な生活には憧れるしよ。


それからも旅の準備は順調に進んでいった。

野営を地下でやれる見通しが立ったので、荷車の小さな物を拵えて運んでも構わないと思ったからだ。

さすがにベッドを小物入れには入れたくないので、あれは荷車もどきで運ぼうと思う。


そう思っていたのに、どういう訳だがそれに屋根が付いたり引き手が付いたり車が付いたりして、気付いたら馬なし馬車のような代物になっていた。

確かに引く力は余っているぐらいだけど、どうしてベッドが馬車になったんだろう。

だけどこれなら確かに運ぶのが楽だし、地下で寝るにしても転がしておけば問題無いし。


命名・寝台馬車……またつまらぬ物を拵えてしまった。



それにしても、寝台馬車を作っているうちに、すっかり寒さも和らいだな。

ざっと3ヶ月ぐらいは作っていたものなぁ。

なんせいきなり車輪とか無理なので、最初は石畳の石を丸くして車にしようかと思ったけど、さすがにそれは地面に埋もれるから断念したんだ。

そうなると材料はやはり周囲にある木々となる。


階級のせいか生活魔法がまた進化していて、とっても便利になっていた。

まずは着火は目視の範囲までの遠距離高温着火を可能とするから、まるで攻撃魔法っぽいんだ。

対象の直下で高温着火がやれるって事だから、いきなり対象の足が蒸発するんだ。


そんなの誰でも動けなくなるよな。


だから狩りがとても楽になってさ、穴掘りに頼らなくても狩れるようになったんだ。

そうして次は飲み水だけど妙に味が良くなってさ、飲むと元気になるような感じがするんだ。

あれって聖水とかになってないだろうな。

そして量も自由自在でさ、浴槽とかすぐに貯まるんだ。

その風呂に入ると疲れが取れて熟睡出来るから、やっぱり普通の水じゃないんだろうな。


そうして丸洗いがまた面白い進化をしたんだ。


身体の一部分を選んで丸洗い出来るようになってさ、今じゃウォシュレット状態ですよ。

かと思えば指定範囲の物質を丸洗いするイメージで、局所的な嵐みたいなのまでやれるようになったんだ。

つまりだね、狩りの獲物をいきなり丸洗いすると、そいつだけ嵐の中って状態になる訳ですよ。

それを強烈なイメージでやると、初日の自分を更に派手にしたように、毛も何もかも抜けて流されて、毛無し熊みたいになったりしてさ。


あれはちょっと可哀想だったな。


もっとも、革にするなら毛が邪魔なので、袋にするにはその狩り方のほうが良かったんだけどね。

もうそうなったら攻撃魔法と変わらない事になりはするけど、生活には戦いも含まれているって思うからさ、生活魔法と言っても看板に偽りは無いって思うんだ。


そうして風出しはご想像の通り。


形状、密度、強度の設定で、遂に来ましたウィンドカッターです。

3要素を構成する風の動きの制御なので本当の刃じゃないけども、結果的には物質の切断になるからそう名付けただけだ。

これのお陰で木を切るのが楽になり、木材加工の幅が広がったんだ。

そうじゃなければ木の板とか、ノコギリもどきじゃ作れないもんな。

そうして小物入れは以前の数倍の重さの物が入るようになっていました。


なるべく硬い木を車軸にして、木の板を組み合わせて車輪にして、車軸と固定したんです。

そうしないとさすがに木製の車軸じゃすぐに接触面が削れて中心がずれ、しまいには車軸がちびて折れるからさ。

その代わりに車軸全体に加重を分散させるように上部の構造を工夫して、獣脂を徹底的に漉した代物の水分を排除したグリスもどきを塗って抵抗を下げたんだ。

だから時々塗り足さないといけないけど、あるのと無いのとでは全く違うから、これは必要な事だな。


もっとも、横倒しにして塗るだけなので、そう大した手間でも無いから問題は無いんだ。

ただ、ベッドは寝台馬車に仮固定する必要があり、寝具なんかも毎回収納の必要もあり、なので馬車内に寝具用の押し入れのようなのを拵える事になったけどな。


本職がやれば1ヶ月もあれば余裕で出来そうな事柄に対し、その3倍の時間はやはり素人だからだろう。

それでもスキルの進化が無ければやれなかった事なので、本人の技量なんてものは全く無いと言っていい。


世の中の職人さんは偉いし凄いと、改めてそう実感したね。



いよいよ出発だ。


世話になったな、名も知らぬ遺跡の町よ。

あれからも昨日まで探索をやり、色々と有用そうな品も見つけている。

食器とは思うが、陶器で拵えられた深い皿とか、湯飲みのでかい、マグカップぐらいの容器とか。

あんまりたくさんは要らないので、使い易そうな物だけを毛皮に包んで馬車の寝具物置の片隅に置いてある。

それでもかなりの量を積み込んだから、後々にはそれを売れるかも知れないと思っている。

後は比較的朽ちてないテーブルと椅子だけど、今では馬車の屋根代わりになっていたり、ベッドの脇に仮固定になっていたりする。


そう、いかに風出しで木の板が作れるとは言うものの、車輪を優先したから屋根がおざなりになったんだ。

最悪、毛皮で幌にでもしようと思っていたところ、比較的軽めだけどあんまり朽ちてないテーブルを見つけたんだ。

だからそれをそのまま屋根にして組み込んだんだ。


それが面白い事に全く同じ大きさのテーブルを2つ見つかってさ、片方は底板で片方は屋根って訳で、足同士を繋いであるんだ。

足の長さが1メートル近くあるテーブルだから、2つ合わせたら頭が当たらないぐらいの高さの天井になったんだ。

オレもそこまで背が高い訳じゃないからさ、その点は助かったと思ったよ。

後はそれの補強に木を四方に当てて縛ったうえでニカワで緩み止めもしてあるから、多少揺れてもいけると思うんだ。

皮革の紐をニカワを塗りながら巻いたから、ちょっとした両面テープもどきになってさ、だから切断しないともう剥げないと思うのさ。

しかもかなり引っ張り気味に巻いたから、そうそうは緩まないはずだ。


既に森の外までの道は確保してあり、邪魔な木は切り倒してある。

ゴロゴロと音を立てて引っ張っていくけど、やはり皮を巻いたほうが良かったかな。

下が石だからだと思うけど、土でも同じだと皮を巻こうかな。

あれからニカワも皮テープもたくさん拵えてあるから、巻くならすぐなんだよな。

どうせ荷車みたいなものだし、毛皮はひたすらなめすし、毛無し皮もひたすらなめした。

それらは今、寝台馬車の中に収納されている。


色々な物を使っているうちに、魔力を使えばなめしが調子よくやれる事が分かったんだ。

なのでどうせ魔力も増えている事だし、魔力なめしに変更したんだ。

だから収納されている毛皮は全くススも何も付いてない。


あの見てくれの悪い皮革とコートは今、全て皮テープになってあちこちの補強に使われている。


そんな訳で毛皮のコートも新調したけど、当分使いそうにない。

真っ白なネコ科と思しき動物の毛皮で拵えてあるから、見た目もそんなに悪くない。

骨の針とつる草の糸で縫ってあるし、要所はニカワで補強してあるので、以前とは全く違う出来になっている。


圧搾機の関係でニカワの性能も良くなったようでズボンも今、皮革製に変わっている。

そうして皮革のベストは今着ているけど、これも中々調子が良い。

たださ、下着とかトレーナーはどうしようもないので、何とか使い回しているけどね。

もう少し暖かくなったら素肌にベスト1枚でも良いかも知れない。


でもそうなるとますます野人だよな。


土の上を転がしてもやはり硬いせいか音がする。

ガラガラといっていたのがゴロゴロになりはしたが、音が出るのには変わりない。

かといって皮を巻くぐらいじゃあんまり変わらないとは思うが、たくさんあるから巻いておいた。



微妙だが、少し音が小さくなったかな。


まあ、のんびりと行けば良いから、なるべく音が出ないぐらいの速度で移動しよう。

そうして周囲をそれとなく警戒しながらも、比較的リラックスした旅が始まる。

しばらく森の横を歩いていたが、森の反対側が荒野になっている。

これは森が後退したのか荒野が減っているのか、どっちだろうな。


あれ、何だろう。


近付くと、何かの布の塊のようなものがある。

それは白い物を包んでいて、それは、まるで……


うぇぇ、やっぱり骸骨かよ。

行き倒れになったんだな、可哀想に。

ここらは動物も居ないのか、服は汚れて多少朽ちているようだけど、破れたりはしてないようだ。

埋葬してやろうと穴を掘り、遺体を穴の底に寝かせようとした時、ズボンのポケットに何かがあるのを見つける。


これは……スマホじゃねぇかよ。


つまり、こいつも転生になったのか。

なのにこんな所で行き倒れになったんだな。

もう電池も切れているようだし、そもそも画面が割れてもいる。

倒れた時に割れたのかも知れないな。


死因は分からないけど、同郷のよしみだ。


スキルで穴を戻さずに、そこいらの土を道具で被せていく。

そうして戒名とか分からないが、板切れに『異世界転生居士』と書いて立てておいた。

もちろん日本語なので、関係者以外には読めないとは思うが、もし他の転生者が見つけたら、自分だけじゃないと分かるはずだ。

そりゃ善人ばかりとは限らないので用心は必要だけど、これぐらいはしてやりたかったんだ。

小皿に塩焼き肉の串を供え、手を合わせて知っている念仏を唱えておいた。


名も知らぬ同郷の士よ、成仏してくれな。



それからは何事も無く、森と荒野に挟まれてのんびりと歩く旅は続く。

そのうち森が途切れて荒野ばかりとなっていった。

このまま荒野が続くとか、ちょっと想定外なんですけど。

人里探して荒野とか、困るんだけど。

どうにも地平線まで何も無い荒野に思え、仕方なく右折する。


さあ、あの夕日に向かって……野営の準備だな。


緩やかなスロープ状の四方が硬い構造物の地下道を掘り進めていく。

通り過ぎた場所には広くて深い穴を開けておいたので、何かの動物も奥には来られないだろう。

空を飛ぶ生き物対策には低い天井があるし、そもそも寝台馬車の大きさの地下道なので、でかいのは通れないはずだ。

穴の奥より少し手前で馬車を止め、車輪止めをして仮固定する。

そうして穴の奥に埋め込みの浴槽を作り、ここで裸族が出現する。

服を脱いで馬車に掛け、下着は洗って、靴の中敷も洗って干しておく。


そうして魔法シャワーに魔力を注げば、お湯がジャンジャン沸いて出る。

しかも両手でやっているから速度は2倍だ。

湯が8割になったらまずは身体を丸洗いして、そのまま浴槽に浸かる。

しばらく浸かって温まったら、弱い火種と風出しを使っての温風で身体を乾かす。

そいつで下着も乾かして着用し、靴に中敷を敷いて履く。

寝巻きにと拵えた毛皮のガウンを着て寝台馬車の中の毛皮布団の中に潜り込む。

後は傍の椅子に皿を出して、塩焼き串肉で晩御飯をして、そのままおやすみなさいとなる訳だ。


ビールがありゃぁなぁ。


塩焼き串肉を食べながらそう思うが、無いものねだりは意味が無い。

果物でも樹木に実っていれば果実酒もやれるんだろうけど、生憎とその手の知識は無い。

もっとも、他の知識も浅くてあやふやなんだけどな。


ふぁぁぁ、寝るかぁ。


明日こそ、人里に行けますように。



真っ暗の中で目が覚めて、着火で周囲が明るくなる。

とは言っても小さな深皿に精製した獣脂を入れて、木綿の服の端を切って作った芯を使ったランプもどきだけど。

ホヤっぽいガラスを活用しているけど、やっつけ感が半端無い。

こんなのでも無いよりはましと小物入れに入れてあり、暗い場所ではこれを使うようにしているんだ。


もちろん手探りなんかじゃやれないので、昨日食った串に着火しての作業になる。

準備が出来たらその串がそのまま、着火道具になるって訳だ。

こういうのは毎朝やっているので、手探りでも問題無い。

どのみち木材加工が楽にやれるようになった関係上、串がいくらでも作れるようになり、だからこそ使い捨てでも問題無いんだ。

もっとも串と言っても薄い板を切った四角い串だけどね。


そこまでの暇人じゃないので、四角い串を丸く削ったりはしない。


もっとも四角と言っても長方形だけど、そのほうが刺した肉が回らなくて良いんだよ。

だからどちらかと言えば、アイスクリームの棒みたいな代物の長いやつかな。

寝台馬車を作りながら、そういうのもやっていたから大量にある。

だから別に使い捨てにしても惜しくないんだ。


それはともかく、出発の準備をしないとな。


朝食も串肉なのは情けないけど、2本食ってから移動開始だ。

車止めを外して指定の場所に置いて、引き手を外して反対側に回して差し込む。

これがちょっとしたアイデアってやつで、通路の中で反転させなくても良い仕組みになっている。


通路を外に向けて馬車を引くが、ランプの明かりが頼りだな。


自作の地下道だから心配は無いとは思うものの、やっぱり真っ暗の中を移動するのは精神的にストレスになるようだ。

だから気休めのようだけど、こんなランプもどきでもあるのと無いのとでは全然違うんだ。

そうして段々と周囲が明るくなり、ランプも不要と思えば火を消して収納する。

これも簡易な明かりには便利だけど、どうにも素人が適当に作ったって感じで見栄えが悪い。


そのうち何とかしたいものだな。


途中の穴は限りなく浅くしてそのまま通過して、最後の入り口のでかくて深い穴も限りなく浅くする。

無事に通路を出られたので、振り返ってそいつも限りなく浅くする。

使い捨てみたいだけど、こうしないとうっかり遺跡とか思われたら嫌だからな。

特に浴槽の横の穴の中の物質とかさ。


さて、今日こそ村か町に着けるといいな。



またゴロゴロと、寝台馬車という名の荷車を引いていく。

ずっと荒野のままかと思ったら、少し湿ってきた感じだ。

そうして草がちらほらと生えているような地形となり、次第にそれが多くなっていく。

そのうちに視界に白っぽいラインが見えるようになり、もしかしたらあれは道じゃないかと思えてきた。


近付くにつれてはっきりとしてきたが、やはりあれは道だろう。

やれやれ、これでようやく人の近くに来たようだな。

そうして遂に道の上に寝台馬車……ええいもう、荷車で良いよ。


馬無しで馬車は無理があるもんなぁ。


さあ、どちらに行こうかと思うが、北は以前の廃村の方向だから、やはり南が正解か。

だけど廃村の近くに新しい村とかあるんじゃないかと思ったら、どちらが正解か分からなくなる。

時間も時間だからと昼食タイムにして、座ってのんびりと串肉を食べているも、誰も通り掛からない。

行商人とか居ないのかとも思うが、これだけ人の気配が無いって事は、恐らくは辺境なんだろう。


なんせ動物も魔物もさっぱり出会わないんだから。


それにしても、よくよく考えてみると、廃村の辺りは狼が主流だった。

それが南に下って遺跡辺りになると、狼よりも熊とか猪とかネコ科の動物になっていた。

更にそこから南東に進むと、サイクロプスの生息域があった。

この事から考えるに、南に行くほど強い生物が居ると考えたほうが良いかも知れない。


となると、ここは北が正解か。


まあ、最悪、あの廃村に戻っても構わないしな。

なんせあそこには鍛冶屋っぽい廃屋があり、あれが中々便利だったんだ。

だから無理ならあそこでもう少し、色々な道具の向上を図るって方法もある。

なんせ今なら生活魔法もかなり進化しているから、村回りの樹木の活用もやれるだろう。

それに廃屋を使えばこの荷車も、もう少しましになるかも知れないし。


よし、決めた。


結局、夕方まで何も無く、まだそろ地下道での野営となる。

本当に神様も不親切と言うか、いくら忙しくても人里近くに配してくれよな。

そんな風にぶつぶつ言いながらも、今日もお風呂は欠かせません。


汗を掻いたしな。


そうしていつものように夕食を食って、いつものように寝るのです。



そうして今日もまた、人里を探して移動開始。


昼ぐらいまで移動していると、何かが見えてきた。

やっと村か町に着けるかと、少し駆け足気味での移動になる。

道はあんまり良くないが、それでも荒野なんかとは全然違う。

だからかなりの駆け足となり、カランコロンと靴が賑やかに……いかん。

こんな自家製の靴で無理をしたら、すぐに壊れちまうぞ。


かなり近くなったその場所は、あの廃村より少し大きな町のような場所。

その割りに妙に静かなのが気になるが、門は開いているな。


それを通過する前に嫌な予感。


閑散とした町並みはとても静かで、人は全く見かけない。

並んだ家々は新しいのもあれば古いのもあるけど、これが廃墟とは信じられない。

どの店も鎧戸は下りているものの、全員で旅行に行きましたと言ったら、納得されるような佇まいだ。

道のままに荷車を引いていくと、町の中程に何かが置いてあるような。


あれ、魔物か?


やたらでかいが、小山みたいなのが鎮座しているぞ。

それで皆逃げたのか?

となればそいつは退治しないとな。

そいつがすっぽり入る大きさで、深さを80メートルに指定して、唐突なる落とし穴発動。

そうしてすかさず例の最終兵器を穴の中に全力で投擲して着火する。


今度は失敗しないぞ。


両手で耳を押さえて走って離れる。

それでも爆発音が響き、そこらの家がガタガタと揺れる。

一応、念の為に追加で4発放り込んでおいたが、あれで死んだかどうかは分からない。

だけどあれで死なないとなるともう、オレには手出し出来ないぞ。

そろりと穴を戻してみると、そこには巨大なハンバーグみたいなのがありました。


あーあ、粉砕して焼けたからそうなっちまったのか。


以前からも思っていたが、魔力を含んだ油ってとんでもないな。

点火した魔法の炎と合わさって、まるで上級クラスの魔法の爆発みたいになっちまうんだな。

あんな凄い化け物がこんなになっちまうんだからよ。


これでは魔石も無理かなと思ったが、一抱えもあるような魔石は無事だった。

だけどこのハンバーグどうしよう。

このままだと腐るよな。

なので再度穴の底に追いやって、今度はそれを置いたまま穴を戻す。


よし、証拠隠滅バッチリだ。


一抱え魔石は小物入れに入れて、代わりに道具類を荷車に積み込む。

後は誰も居ないけど退治してやったんだし、有用な物を報酬でもらっても良いよな。

そう勝手に決め付けて、そこらで家捜しを開始する。

どうやら慌てて逃げたらしく、家財道具なんかもそのままだ。


金もあちこちで見つかっており、全部は可哀想だから半分だけもらってある。

穀物の袋もあり、それも荷車に積み込んでいく。

さすがにいかに容量が増えたと言うものの、本格的なスキルじゃなくて間に合わせなので、そんなには入らないのが困り物。

まあ、小物入れってぐらいだから、本当は持ち歩きの金庫ぐらいの意味だったんだろうな。


空き巣稼業も一通り終え、可能な限り積み込んだ荷車はかなり重たくなったものの、まだまだ引く力には余裕がある。

宿屋らしき建物の鎧戸を外し、荷車を入り口に突っ込んで鎧戸を閉める。

そうしてランプの明かりを頼りに中をうろつき、ベッドを見つけたのでついでに寝具をいただいた。

毛皮の敷布団も良いけど、やっぱりこういう布が良いよな。


とは言うものの、毛皮の上に敷布を敷くだけだ。

そのほうがマットレスみたいになるからな。

それと言うのも小物入れの毛皮なんかは今、全部荷車の中だ。

それは何故かと言うと、小物入れの中はもはや、一抱え魔石と手持ちの魔石、それに金の類と財宝の類と言った価値あるもの、それにすぐさま食べられる食料で満載になっている。

だからこんな風な荷車になっちまったんだけど、もうこうなると完全に空き巣だな。


もっとも、そんな事は今に始まった事じゃない。


この世界に来てからずっとやっていたんだし、そんなの今更だよな。

それはそうと、この町にも鍛冶屋っぽい場所はあるか、明日探してみようと思う。


そんな訳でおやすみなさい。



状態がとんでもない事になってました。


階級 107

状態 正常

体力 1160

魔力 1160

技能 生活魔法・穴掘り


あれ一匹で、あの階級から23も上がるとか、どんだけだよあの魔物って。

本当なら滅茶苦茶強い敵だったんだろうけど、寝ている隙の殲滅だったにしても、ありゃ奇跡だな。

あんなもの、この世界で一番強い人でも恐らく無理じゃないかな。

となるとますますあの魔石は世に出せないぞ。


邪魔だから地面深く埋めちまうかな。


けどなぁ、あれを媒介にして復活とかやられたら困るし、小物入れの中に死蔵がベストではあるんだよな。

さすがに復活になったらもう、あんな不意打ちは効かないだろうし、例えオレの仕業とバレてなくても、同じ境遇になったら今度こそバレちまう。

そうなればもう、いくら上から爆弾を落としても、到達するまでにブレスでも吐かれたら効果がまともに出ない。

それどころか穴に近付きもやれなくなるから、その隙に出られたらもう終わりだ。


空中には落とし穴は作れないからな。


それにさすがにあの大きさともなれば、丸洗いしても大した事にならないだろう。

確かに高温着火なら多少は効くかもしれないけど、あれだけの大きさの物体に対する着火とか、相当の魔力を使う事になるだろう。

そこまでやっても死ななければ、今度は間違いなくオレが死ぬ事になるな。


だからもう、あの魔石は砕いてしまうか、あのまま死蔵するしかないって事だ。



だけどあの魔石、あの爆弾5発に耐えたんだよな。

そんなもの、破壊なんか出来るんだろうか?


いや、もしかすると穴掘りなら……まあ良いか。

そういうのは必要で試せば良いだけだ。

今はこのまま死蔵にしておこう。


それにしても、あんなに階級が上がっちまうとはな。

どうにも階級100に到達したら何かあるのかどうかは知らんが、スキルの内容が変わるんだから何かあるんだろう。

もしかしたら階級100とか、相当難しいとかでさ、報酬か何かになっている可能性もある。

更に、どういう訳だがヘルプ機能と言うか、今まで何をしても無理だったのに、スキルの説明を求めたら頭に浮かぶんだ。


こういう風に。


生活魔法

《出炎・美水・洗濯・操風・倉庫》


出炎・種火から火炎まで、あらゆる炎を出現させる。

美水・薬品製造に最適で美味しい水を出現させる。

洗濯・水洗いから乾燥まで、自由自在に設定可能。

操風・そよ風から強風まで、自由自在に設定可能。

倉庫・階級10倍までの長さ、重さ、体積を収納可能。


こういうのは最初から欲しいよな。


そんな訳で、高温着火も無理に出している感じだったのが妙にスムーズになってさ、

ますます投擲着火がやり易くなっていた。

あれなら恐らく100パーセントの成功率になるだろう。


そうして美水と言うだけあって、出た水は本当に美味しかった。

薬品製造ってのはつまり、回復薬とかそういうのに最適なんだろうな。

まだそういうノウハウは無いけど、そのうち獲得したら製造が楽になるかもな。

洗濯ってのはつまり、全自動洗濯機をスキルにしたような感じとでも言えば良いのか、

試しにやってみたんだよ、かつてのオレがやらかしたように。


そうしたら濡れる感じがしたものの、身体がさっぱりして服も綺麗になって元のままの乾燥した状態になったんだ。

これも最初から欲しかったよな。


操風ってのはつまり、今まで何とかやっていた操作が認められたと言うか、手動の部分が自動になったと言うかさ、

凄くやり易くなっていたんだ。

出炎と似たような感じで、あらゆる作業のうち、手間な部分の自動化って感じでさ、思うままに風を操れるって感じかな。


そうして倉庫になって小物入れの何倍も入るようになったと。


持てる重さ×10が階級×10になったんだろうけど、それって凄まじくたくさん入るようになったって事だ。

もはやこうなればアイテムボックスかストレージとか名乗っても良いぐらいじゃないかな。

だってさ、現在階級107って事はだよ、長さが1070メートルまでの物質とか、重さが1070キロの物質とかがあっさり入るって意味だ。

体積に関しては計算が面倒だからしないけど、とにかく今までよりもたくさん入るってのは間違いないだろう。


え? 馬鹿だって?


電卓があれば計算するよ。

しかも鉛筆も紙も無いのに、暗算で体積計算とか無理だよ、オレには。

そんなに秀才ならそもそも三流……まあいいや、もう昔の話だ。


ともあれ、階級100を越えてスキルがパワーアップしたって事だ。


道理でいくらでも物が入ると思ったよ。

今までは計算上の限界でやっていたんだけど、試しにと荷車を入れようとしたら入っちまったもんな。


ちょっと嬉しい想定外だ。



鍛冶屋の工房を発見したので金属精錬の真似事をやってみた。

以前は本当に試行錯誤だったのに、妙にやり方が分かると言うか。

そうして思うままにやってみると以前よりましなような代物ができた。


素人から職人もどきに進化した瞬間であった、なんてな。


思ったよりも長くなりそうなので、もしかしたら連載に変更するかも知れません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ