第3章 竜王祭★16★
「それでは今日のAブロックの試合は以上となります。昼休憩をはさみBブロックの試合を始めます」
「良くやったなユキネ」
ゴエモンさんは試合が終わったユキネさんに声を掛ける。
「いえ、まだまだです。受け流しがしっかり出来ていればもっと早く勝負を決めれていたはすですので」
「まぁ確かにそうだが、そんな芸当が出来るのは儂か、このユウキ位しかおらんだろうしな」
「師匠!私よりもこの男の方が強いと言うのですか!」
ゴエモンさんが言った言葉にユキネさんは声を荒らげ俺を睨む。
「ユキネ、ユウキも日の本の国の生まれで言わば同郷なのだぞ。しかもあの伝説の剣豪ササキコジロウの弟子ときておる。先程のユウキの試合を見て何も思わないお前ではあるまい」
「ですが‥‥」
「そんなんだからいつまでもたっても嫁の貰い手がいないのだぞ。大和撫子らしくもう少しおしとやかになってみてはどうだ?」
「私は自分よりも弱い男に嫁ぐつもりはありません!」
俺はユキネさんに何もしていないのだがとてつもなく敵対視されている。確かに次の準々決勝で当たるので敵対視はされて当たり前なのだが、いつの間にか俺には嫁ぐつもりはないというような展開になってしまっている。俺は特に嫁に欲しいわけではない。確かにユキネさんは黒髪でとても美しく、普通の男性ならば虜になってしまうだろう。ただそれはこの気の強さを見るまでだろうが。するとゴエモンさんが俺にこっそりと耳打ちしてくる。
「こう見えてもユキネは乳がでかくての。普段は邪魔だからと言ってさらしで抑えておるんだよ。肌も透き通るように白くての。ユウキは興味ないかの?」
「し、師匠!何を言っているんですか!聞こえてますよ!貴方も覚えておきなさい!次の試合で私の方が強いってことを見せて上げますから」
ユキネさんはそう言い残し、控え室へとゴエモンさんの耳を引っ張り戻って行った。
「ちょっと、なんなのあいつは!いきなりユウキのこと責め立てて。それにゴエモンって人もユウキと結婚させようとしてなかった?」
「あれは完全にゴエモンさんが悪いよ。まぁ次の試合で負けないように頑張るよ。それより俺達も昼飯にしようぜ」
俺とミネアも控え室へと戻ると簡単なケータリングが用意されておりパンやサンドイッチ、スープやフルーツ、飲み物等も置かれている。俺達は軽く昼食を済ませ食後にコーヒーを飲みながら話をする。
「俺は取り敢えず初戦を突破したから次はミネアだな」
「任せておいてよ!2人揃ってちゃんと初戦突破するからね」
「Bブロックの出場者だとさっきの話の感じだとゴエモンさんはかなりの腕みたいだな。鑑定しておけば良かったな」
「そうだユウキ。鑑定しても良いけど私に教えなくて良いからね」
「何でだ?相手の強さやスキルが判ってた方が対策とか練りやすいだろ?」
「ユウキの力を借りて勝っても私が実力で勝ったことにならないから。正々堂々私の実力で勝ってユウキと決勝を戦うんだから」
「わかった。命のかかった戦闘なら否が応でも教えるが竜王祭はその心配はないからな」
こういうところは見た目と違ってしっかりしているなぁと思いながら俺達は午後の試合を待った。
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「ちょっとどういう事なの!今年もマーリンが優勝するって言ってなかった?」
「スミマセン聖女様。まさか私達も初戦で敗退するとは思ってもいなかったので」
「相手はAランクの冒険者でしょ!マーリンは1級魔導師なのに格下相手に遅れを取るなんて‥‥‥(でもあの冒険者かなりのイケメンだったわね。私のお抱えの護衛とかに出来ないから?)」
「聖女様御安心下さい。シヴァならば必ずや期待に答えてくれるはずですので」
「絶対よ!神の加護を受けし我がアルヘイムが初戦で二人とも負けるなんて許されないからね」
「かしこまりました。シヴァにも言っておきますので」
聖女様の機嫌をこれ以上損ねてはいけないと神官達はそそくさと部屋を出ていった。
「もしシヴァが負けてあのカルナディアの男性が優勝したら、神のお告げがあったと言って私の元に置けば良いし‥‥竜王祭も楽しくなってきたわね」
聖女は椅子に腰掛け果実酒を飲みながら笑みを浮かべていた。




