第3章 竜王祭★15★
試合に勝ち観覧席に戻るとミネアが拳を前に突き出している。俺はミネアとグータッチを交わして椅子に座る。
「流石ユウキね。あの水の龍にも驚いたけど魔法じゃなくても勝てたでしょ?今回も相手に合わせるつもり?」
「相手の土俵でも勝てそうならそうするかな。無理な時は全力で勝負するけどね」
ミネアが呆れたような目で俺を見ていると1人の男性が話し掛けてきた。日の本の国の代表のゴエモンさんだ。
「中々の剣技だな。お主の髪と眼の色、生まれは日の本の国ではないか?」
「ありがとうございます。おっしゃる通り日の本の国の生まれです」
「やはりそうか!まさか竜王祭で他国の代表に日の本の国の者がいるとは思わなかったのでな。剣の師はなんと言う者なのだ?」
「さ、ササキコジロウと言いますけど‥‥」
予想もしてない質問に驚いた俺は、我流と答えれば良かったのに咄嗟に好きな剣豪の名を上げてしまった。
「なんと!あの伝説の剣豪の弟子なのか。わしは会ったことないがかなりの腕前と聞くからな」
まさかこの世界にもいるとは思わなかった。もしかして宮本武蔵や柳生十兵衛とかもいるのかも知れない。あまり余計なことは言わない方が良さそうだと思っていたらゴエモンさんの視線が俺の天照に向けられていた。
「もうひとつ聞いても良いか?その刀を打った者の名前を教えて欲しいのだが」
「日の本の国の出身でマサムネと言いますけど」
「ムラマサの息子か!と言うことはムラマサもカルナディアにいたのか」
「2人で鍛冶師をしていますよ。この防具もマサムネとムラマサさんの作ですし」
ゴエモンさんの話を聞くとムラマサさんとゴエモンさんは幼なじみらしく、ゴエモンさんは世界一の剣豪に、ムラマサさんは世界一の鍛冶師になると夢を語り合った仲だそうだ。ムラマサさんは他の国の技術を学ぶ為に国を出たらしくそれ以来行方がわからなかったらしい。
「彼奴も元気でいるみたいだし、竜王祭が終わったら彼奴に会いにカルナディアにでも行ってみるかな」
ゴエモンさんと話をしていると次の試合が始まるようだ。
「それではAブロック最後の試合を始めます。第4試合、セフィールド国代表のシーラさんと日の本の国代表のユキネさんです」
「おぉ、ユキネの出番か。あいつは儂の1番弟子でな。儂が山で修行中にユキネは両親とはぐれておってな。両親は魔物に殺されておって儂が親代わりで面倒をみておったのだ」
ユキネさんはキリッとした顔立ちをしている女性だが辛い過去を乗り越えて来たようだ。俺は試合をする二人を鑑定してみる。
スズカゼ ユキネ
年齢 21 LV 64
種族:人間 職業:冒険者
体力:620
魔力:120
筋力:341
耐久:350
俊敏:620
スキル: 〔剣術LV7〕 〔風魔法LV2〕 〔俊敏上昇・中〕 〔気配感知〕 〔気配遮断〕
シーラ・リオール
年齢 24 LV 55
種族:人間 職業:ハンター
体力:472
魔力:140
筋力:426
耐久:340
俊敏:225
スキル: 〔剣術LV4〕 〔火魔法LV2〕 〔気配感知〕 〔目利き〕
〔料理LV4〕
どちらも剣を得意としているようだがユキネさんは刀を使いシーラさんは身の丈程ある両手剣を使うようだ。ステータスはユキネさんの方が上だが両手剣の特性はその重量と大きさにある。両手剣の渾身の一撃を刀で受けてしまえば刀は折れてしまうだろう。
「それでは試合始め!」
シーラさんは両手剣をユキネさんに振り下ろすがユキネさんは紙一重でかわしていく。両手剣の特性上一撃の威力は高いが次の攻撃に繋げるのが圧倒的に遅いのだ。魔物相手ならその一撃で仕留めてしまえば良いのだが、かわされた時は1度距離を取ったり筋力で強引に次の攻撃をしなければならないが、シーラさんはそれが出来るほど筋力が高くないのだ。
「ユキネの相手の娘はまだまだだな。あの両手剣を使いこなせておらん。片手剣ならそれなりの勝負は出来るのだろうが魔物相手に戦ってきたからだろう。威力ばかりにとらわれて速さを犠牲にしておる」
ゴエモンさんの言うとおりこの試合はユキネさんの勝ちで決まりだろう。ユキネさんが距離をとり刀に手を掛け腰を落とす。居合いの構えだ。シーラさんはまたも上段に両手剣を上げながらユキネさんに向かって走り振り下ろそうとするが、ユキネさんも走りだし剣が振り下ろされる前にシーラさんを斬った。鎧で守られてはいたが繋ぎ目の隙間を見事に斬ったらしくかなりの出血がありシーラさんは前のめりに倒れた。
「勝負あり、勝者は日の本の国代表ユキネ選手!」
ユキネさんは刀に付いた血を振り払い鞘に納めると俺達の方へ近づいてきた。




