第3章 竜王祭★13★
「あの魔法は全く意味がないな」
俺はネフィルが使った魔法を知っていた。前にキメラと戦った時に使ったことのあるダークミストと同じだったのだ。
「何でわかるのユウキ?」
「あの闇魔法は黒い霧で視界を奪う魔法なんだけど、逆にネフィルさんからもルージュとサーベルウルフの正確な位置がわからなくなるんだ。だけど相手のルージュさんは〔気配感知〕のスキルを持っているから、ルージュさんからはネフィルさんの位置を把握出来るから正確に攻撃できるんだ」
俺が言った通り客席からは見えないが、試合場からはネフィルさんの苦悶の声が聞こえてくる。だんだんと黒い霧が晴れてくると体の至るところに矢が刺さっておりこれ以上の戦闘が無理なのは誰の目にも明らかだった。
「ギ、ギブアップだ」
「勝負あり!勝者、クレメンス国代表ルージュ!」
観客もあの黒い霧の中でルージュさんが攻撃をしていた事がわかったようで急に歓声が響く。ネフィルさんも、ダークミストを使いながらも風を纏っていれば狙い打ちされることもなかったのだが、相手の視界を奪ったことに油断をして風魔法を解除したことが一番の敗因だった。解除しなければまだ勝機はあったのだが完全にネフィルさんのミスなのでしょうがない。スタッフがネフィルさんに刺さっている矢を抜き抱えられて試合場を出る。すると誰が見ても重症だった怪我が治っており、血も止まっているようだったが体力は回復していない用でそのままスタッフと一緒に控え室に戻って行った。
「ダメージは治るけども体力迄は戻らないんだな」
「うん。壊れた武器や防具も元には戻らないからネフィルの服は穴だらけだろうね」
「それではAブロック2回戦を始めたいと思います。ウェルズ国代表のクレアさん対フェスティア国代表のシリアさんです」
呼ばれた2人は席を立ち試合場へと上がる。 俺は鑑定を使ってみた。
クレア・シュナウザー
年齢 28 LV 66
種族:獣人 職業:冒険者
体力:580
魔力:184
筋力:590
耐久:548
俊敏:650
スキル: 〔格闘LV6〕 〔光魔法LV4〕 〔気配感知〕 〔筋力上昇・中〕 〔俊敏上昇・中〕
シリア・スクラルファート
年齢 23 LV 57
種族:人間 職業:2級魔導師
体力:225
魔力:535
筋力:184
耐久:235
俊敏:290
スキル: 〔火魔法LV4〕 〔水魔法LV4〕 〔光魔法LV6〕 〔詠唱破棄〕 〔魔力上昇・中〕
ステータス的にはクレアさんの方が高く有利だ。何処までシリアさんが魔法で対抗できるかだ。近接距離での戦闘になればクレアさんには勝ち目は無いだろう。遠距離でもかなり俊敏の数値が高いクレアさんに魔法を当てるのは難しいので、範囲攻撃の魔法や相手の動きを阻害するような魔法を使うのが定石になるだろう。
「それでは試合始め!」
シリアさんは距離を取りながら水魔法の範囲魔法を使う。高波のようにクレアさんを襲うが高い跳躍力によってかわされてしまう。試合場の床は水で濡れ場所によっては水溜まりが幾つか出来ている。シリアさんはかわされても構わず水の範囲魔法を唱え、クレアさんはそれをかわす。床一面が大きな水溜まりのようになり、今度は得意と思われる光魔法を使い上空に光の玉を出現させた。その光の玉が輝いたかと思うとレーザーの様な物が放出されクレアさんを襲う。足場が水で濡れている為に少し足をとられて回避がぎりぎりになったがバックステップでかわした後だった。そのレーザーが床の水で反射してクレアさんの肩口を貫いた。
「ちっ!貴女本当に2級魔導師なんですか?これだから魔導師は相性が悪くて嫌なんです」
自慢の速さを封じられて思うように距離を詰められないでいたクレアさんだがシリアさんに向かって走り出す。
「無駄です。どんどん行きますよ!」
シリアさんは更に複数の光の玉を出しそれからもレーザーが放出されクレアさんを襲う。しかし体操選手のようにアクロバティックにぎりぎりでレーザーをかわしていき、後少しの所まで距離を詰めたが今度はファイヤーボールをクレアさんの足元目掛けて放った。
「甘いですよ。反射しないならかわすのは簡単ですよ」
跳躍してファイヤーボールをかわしたが、そのファイヤーボールは足元の水に当たるとその水を蒸発させ、その際に上がる高熱の蒸気をクレアさんは浴びてしまった。その高熱の蒸気で足を火傷してしまったようだ。
「貴女はもう少し頭を使った方が良いですよ。見た目だけでなく頭の中まで獣みたいですね」
「なんだと!獣人をなめると痛い目を見るわよ」
流石に種族を馬鹿にされたことに怒り、火傷の痛みをこらえ先程よりも速い速度で距離を詰める。
「懲りない獣ですね。先程と同じことになるのに」
シリアさんはまたレーザーを放出しようと光の玉を出そうとするがその前にクレアさんが光魔法を使った。
「ライト!」
ライトは俺も使う魔法だが辺りを照らすだけの魔法だ。しかしクレアさんは通常よりも魔力を込めて使ったようでライトの光が床の水に反射してシリアさんの視界を奪い、シリアさんは魔法の発動が遅れてしまった。距離を詰めたクレアさんは手に装備している爪でシリアさんを切り裂いた。
「獣人を下に見てるんじゃないわよ。貴女の頭の中は獣以下だったみたいね」
「勝負あり!勝者ウェルズ国代表クレア」
勝ち名乗りを受けたクレアに観客は歓声を浴びせそれにクレアは手を振り観覧席に戻ってきた。




