第2章 竜王祭予選★3★
俺は槍を肩に載せ特に構えはとっていない。相手のリンさんは緊張しているのがわかる。
「それでは試合始め」
ライルさんの声と共にリンさんは腰を落とし槍を構える。俺は特に構えをとらずリンさんの出方を待つ。痺れを切らしたリンさんは俺に向かって突きを打ってくる。キメラの攻撃と比べるとかなり遅いため俺は余裕を持ってかわす。リンさんの攻撃は単発では終らず何度も突いて来るが俺はまだ槍を使わずかわす。段々と苛立ちを見せ始めたリンさんはなぎはらって来るが俺はそれを槍の先で受ける。それを見てリンさんは驚いて動きが止まってしまった。槍の先で攻撃を止めるなんて神業を俺は難なくやってのけたからだ。武術の極みがあるからこそ出来る芸当だ。
「そんな馬鹿な‥‥‥」
リンさんは驚きながらも我に返り何度も攻撃してくるが、俺はそれをさっきと同じく全て槍の先で受ける。リンさんも周りの冒険者達も先程のがまぐれでは無いことに気づいたようだ。
「今度は俺の番かな」
俺は少し距離をとり槍を構える。リンさんは息をのみ俺の攻撃に備えている。俺はリンさんに向かって飛び込み5連突きを打つ。闘神の籠手の効果もあり、俺の攻撃が見えたものは数人しかいなかったようだ。俺が放った5連突きにリンさんは全く反応できず吹き飛ばされ気を失った。
「勝負あり。勝者ユウキ」
暫くなにが起こったかわからず静まり返っていたが、俺の攻撃で勝負が決まったことがわかると物凄い歓声が聞こえてきた。俺は元の場所に戻るとミネアさんが驚いた顔して話しかけてきた。
「ちょっとユウキ君。何なのよ!貴方は剣を使うんじゃなかったの?ギルドに来たとき腰に剣を差していたわよね?」
「俺、武器なら何でも使えますよ。見た目が好きなんで普段は刀を使ってますけど」
「本当に規格外ね。よし、決めた。私はユウキの子供を産むわ」
「何でそんな話になるんですか!」
「私は魔法が得意なの。そんでユウキ君は武器を使うのが得意なんでしょ?二人の子供なら凄い才能の子供が生まれると思わない?」
「思いませんよ!ちなみに俺、魔法も得意ですからね。全属性使えますし」
「ちょっと強すぎないそれ。でも私も負けないからね!私が勝ったら子供は作らせて貰いますからね」
「だからそんな約束しませんってば!」
ミネアさんは興奮して話を聞いていない。周りの冒険者達も流石に呆れているが、相手はSランクの冒険者なので何も言えないでいる。ミネアさんが騒いでいるのをライルさんも見ていたのでため息をついている。
「次の試合だ。Sランク冒険者ミネア、Aランク冒険者カイン前へ」
「よーし、私の番ね。ユウキ君待っててね。お姉さんは子作りの為に今から戦いの鬼になるから」
「だからしませんって!」
ミネアさんの頭の中からは竜王祭の事など全くなく子作りの事で一杯になっていた。俺はこれから戦う二人を鑑定する。
ミネア・クレメンス
年齢 25 LV 67
種族:人間 職業:冒険者
体力:325
魔力:645
筋力:214
耐久:325
俊敏:360
スキル: 〔火魔法LV5〕 〔水魔法LV4〕 〔風魔法LV6〕 〔光魔法LV5〕 〔詠唱破棄〕 〔魔力上昇・中〕
カイン・クリストファー
年齢 32 LV 54
種族:人間 職業:冒険者
体力:420
魔力:125
筋力:378
耐久:225
俊敏:162
スキル: 〔斧術LV5〕 〔土魔法LV4〕
ミネアさんは魔法が得意と言っていたが確かにそのようだった。相手のカインさんは男性の冒険者で見た目は木こりみたいな格好をしている。
「それでは試合始め」
試合開始と共にカインさんは斧を振り上げてミネアさんに迫ってくる。しかしミネアさんの方が俊敏が倍以上あるため、一定の距離を容易く取ることが出来ている。ミネアさんは水魔法を使うと水が鞭のように伸びる。その水の鞭でカインさんは何度も打たれている。ミネアさんは何度も水の鞭で打ち付けながら「私とユウキ君の子作りを邪魔するな」と何度も言っている。その姿と原動は最早女王様のようでライルさんは頭を抱えている。出来れば俺も恥ずかしいのでカインさんには悪いが早く決着がついて欲しい。ミネアさんは水の鞭でカインさんの体を拘束し、そのまま一本釣りのようにカインさんを持ち上げ床に叩きつける。
「勝負あり。勝者ミネア!」
「ユウキ君勝ったよ~」
ミネアさんは両手を広げ俺に抱きつこうとしてくるが、俺はひらりと交わしミネアさんは転んでしまった。
「ひどいなぁユウキ君。勝利の包容くらい良いじゃないか」
「俺に勝てたら良いですよ」
「その言葉に二言はないね。勝ったら包容してそのままベッドで子作りだからね!」
「‥‥‥全く何を言ってるのか。わかりました、そのかわり勝てたらですよ」
勿論負ける気は全くないが、ミネアさんは自分が言った事が了承してもらえたことに歓喜しながら垂れてきたよだれを拭いていた。




